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唐突に始まる恋の予感 目次

ご都合主義万歳

プロローグ

第1話

第2話

第3話

第4話
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つよきすIF よくある初期設定改変物で


うっすらと日が差し始めたばかりの早朝。

たまに新聞配達の兄ちゃんを見かけるぐらいで俺の邪魔をするものはいない。


「はぁ………はぁ………はぁ……」


空は雲一つ無く爽やかだって言うのに俺はあまりにも暑苦しい。

汗だくになりながら、なおもかなりのスピードで走り続けている。

とっくの昔に俺の心肺機能は悲鳴を上げているが俺はそのサインを無視し続ける。

と言うかそれが目的だからな。これぐらい体を苛めないと鍛えることができないからな。


「………う、うっし……早朝…ランニング……終了!」


一時間程かかったランニングを終える。

とりあえず家の中庭に移動する。

全身汗まみれだし呼吸も乱れまくってるがそんな事に不満を言ってられん。


「じゃ……じゃあ次は打ち込み……」


まずは正拳突き。フォームを意識しつつ一撃一撃、己の力を出し切るぐらいのつもりで撃つ。

空を切った拳がまた体にこたえる。空振りってある意味本当に当てるよりしんどいからな。

それからしばらくの間、黙々と鍛錬を続けていたが不意に声が聞こえてきたのでそれも終わりを告げる。


「おうおう、相変わらず精がでるねえ坊主。もうすぐしたら飯できっぞ。早いとこシャワー浴びてこいや」

「スバル。俺は朝飯は別にいいっていつもいってるじゃん」


疲れ果てた表情のままこっちに近づいてきたスバルに言う。

こいつは伊達スバル。俺の親友であり幼なじみの一人でもある。

言動が粗暴で見た目も結構怖いので学校の男子からは恐れられている。

怖いといってもこいつは見た目が良いので女子からの人気はかなり高い。

まあそれに幼なじみの俺にとっちゃスバルは全く怖くない。それどころか実は非常に面倒見のいい奴で

一人暮らしの俺の家に来ては飯は作ってくれたりするありがたい存在である。

これで可愛い女の子だったら言う事無しなのだが……現実はこんなもんだ。


「そう言うなって。俺はレオと仲良く朝飯が食いたいんだよ」

「頼むからそういう冗談は辞めてくれ」


スバルが言うと本気にとる奴がいそうで怖い。

とりあえずスバルの言う通り早くシャワーを浴びよう。汗がまとわりついて気持ち悪い。

そういえばずっと自己紹介もしてなかったな。

俺は対馬レオ。私立の高校に通うごくごく普通の生徒である。










つよきすIF

 ―――よくある初期設定改変物で



プロローグ 前編






「しかし相変わらず美味いな。お前の作る飯は」

「嬉しい事いってくれるねぇ。レオ以外にはめったに作らねえけどな」


速攻でシャワーを浴びたてスバルの用意してくれた飯を食っている。


「このサラダに掛かってるドレッシングは?」

「もちろん俺のお手製よ。おう、その味噌汁の出汁はちょいといつものとは違うぜ。心して飲めよな」

「朝からよくもこんなに手間かけて作ってくれるねえ」

「そらあ大事な対馬家の一人息子さんの食事を作ってんだ。手は抜けないぜ」

「俺はいいとこの坊ちゃんかよ」


そのまま味噌汁を飲む。うむ、確かにいつもとはちょっと違う。
料理の事はよくわからんが美味いので気にしない。


「ごちそうさん。そんじゃ俺戻るから学校でな。カニちゃんと起こしとけよ」


さっさと自分の食事を済まして帰っていくスバル。
俺はそのままのんびりと食べ続ける。
しかしスバルには感謝してもしきれないね。いい親友を持ったよ俺は。




飯を食い終わりその足で隣の蟹沢(かにさわ)家に行く。

玄関前で掃除をしている蟹沢家の奥さんに挨拶。

「おはようございます」

「レオちゃんいつもすまないねえ。あんな出涸らしの為にいつもいつも」

「俺が見捨てたらあいつの人生終わりそうなんで」

「良かったら嫁にもらってくれない、アレ?」

「俺が良くてもあいつが嫌がるでしょうが…」


そう言って俺はそのまま二階へと向かう。


「あの出涸らしが嫌がるわけないでしょうが……レオちゃんも相変わらず鈍いねえ」




「おい、朝だぞ蟹沢きぬ」

「ZZZ………」


俺はもう一人の幼なじみである蟹沢きぬを起こしていた。

暑かったのか知らないが毛布から抜け出しさらにパジャマの下まで脱いでいる。

縞模様のパンツが丸見えである。


「おい、起きろきぬ」


とりあえず呼びかけてみるが効果は全く無い。


「相変わらず馬鹿そうな顔で寝てやがる……」


この家には二人の子供がいるのだけど、一人は優秀な兄で大学院で勉強中。


「……やっぱ……ボクって可愛いよねー」

「可愛いのは認めるが自分で言うかこの馬鹿は」


出来が悪く両親からは出涸らし扱いされすでにあきらめモードに入られている哀れな子だ。

兄の出来が良い分色々比較されて結構嫌な思いもしてるだろう。

それでも変にひねくれたりせず真っ直ぐに生きているこの馬鹿が結構好きだ。


「さて、普通にやっても起きないからな。どうやって起こすかだが……」


アゴに手を当て考える。
呼びかけたり軽く揺する程度では全く答えない為、少々強引な手を使わないといけない。


「んん……レオが……キスしてくれたらボク起きるよ……」


何を寝ぼけたこと言ってるんだこいつは。
さてはもう起きてるな。んで俺をからかってやがる。


「ん~そうだな~それじゃあキスしてみようかなあ~」

「……ぇ……………」


わざと聞こえるように言う。

すると心なしかきぬが体をぎゅっと固くしたように見えた。

俺は親指と人差し指を合わせ軽く口付け湿らせる。


「……ワクワクテカテカ……ワクワクテカテカ……」

「……こいつは本当にアホか」


何故聞こえるように言うのかわからない。

ともかく俺は合わせた指をそっときぬの唇へ持っていき、軽く触れ合わせた。

瞬間、きぬは顔を真っ赤にして文字通り飛び起きた。


「えっ!!……レ、レレオ!お前本当にボ、ボクにキス……」

「おはよさん、きぬ」


動揺しきっているきぬを尻目に何事も無かったかのように振舞う俺。


「あ、あ~おはようレオ……じゃ、じゃなくてレオさっきボクに……」

「じゃまた20分後に下でな。二度寝するんじゃねえぞ」


さらっと無視してそのまま家に帰る。


「ちょ、ちょっと待てよ!おい、無視すんな!お、おいどっちなんだよ~!」


きぬが俺をハメようだなんて100万年早いんだよ。



「で、でもさっきの感触は間違いないよね……にゃ、にゃはは!レオったら照れてやがるな。

 でもこれでレオとボクは両想いって事だよね!……うっしゃ~元気出てきた所で朝デッド~~」



なんか言ってたけどよく聞こえなかった。







二十分後。俺は制服に着替え外に出ていた。


「……時間。きぬはこない」


これ以上待つのはめんどくさいので置いていくことにする。

まだ五月とはいえ日差しが出ると結構暑い。

俺の通う学校は家からのんびり歩いて十分ぐらいだ。

近くてレベルがまあまあで、そしてなにより……


「ってちょっと待てやーーー!あまりにも大事な忘れ物をしてるぜ!」


弾丸のような勢いで俺を抜きさっていくバカが一人。


「サイフなら持ってるぞ」

「ボクだよ、ボク。ボクを忘れてどうすんのさ!」


ビシッビシッと手ではたいてくるきぬ。

しかし手が止まったかと思うと急に頬赤らめてモジモジし始めた。


「も、もうっ。いくらボクにキスして恥ずかしいからって照れて逃げなくてもいいじゃんっ」

「何を寝ぼけた事いってるんだお前は」


突拍子も無い事を言い出すきぬに呆れた顔を隠さずに言う。

というか逃げたんじゃなくてお前が遅いから先に出ただけだし。


「レオがボ、ボクへの愛を抑えきれなくてついキスしちゃったんだよね!

 ボク、心が広いからあれぐらいなら全然許しちゃうよ。そ、それにボクだってレオのことが…」

「……もしかしてこれのことか」


指を合わせてきぬの唇に当てる。結構柔らかくて今更ながらちょっとだけどきっとした。

されたきぬは呆然とした表情で俺を見ている。


「じゃ、じゃあ朝のキスは……」

「本当にキスするわけないだろうが。それぐらいお前も気づけよ」


……ん?なんかきぬが下向いたままプルプルし始めたぞ。


「………の………女の……」

「ん、なんだ?」

「乙女の純情を弄びやがって!!許さんっ!!」

「うおっ!急に殴りかかるんじゃねえよ」


いきなりきぬが殴りかかってきたがバックステップで軽くかわす。


「かわすんじゃねえよっ!当たらないとボクの怒りは収まらねえよっ!」

「なんで俺が黙って殴られなきゃいけないんだよっ」

「キスしてくれたと思ったのにぃ!!」

「こら、辞めろ!……落ち着けっての」


きぬのパンチをかわす。

そして引き手のタイミングに合わせて一気に距離を詰めて頬っぺたをつねった。


「いはい!いはい、やめれっ!」



じたばた暴れるので離してやった。


「くぅ……痛いなあ……」

「お前からしてきたんだろうが……」

「だ、だってレオが……やっとボクにキスしてくれたと思ったんだもん……」


きぬの顔が涙でグシャグシャになっていた。

…………くそっ


「……悪かったよ。泣くなっ」


きぬをぐいっと引き寄せて自分の胸にぽふっと当てた。


「あ……」

「ごめんな、きぬ……俺が悪かった、許してくれ」


不意をつかれたのかしばしの間固まっていたきぬだったがやがて自分から俺に手を回し胸にしがみついてきた。


「……許す」

「ん、ありがとな」

「……許すからキスして」

「調子にのんな」


苦笑しながら俺はきぬの頭を撫でる。

いつからこいつはこんなに甘えん坊になったんだろうな。

昔は俺やスバルと一緒には遊びまくってたのに。

いや、それは今でも一緒か。だけどいつからかこいつは俺に対してこういう風に甘えてくるようになった。

俺とスバルがこいつの兄貴みたいなもんだが何故か甘えるのは俺の方だけだ。

スバルも頼りにはしているのだが微妙に違うようである。


「何時の間にかレオも男らしくなって頼りがいが出てきたからねえ」


なんてスバルは言ってたが、自分ではよくわからん。

しかしいつまでもこうしてるわけにもいかんな。


「ほら、いい加減離れろ。学校遅れちまうぞ」

「キスしてくれたら離れる~」

「それはもういいっちゅうねん!」


やたらとキスを求めてきたり一緒に寝ようとしたりするなどおかしな点は多々あるが

まあ、俺の可愛い妹分である。






きぬがコンビニでジュースを買ってるのを待ってる時に後ろから話しかけられる。


「よう、レオ」

「おうフカヒレ」


こいつの名前は鮫氷新一(さめすがしんいち)。

鮫だけにシャークと呼ばれたいらしいが皆からはフカヒレと呼ばれているヘタレだ。


「聞いてくれよ。俺、昨日ケイコちゃんとデートするとこまでいったんだ」

「そっか。そりゃ良かった」


ちなみにこれはフカヒレがやっているギャルゲーの話です。


「ところでレオの両親ってずっと海外に言ってるけど帰ってくる予定ってないの?」

「ああ、仕事だか知らんが一人っ子を置いといていい身分だよ」


フカヒレの言う通り、俺の親は何故かずっと海外に行っている。

家事などが面倒くさいが仕送りがあるので生活には特に困らないしある意味気楽ではある。


「ギャルゲーの主人公ってそういうシチュエーション多いんだぜ。ギャルゲー野郎って呼んでいい?」

「男友達がメシを作ってくれるギャルゲーってあるのか?」

「いや、それは無いな。普通は隣に住む幼なじみとか。これ王道。」

「きぬは何もできんぞ」

「そうだけど、でもお前にしっかり懐いてるじゃん。幼なじみに過剰に好かれてるなんて立派なギャルゲー野郎だぜ」

「……それはスバルも含まれてるのか?」


馬鹿な事を話しながら俺たちは校門の前まで来ていた。


私立、竜鳴館(りゅうめいかん)


なんともいかつい名前のこの学校が俺の学び舎なのである。

昔は竜胆館(りんどうかん)なるこれまたいかつい名の女子高だったのだが五年前に共学になり名前も一新。

校舎も木造から鉄筋コンクリートになりとても奇麗で評判もいい。

もちろん俺も気に入っている。

元女子高だったせいか女子の数、権力共に高い学校だ。

生徒会長も女子だしな。


「おい、後ろから自転車きてんぞ」


噂をすればなんとやら。生徒会長のおでましだ。


「姫やね」


女子が言う。俺のクラスメートの声だ。


「ニーハオ、姫」


何故か中国語。この声も俺のクラスメートである。


「おはよー」

「姫、おはよう」


セーラー服にMTBというミスマッチな格好である生徒会長、霧夜エリカ、通称「姫」に挨拶する。

美しい金髪が目に入る。人口の染色では出せない天然物だ。


「チース」


さほど仲の良いわけでもない俺に対しても気さくに話しかけてくる。

周りのみんなの視線も姫に釘付けだ。もっともすべてが好意的という訳ではないが。

大金持ちの美しいハーフで彼女自身の唯我独尊の性格も相まって敵も味方も多いのである。

まあ良くも悪くも通るだけで話題を集める人である。





「…………………」



また、か。

最近校門を通る時に「彼女」から視線を浴びている。

見た所風紀委員の3年生の。制服をぱりっと着こなしておりみんなのお手本になりそうなぐらいだ。

更に言うなら手に持っている日本刀。ふと見せる身のこなし。どれを取っても武人のそれである。

だがその彼女が何故俺の事を見ているのかがわからない。何か恨まれるようなことでもしたのか俺?

とりあえず害意はなさそうなのでそのままにしておくが近いうちに接触してみようか?





「男子は男気を!女子は女気を磨き、青春を謳歌せよ!」


竜鳴館、館長 橘平蔵

生まれてくるのが遅すぎたと竜、言われた豪傑がこの学校の館長なのである。

遠目から見ても一目でわかるその圧倒的な武人としての力に俺は少々憧れている。

学校をここに決めたのもそれが理由の一つだ。

だが、俺は館長が顧問をしている拳法部には入っていない。

単に面倒だというのもあるが、俺自身が拳法家ではないというのが一番の理由。


「竜鳴館 館長 橘 平蔵!!」


館長の挨拶は一瞬で終わるので人気がある。

後、体育会系の人間はこの挨拶を励みにしている。

性根が体育会系じゃない俺にはよくわからんね。





「………ふあぁ……」


朝礼が終わると同時に眠気が出てきた。


「でっかいあくびねぇ、みっともない」

「…姫か」

「そんなテンション低い人は見ててうざったいから消えてくれないかなー」

「うるせえよ」


ちょっとイラっとしたので口調が荒くなってしまう。


「あら、対馬君ごときが私にそんな口聞くわけ?」


ちょっと機嫌を損ねた感じで姫が言う。


「……わるいね。姫はいつも通りだけどちょっと俺の機嫌が悪くてね」

「べっつにいいけどー」


姫はポーズと決め、手にはどこからか知らないがバラがあった。


「はい、バラをあげる。香気で機嫌を直しなさい」

「相変わらず変な特技を持ってるね」


俺は動揺することなくバラを受け取っていた。


「お嬢の嗜みよ。ポーズをとったらバラぐらい出せないとね」

「……そういうもんかい」

「そうよっ」


姫はそのまま顔をどんどん近づけてくる。

相変わらず人間離れした美しさだ。フカヒレなら一瞬で理性が吹っ飛んでいるだろう。


「……………………………」

「…………………っちぃ、今日も対馬君を照れさすことが出来なかったか!」


しばしの間、にらめっこみたく、お互いの顔を近づけて見ていたが姫が痺れを切らしたように顔を離す。


「そんなことで暇つぶしをしないでくれ」

「あら、私は全然暇じゃないわよ」

「確かに」


姫はいつも忙しかったな。


「そんな私の貴重な時間を使って対馬君を赤面させようとしてるのよ、光栄に思いなさい」

「いや、じゃあ辞めればいいじゃん」

「この私の美貌に見惚れない男がいるなんて許せないわ。これは私の意地よ」

「……さいですか」

「ふふ、いつかその顔を真っ赤に染めてあげるわ、じゃあね~」


呆れている俺の顔を見てから去っていく。

姫も随分酔狂な事に時間を費やすねえ。

まあ姫とはこんな感じ。ただのクラスメートだけど他の男子に比べたらちょっと構われてるかも。



「…………………………」

「お前は何ふくれてんだよ、きぬ」





うちのクラスは基本的に問題児が多い。

生徒会長がいるのにみんな好き勝手にやってるのはそれ以上に生徒会長が好き勝手やっているからだ。


「みんなー他のクラスに迷惑だから静かにしてよう」


クラスの委員長である佐藤良美さんことよっぴーが言っても無視してしまう有様である。


「……聞いてないしぃ」


ちなみに俺はずっと静かにしている。単に眠いからだが。

なんとなしに佐藤さんに近づいていく。


「佐藤さんも大変だねえ」

「あ、対馬君っ!」


俺が呼びかけると佐藤さんは満面の笑みを俺に見せてくれた。

見ていてこっちも嬉しくなってしまう。


「誰も私の話聞いてくれないよう……」

「まあまあ、拗ねない拗ねない」


冗談半分で佐藤さんの頭を撫でる。

怒られるかなっと思ったが佐藤さんはびくっ!っと震えた後顔を真っ赤にしてこっち見る。


「え!?つ、対馬君!?」

「あ、ご、ごめん佐藤さん。ついきぬに対しての癖が」


言いながらも俺の手は佐藤さんの頭から離れていない。


「え、え、ううん。私、ぜ、全然怒ってないよ………その、できればもっと……」

「おらぁ~そこのセクハラ小僧!!なによっぴーの頭なでなでしてやがんだっ!」


馬鹿が怒涛の勢いでやってきた。


「レオ!なによっぴーの頭撫でてんだよ。よっぴーが嫌がってるじゃねえか!」

「か、かにっち。私は全然、っていうかむしろ……」

「お前が切れる理由がわからんが……佐藤さんごめん。不快な思いさせちゃって。もう絶対しないから」

「えぇっ!そんな私は全然大歓迎……」


佐藤さんが何か言おうとしたがきぬの声によって遮られてしまう。


「レオは、ボクの頭だけ撫でてればいいんだよ。他の女子は頭を触れられると普通嫌がるからね!」

「ったく俺も、もう少しいい女が幼なじみだったら撫でがいがあるのになぁ」


言いつつもきぬの頭を撫でてみる。うむ、手に馴染んでいる。





「…………………………………」




なんかちょっと寒気がしたが、まあ気のせいだろう。



theme : 二次創作
genre : 小説・文学

愛すべきは幼なじみ? 第1話


ん…………なんか……いい気持ちだな………

なんだろこれ………やわらかくてずっと触ってたいな……


「あ……公君ったら朝から激し……あんっ」


…………なんか目が覚めてきた………………はぁ、またか………

僕は勢いよく布団から飛び出しなぜか横にいる幼馴染の女の子に向かって叫ぶ。


「詩織!何度言ったらわかるんだよ。朝、ベットに潜り込むのはやめてって言ってるだろ!」

「あら、公君。朝に潜り込んだんじゃないわよ」


詩織がベットからゆっくりと起き上がり僕に色気たっぷりの視線を向けて喋る。


「昨日の夜からずっとだもん……」

「余計に悪いわ!!」

「ああ……公君って相変わらずいい匂い………」


僕の声を無視していきなり抱きついて匂いをかぐ電波幼馴染。


「人の話を聞けええええ!!」


どうやら今日も僕の幼馴染は絶好調のようである。








─────────────────────────


愛すべきは幼なじみ?


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「いい加減にしてよ、今度やったら本当に怒るからね」

「うん、ごめんね公君」


リビングで朝食をとりながら隣でにこにこして僕を見ている詩織に警告する。

その顔に反省の色がまったく見られないのが非常に気になるがとりあえず朝食を優先する。


「ねえ公君、いよいよ今日から高校生だね!」

「……ああ、そうだね」


食事中なのにお構いなしにどんどん喋りかけてくる。


「私……公君と一緒のクラスになりたいな~、公君だってそうでしょ?」

「……いや別に」


なぜか椅子を近づけ頬をなでなでする詩織。目がなんかうっとりしてる。


「もう、公君ったら素直じゃないんだから……でもそこが可愛いのよね~」

「いや、本音なんだけど…」

「ふふ、もう食べちゃいたいぐらい可愛いわ………」


目が怖いです、詩織さん。


「うふふ、うふふふ………」

「……………………………」



しばらく僕は彼女のされるがままになっていた。




「公!いつまで、ご飯食べてるんだい。始業式に遅刻するよ!」


母の声が響く。我に返り時計を見るとすでに8時5分を指していた。

ここから僕の行くことになるきらめき高校までは徒歩で20分ぐらいはかかる。


「もう、詩織のせいでご飯食べる時間なくなっちゃったよ!」


テーブルにはまだ6割ぐらい残っている朝食があるがもう諦めよう。


「詩織ちゃん!公の事頼んだよ。」

「もちろんですわ、お義母様」


満面の笑みで母に返事する詩織。

何故か母の中ではいつからか僕と詩織は恋人同士ということになっているらしい。

僕はそんな事実は一切無いと訴えたがあえなく却下された。

母公認となってから詩織は、ほぼ毎日僕の部屋に忍び込み今朝のような事を繰り返してきた。

僕としても詩織と寝る事は嫌いではないというかむしろ気持ちいいし好きなのだが

一度許してしまうとそのままイク所までイッちゃいそうなので表向きは頑なに拒んでいる。

僕は詩織と一生を共にする気などまったく無い。もっとまともな子と付き合いたいのだ。


「さ、公君行くわよ(はーと)」


僕より3センチ背が高い詩織は僕の腕を抱いて玄関へと向かった。

…………まあ嫌いじゃないんだけどね(腕に伝わる感触を味わいながら








「ねえ、詩織…」

「なあに、公君?」


学校へと歩いている僕と詩織だが気になる事があるので言う。


「腕……離してくれない?」

「だ~め。公君はずっと私と腕を組むの。」


もうすぐ学校だというのに腕を離してくれないのである。

今後の学園生活を考えるとこんな状態で学校に向かうのはやめた方がいいだろう。


「もう、いい加減離してよ!」

「ぶぅ~わかったわよ~」


語気を強めて言うと本当にしぶしぶといった感じで腕を離す詩織。

ふぅ……なんとか誰かに見られる前に離してくれたか。


「どうして腕組んじゃだめなの~?」

「どうしてって…恋人同士って思われたら恥ずかしいよ……」


そう、僕と詩織は恋人同士じゃないのだ。それなのにいきなりあんな所見られたら

恋人同士じゃないって言う方が無理がある。

そんなことになったら彼女が作れなくなるじゃないか!!


「だったら問題ないじゃない、私達恋人同士なんだから(はーと)」


そういって再び腕を取る詩織。


「いつから僕と詩織が恋人同士になったんだよ。」


強引に詩織の腕から逃れ言い返す。


「決まってるじゃない。生まれた時からよ。」


もう一度腕を取り返す詩織。なんだかすっごい笑顔。


「僕は生まれてからずっと一人身のつもり……なんだけどね!」


かなり強く持たれている腕を思い切り力を込めて取り戻した。


「照れ屋なんだから公君は。でもあんまり意地悪言ってると………おしおきしちゃうわよ(はーと)」

「………………………………」



勝負有り 藤崎詩織 1R45秒 貫録勝ちです!


  
僕の頭の中にそんな言葉が浮かんできた。









「詩織~僕のクラス何処かわかる~?」

「ん~ここからじゃよくわからないわね。ちょっと見てくるから待ってて公君」


ようやく学校にたどり着いた僕らはまずクラス分けが掲示されている場所に向かった。

道中時間が少しかかったせいか既に多くの生徒や保護者らしき人達で溢れ返っていた。

ちなみにその中でも僕らは結構な注目を浴びてしまっている。

結局あのまま詩織に押し切られて腕を組んだまま学校に入ってしまったからだ。

いわゆる嫉妬が篭った怖い視線を僕はずっと感じ続けている。

なんてったって僕の隣にいるのが詩織だからね。正直こうなるとは思ってた。

成績優秀スポーツ万能なんていうありがちなフレーズに完璧に当てはまる(性格は別)上に

容姿まで完璧で中学時代は正に学園のアイドルだった。

そのせいで僕もこういう視線を三年間浴び続けてたんだっけ……

嗚呼、せっかく高校になってやり直せると思ってたのに……

今度こそ彼女が作れると思ってたのに……いや、諦めるのはまだ早い!

幸い詩織が掲示板を見に行ってくれたおかげで視線は結構向こうに流れている。

この隙に逃走……したら後で詩織が怖いから却下として……

せめて!せめてまた腕を組まれたりするのだけは避けよう!うん、これしかない。


なんて事を一人決意してると詩織が凄い勢いで帰ってきた。


「公君やったわ!!私達同じクラスよ!やっぱり私達は運命で結ばれてるのね~!」


言うが早いか抱きつくが早いか。ともかく僕の計画は2秒で破綻した。


「し、しお…わかった、わかったから離して!」

「これで一日中公君とらぶらぶできるわね!」

「恐ろしい事を言うなああ!!」

 

こんな感じで僕の高校生活は始まってしまった。

3年間にも及ぶ人生において最もといってもいいぐらいの大事な日々。

いったいこれからどんな事が僕を待ち受けているのだろうか。

僕にはほとんど予想もつかない。

ただ一つだけわかっている事といえば………


「公く~ん(うっとり)」

「いい加減離れろ~~~!!!」



なかなか乱れた日々になりそうって事ぐらいかな(遠い目
















theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

愛すべきは幼なじみ? 第2話


「……というわけで私からの挨拶は以上です」

「……ありがとうございました。続きまして……」


なんとか詩織を落ち着かせる事に成功した僕は体育館で入学式に参加していた。

幸いな事にクラスが同じといっても、席があいうえお順だったので詩織と離れる事ができた。

あれだけ浴びていた大量の視線も現在は舞台で喋っているPTA会長とやらに注がれていた。


「……ありがとうございました。続きまして、新入生代表の挨拶です。

新入生代表、藤崎詩織さんお願いします」

「はい」


そういってすっと立ち上がる詩織。

………まあ、詩織だからな。おかしくはないか。

中学時代、学年1位の成績でこの学校の入試でもトップの成績をとったらしい(自分で言ってた)

詩織が新入生代表になっても別におかしくはないだろう。

………周りを軽く見渡してみると、男達が鼻を伸ばして前を見ている。詩織に見とれているのだろう。

お前らは朝の騒ぎを知らんのか。僕は声を大にして言いたかった。

中学時代もそうだった。

詩織はあの頃からすでにおかしかった。

具体的にいうとイロボケだった。

クラスが別だからか登校する時や休み時間、下校の時まで僕にべったりだった。

それなのになんでだろう、詩織はみんなの人気者だった。

部活でもバスケットボールで学校を始めての全国へ導く原動力になって

全国のベスト5にも選ばれたりしてたし、

クラスでもその外面の良さでみんなに慕われてた(らしい)

上の3行だけ見ると詩織の人気もわかるよ。だけどね。


僕に対する態度を見ただろうが!どう見てもキチ(ry


詩織ファンの間では僕のせいで詩織が狂ってしまったらしい。






あいつは敵だ!みんなで協力して主人公(ぬしびとこう)をヤル(殺る)ぞ!!!

ジークしお(ry





なんでやねん。


「以上で新入生代表の挨拶を終わらせていただきます」


詩織の挨拶がいつの間にか終わってた。

一礼して自分の席に戻る姿は優雅の一言。

周りの男もそれに釣られて視線を動かしていく。限りなく目じりが下がっている。



……あれが本来の詩織の姿なのかもな……なんで壊れた(失礼)んだろう……

………本当に僕のせいなのかもな……変なフェロモンでも付いてるのだろうか、僕には………





後々になって僕はわかるのだろう、僕の考えが間違ってなかった事を…………(泣







─────────────────────────


愛すべきは幼なじみ? 
            2話

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ようやく入学式も終わり僕はその他大勢の生徒と共に自分のクラスへと向かった。

教室に入り、みんな適当なグループになって喋っている。

中学の時の知り合いなのだろうか。

一つ大きなグループがあった。女の子が大量にいてその中心を見る事はできなかったが

女の子全員が中心にいるであろう人物に注目し、喋りかけてるのがここからでもわかった。

どんな人なのか興味はあったが僕はそれを確かめようとは思わなかった。なぜなら………


「公君!他の女の子を見てデレデレしちゃだめ!」

「……別にデレデレなんかしてないよ。」


隣にいる詩織が怖いからね。


「公君がデレデレしていいのは私だけなんだからね!」


そういって腕をとる。やめんかい。


「ちょ、詩織やめてよ。こんな所で……」

「もう、公君ったら照れ屋なんだから。でもそんな所も好き!」


そう言って頬擦り。いかん、逆効果だ。

状況は極めてまずい。徐々にクラスメイトの視線を集めだした。

黒い視線の割合も高くなってきた、なんとかしなければまずい!!


「もうっ!いい加減にしてよ!」

「あん……」


強引に離れました。なんか色っぽい声を出す詩織。

やめてくれ、その切ない目線を僕に向けるのは。

まるで僕が悪者じゃないか。周りも責めるような視線を止めろ。

段々空気が悪くなってきた教室だったがドアが開く音で一掃された。


「はい、みなさん席に座って下さい。席順は黒板に書いてある通りです。」


そう言いながら壇上に上がる女性。

このクラスの担任の様だが結構若く見える。後、かなりの美人。

僕は密かにガッツポーズ、あくまで密かにだ。

露骨にすると詩織が怖い。


「え~っと、私がこのクラスの担任をする事になりました雛山といいます。みなさんよろしくお願いしますね。」


そういって微笑む先生。なんかのんびりした雰囲気の人だが僕的にはツボ。

周りの男達もにやにやしている。どうやら第一印象は最高のようだ。


「みなさん初対面同士の人達も多いと思いますのでぇ、自己紹介をみなさんにしてもらいますね。

 それじゃあ出席番号の1番の人からお願いしますね」

 
1番の人が立ち上がり自己紹介を始める。

男だったのであまり興味が沸かなかった。

何人かの挨拶が終わり、次の人が立ち上がると女の子達が歓声をあげた。


「きゃあ~カッコいい!」

「うわ~モデルみたい……」

「ふ、僕の名前は伊集院レイ。女の子達は仲良くしてくれたまえ。男どもはどうでもいいよ。」


そういう伊集院とやらに女の子が更に歓声をあげる。

男達は黒くなっている。目とかオーラが怖い。

僕はというと何故かあまりムカつかなかった。


どうも彼を見ていると……違和感があった。


それが何なのかはわからないけど、ムカつくとかそういった感情は沸かなかった。

まあそれはどうでもいいのだが彼が庶民はどうたらと自己紹介なんだか喧嘩を売っているんだか

よくわからない挨拶をしている時に僕に目線があった瞬間、ビックリした様な表情をしたのが

すごく気になる。その後も僕の方をちらちらと何度も見てきたのは更に気になる。

何度も見てくる内に顔がうっすらと赤くなってるのは僕の気のせいじゃないと思う。

ふと詩織の方を見た。いや、見てしまった。


「………………」


すっごく怖かったです。







「主人公(ぬしびとこう)です。趣味特技共に特に無し。よろしくお願いします」


挨拶なんかどうでもいい。僕は適当に言ってさっさと座ろうとした。が………


「そこの席の女の子との関係は何ですか~?」


詩織の方を指しながら質問してきた奴のせいで簡単にいかなくなってしまった。

この男には見覚えがある。先生が来る前の教室で女の子にいろいろ聞きまわってた奴だ。


「んん、え~っと彼女とは家が隣同士の幼馴染で……」


なんと言うべきか困りつい詩織の方を見ると、彼女は何かを期待するような視線を僕に向けていた。

詩織……君の期待する答えはわかるけど僕にその気はないよ……

ついでに伊集院の方にも目を向けた。

何か僕を睨んでる。彼は詩織狙いなのかな?


「……それだけです、以上。」


結局僕は無難に答えそのまま座る。

もう、詩織の方は見ない。どんな表情しているかわかるから。

伊集院の方を見ると……ほっとしているようにも見える。

やはり彼は詩織狙いのようだ。



その後も自己紹介はどんどん進んでいく。

途中、少し可愛い子に僕は何度かにやけるがその度に寒気がするのですぐ正気に戻る。

原因は言わずもがな。

そうこうしている内に詩織の番がやってきた。


「藤崎詩織です。」


立ち上がり彼女が名前を告げると周りの雰囲気が変わった。

すべての視線は彼女に注がれ彼女はそれを堂々と受け止めている。

その優雅な立ち振る舞いにみんなは目を奪われる。

そう、これが藤崎詩織なのだ。圧倒的存在感とその美貌でみんなの注目を独り占めする。

この時ばかりは僕も目を奪われる。

それまでの自己紹介とは比べ物にならない程の注目を浴びながら自己紹介を続ける詩織。


「趣味はクラシック鑑賞です。クラブはバスケットボール部に入ろうと思っています。

 みなさんよろしくお願いします。………後、最後にみなさんに言っておきたい事があります……」


あれ、何か空気が………


「先程、公君は私との仲をただの幼馴染と言ってましたが……違います」


そう言いながら僕の方に近づく詩織。

………嫌な……予感が……



「私と………公君は………恋人同士ですから(はーと)」



そのまま抱きついてくる詩織。しまった、こうくるとは!!



どっこーん



そんな感じ、今の教室の雰囲気は。

詩織の爆弾発言により教室は一気に騒がしくなった。

みんな僕を見てくる。うう、何とかしないと……


「ちょ、違うって、みんな俺の話を聞いて…むごっ!」

「ん………」



おおおおおおおおお!!!




弁解しようとする僕の口になんとキスをぶちかましてきた。

僕は手足をじたばたさせて抵抗するが身体能力のすべてが僕の上を行く詩織は離してくれない。



「んん、んん~~~!!」



誰か助けて~~!!


「ん、……うん、ん……」


騒がしかった教室の空気も、その妖しい雰囲気に呑まれて静まりかえっていく。

結局詩織は3分もの間僕の唇を奪い続け、僕の頭がとろけてきた所で開放してくれた。

そして、辺りを見渡しながら言い放つ。



「……というわけなんで、……公君共々よろしくお願いしますね」




その挨拶があまりにも色っぽくて…………クラスの男どもは完全に魅了された。



女の子だってやばいのが何人かいるようだ。必然的に僕に対して……




神は無慈悲だ。あまりにも無慈悲だ。だって………



「ふふふ………」






………………………………………………





僕に、こんなに沢山の敵を作るのだから






















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genre : 小説・文学

愛すべきは幼なじみ? 第3話


現在僕は廊下を全速力で走っている。

中学の3年間、詩織に無理やり入れさせられたバスケ部で多少なりとも鍛えられてたのか

自分で思っていたよりも良い速度を維持している。

だけど何故僕がこんなに走らなくちゃいけないんだろう……

疲労のため、かなり低下してきた僕の頭脳は答えてくれない。

………ちらっと後ろを見る。

…………ああ、そういえばそうだった……



「待ちやがれ主人!!」

「藤崎さんをたぶらかす悪魔め!生かしてはおけん!!」

「うおおおおおおお、てめえさえいなければ!いなければああ!!」

「今こそ!中学の時の時からの恨みを晴らす時!主人覚悟!!!」



僕は追われているんだった……











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愛すべきは幼なじみ?
           3話


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ああ~疲れたよぉ。でも止まったら後ろの奴らに何されるかわかんないし。

なんでこんな事になったんだろうか……












結局しばらく続いた沈黙を破ったのは雛山先生だった。


「……え、ええっとそれじゃあ藤崎さんの自己紹介は以上ね。

 …次の子、自己紹介を続けてね。」


どうやら何も見なかった事にするらしい。

こののんびりした雰囲気の先生には少し刺激が強すぎたようだ。

詩織も僕に流し目をして自分の席へと帰っていく。

僕は周りのオーラに圧倒されて震えている。


「………です。よろしくお願いします。」

「は、はい、以上でみんなの自己紹介は終わりですね。……そ、それじゃあ今日はこれだけで終わりにしますね。 明日からは本格的に授業に入るから皆さんよろしくお願いしますね。」


そう言い残してさっさと帰っていく先生。先生もあまり長居したくない空気のようだ。

クラスの皆は先生が教室を後にした事を確認すると一斉に二手に別れ、突進してきた。


「ふ、ふ、ふ、藤崎さん!う、う、嘘ですよね!ぬ、ぬ、主人が彼氏だなんて!!」

「貴女は騙されてるんだ!あんな奴にキ、キ、キスをするなんて!!」

「藤崎さん!!主人君とどこまで進んでるの!?もう、しちゃってるの!?」

「ぼ、僕、初めて会った時から藤崎さんの事が!!」



一つは詩織に



「うおおおお!主人殺す!!」

「ちくしょおおお!!羨ましいぞ、この野郎!!」

「お前さえいなければ藤崎さんは俺の物に!!!」



もう一つは僕に襲ってきた。


「ちょ、ちょっとなんだよ急に!」


僕は素早く鞄を取り教室へと飛び出した。無論彼らも付いてくる。

普段ならすぐにそばに来る詩織も大勢の集団に囲まれて動けないようだ。


「あ~ん、公君助けて~~」


何か聞こえたけど無視しておく。

こうして僕は大量の人間を引き連れ、学校を走り回る事になってしまった。






……ええっと詩織が暴走したのが原因ってことかな……

なんで暴走したんだっけ……ああ、そうだ、僕が唯の幼馴染って言ったからだ、きっと。

ああ、しくじったぁ、というかあの場合はああ答えるしかないよ、実際付き合ってないんだし。

あああ!そもそもなんであんな質問してきたんだよ、あの野郎!

だれだっけあいつ……確か、女の子に話聞きまわっててその時名前言ってた……

…………確か早乙女好雄とか言ってたっけ……


ちくしょう!あいつがあんな質問してこなけりゃこんな事にならなかったかもしれないのに!

むかつくからあいつの出番減らしてやる。

レギュラーなんてとんでもない!脇で十分だあんな奴!




つい、口汚く罵ってしまうぐらいイライラしている僕だが

そんな事をしても、もちろん状況は好転しない。

むしろ、僕が疲労してきたせいで徐々に差が縮まってきた気がする。

彼らもどうやら体育会系の人達だったようだ。まだまだ余裕が感じられる。

まずい、いよいよまずくなってきた。

そう考えながらも僕は運動場を駆け抜ける。


「あの走りは………根性ね!!」


何か聞こえてきたが確認する余裕はない。

野球部、サッカー部、テニス部、水泳部等の皆さんの注目を浴びながらも僕の逃走は続く。

走り回っている内にこの学校の裏門が見えてきた。

う~ん……どうする、学校を出るべきか……

だが僕に考えさせてくれる時間を彼らは与えてくれなかった。


「いたぞ!!あそこだ!」

「ここまでだ!主人!!」

すぐに追っ手が来た。



「主人タン、ハァハァ……」



嫌な言葉は華麗にスルー


「もう!行くしかないじゃないか!」


僕はそう言って裏門に向かった。

……ん?なんだあの車……

よく見ると校門の所に黒塗りの高級そうな車が止まっていた。

やけに長いし……あれがロールスロイスってやつかな?

意外と冷静に僕が車を見ていると急に後部座席のドアが開いた。


「ふ、乗りたまえ庶民。」


この声は確か伊集院。おお、僕を助けてくれるのか!

僕はその救いの声をまったく疑いもせず車に飛び乗った。


「ありがとう、伊集院!」

「ふ、礼はいらないよ。外井、出せ。」


言うやいないや、すかさず車を発進させる運転手の人。

素晴らしい加速で後ろのクラスメイトを引き離す。

僕は裏門の所で文句を言いまくっているクラスメイトを窓越しに見ていた。


「うわ~危なかったなぁ」

「……………ハァハァ」

「え?どうしたの?」

「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」


そういって笑う伊集院。だが笑いが乾いている。


「いや~本当に助かったよ伊集院。ありがとう」

「……礼には及ばないよ。僕が帰ろうとしたら、たまたま君がここに逃げてきたからついでに乗せただけだからね」

「それでもだよ。伊集院がいなかったら僕はどうなってたか……」

「………確かに何をされるかわかったもんじゃないわね……」

「え、何か言った?」

「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」


そういってまた乾いた笑いをする伊集院。

美形の彼がやると、こんな姿も様になる。


「乗りかかった船だ。君の家まで送ってあげよう。」

「おぉ、悪いね。僕の住所は………」


僕の住所を伝えると、伊集院は運転手に指示を出した。

僕は走り回ったせいで荒くなった息を整えるべく、しばらく静かにしていた。


「……時に庶民、少し聞きたいことがあるのだが……」


しばらくすると伊集院が真剣な表情で喋りかけてきた。


「ん?何?」

「……その、藤崎君とは本当に……つ、付き合っているのかね?」


……その事か。この際一人でも多く誤解を解いておかないとな。


「いや、僕は詩織とは付き合ってないよ」

「し、しかし君は教室で藤崎君と、…く、口付けをしていたじゃないか!」

「あれは!詩織が無理やりしてきたの!詩織は、…僕の事を……その………と、とにかく!

 僕は詩織の事はなんとも思っていないよ!」


やや必死になって言っておく。これぐらい強く言っておかないと誤解は解けないと思う。


「……本当に?」

「……そりゃあ、あんな事した後じゃ信用できないかもしれないけど……」


僕はやや俯きがちになってつぶやく。


「う!…………………も、萌え……」


何かを小声でつぶやく伊集院。顔が焼け野原のようになっている。


「どうした?伊集院?」


僕は上目遣いで伊集院を見る。


「うぅ……鼻血が………い、いや、わかった。君を信用しよう」

「本当に!ありがとう、信じてくれて!」


僕は嬉しさのあまり彼の手を握って満面の笑みを浮かべる。

自分で言っといてなんだが正直信用されるとは思っていなかったから嬉しさはひとしおだ。


「ぁぁぁ………し、幸せ………」


伊集院が恍惚の表情をしているが誤解が解けて興奮している僕にはわからなかった。









「………レイ様、そろそろ主人様のご自宅に到着致します。」

「は!……わ、わかった。」


意外と時間が立つのは早かったな

すぐに僕の家が見えてきた。車が家の前で止まるとドアが勝手に開いた。


「ふ、……クラスのみんなには僕の方から藤崎君との仲は誤解だと伝えておこう。」


車を出た僕に伊集院がとても嬉しい事を言ってくれた。


「本当に!?是非頼むよ伊集院!!」

「……ま、任せたまえ。クラスメイトの誤解は完璧に解いておく。」

「おう、ありがとな!」


僕は今日最高の笑顔を伊集院に向けた。



「…………そ、外井、出しなさい!」



そういうと、ロールスロイスは猛スピードで去っていった。

伊集院の奴……照れてたのかな?顔が真っ赤だったし。

しかし、自己紹介の時と随分印象が違ったな。

すごい傲慢で女たらしな奴に見えたけど……いいやつじゃん。


僕は高校で初めて出来た友達を思い、頬を緩ませながら我が家へと入っていった。

















おまけ




「ああ~~ここが主人君の座ってた席!!……あぁ……」


レイは主人公の座っていた座席にほお擦りしていた。

その顔は限りなくとろけている。正に幸せ独り占めといった感じだ。


「主人君の匂いが……すぅー……」


見ていられないぐらいに顔がにやけている。

この顔を見せればキャアキャア言っていた女子も離れていくだろうに。


「レ、レイ様!後で私にもさせていただけませんか!?」


「ダメ!!………ぁぁ」


彼女はしばらくの間、幸せを満喫していた。



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愛すべきは幼なじみ? 第4話


ふぅ~……やっぱり風呂はいいなあ。



嵐のような高校生活初日をようやく終えることが出来て

僕は緊張感から解放されたせいか自分の部屋に入るなりすぐに寝入ってしまった。

余程疲れていたんだと思う。目が覚めたらもう晩ご飯の時間になっていた。

流石に寝すぎだと思ったけど、過ぎた事は仕方ない。

今は晩御飯を食べ終わって風呂に入っているところ。

本当に気持ちいい。ここだけが僕のオアシスと言ってもいいぐらい。

しいて不満を言うなら詩織がいつバスタオル一枚で入ってくるかわからない事ぐらいだ。

やばいだろそれ、なんて言わないでくれ。……もう慣れちゃったんだよ(泣











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愛すべきは幼なじみ?
          3話

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やや長めの入浴を終えて身も心もさっぱりした僕は、冷蔵庫に常備してあるコーヒー牛乳を飲んでから

自分の部屋に戻った。

しばらくベットに寝転がりながらテレビでも見ながらのんびりと過ごすことにしよう。


しかし……今日はよく走ったな……


中学三年の夏にバスケ部を引退してからというもの、体育の時間も手抜きしてやってた僕にとって

あれだけ全力で走り続けたのは引退してから初めてだった。


どうやら………体力はあんまり落ちてないみたいだな。


久しぶりの全力疾走だったがあれだけの速さを長時間維持できたのだから

僕の体力は引退前とさほど変わらないみたいだ。


部活……どうしよっかなあ……バスケ部は詩織が入るだろうし……却下だな……


問題はそれを詩織が許してくれるのかという一点だが今は置いておく。


後は…野球……サッカー……テニスなんてどうだろうか……ん~どれもパッとしないなあ…


ちなみに文科系のクラブは最初から頭に無い。

体を動かす事は元々好きだからだ。

だからといってバスケ部に入りたくは無かったのだが。僕が入りたかったのは……


……あ、そうだ……水泳部があった……


そう、僕は中学の時水泳部に入りたかったのだ。

小学生の頃からスイミングスクールに通っていたし、そこではスクールの代表として大会に出た事もあった。

成績もあまり良くなく、陸上での運動神経もいまいちだった僕にとって水泳は唯一の自信だった。

当然中学に入ってからは水泳部でがんばろうと思ってたんだけど…詩織がね……

なんだっけ、確かすごい剣幕で怒り出したんだよ。





「だめえええ!!公君の柔肌を他の女子に見せるなんて……あぁ考えただけでも
 相手を校舎裏に呼びたくなっちゃう!
 だめよ公君。あなたの体を好きなだけ見ていいのは私だけなんだからね。そうだ!よかったら私と一緒に
 バスケットボールやらない?公君はちょっと体が小さいから不利かもしれないけどPGだったら問題ないし 
 公君ならきっとレギュラーも取れるわ!それにね、バスケットのユニフォームって二の腕が全部でるのよ。
 公君が着たらきっと…………良い!良いわもうこれしかないわ!さあ今すぐ体育館に行くわよ公君!!
 ほら、早く!!ハアハア……」
  




…………思い出したら涙が止まらなくなってしまいました。



「なんとかして水泳部に入りたいなあ……はぁ……」

「へぇ……公君水泳部に入りたいんだ………」



ビクッ


いきなり独り言に相槌が打たれた。

し、詩織か、一体どこに!?

声はしても姿が見えない。さまざまな詩織の奇行を見てきた僕だが流石にびびる。


「もう……公君ったら私をほったらかしにして帰っちゃうんだもん。……いけない子ね……」



ゾク……


詩織の声は僕の火照った体を一瞬にして凍らせるぐらいの温度だった。

やば……詩織本気で怒ってる………


「周りのみんなが帰らしてくれないんだもん………処理するのに時間かかっちゃったわ…」


いったい何を処理したんですか詩織さん!?


「おお、落ち着け詩織。ぼ、僕も変なクラスメート達追っかけられてて詩織の方にいけなかったんだよ。」

「へぇ……それで伊集院君の車で帰ってきたんだぁ……私を置いて…」

「し、詩織見てたのか!ってそれはあいつが追われてる僕を助けてくれてそのまま家に送ってくれただけだよ。」

「やけに仲が良さそうだったわね……伊集院君なんか顔を真っ赤にしてたし……」

「そ、それは!…っていうか伊集院は男じゃんか。別にやましい事なんか何もないよ!」

「……男ねぇ………まあそういう事にしておいてあげるわ……」


し、詩織何を言ってるんだ?伊集院は男に決まっているだろうが。

そういえば僕はいつまで姿の見えない詩織としゃべり続ける気なんだ。


「それより詩織!一体どこにいるんだよ、出てきてよ!」

「ふふ……あなたの下にいるわよ……」

「ええっ!!………………」


言われて僕は今いるベットの下を見てみた。……………………



怖っっ



ベットの下に潜り込んでいた詩織さんの放つ絶対零度の視線と目が合ってしまいました。

ふと僕の股間の涙腺がゆるゆるなのに気がつきました。


「……い、何時からいたんですか、詩織さん?」

「公君がお風呂に入っている間にちょっとね……」

「………………………」


くねくねと身をよじらせながら無言で出てくる詩織。だから怖いって。


「ふぅ……それじゃあ公君……お仕置きね!」


言うや否や僕に飛び掛ってくる。


「うわああぁ!!」


僕は素早く身をひねり詩織をかわす。

かわされた詩織はふぅっと一息ついてから僕の方へと振り向く。


「もう、公君ったら……そんなに今日は激しいのを期待してるのね(はーと)」

「誰もそんな事は望んでいません!!」


ああああだめだ!!今日の詩織さんは無敵すぎる!

僕では手がつけられない!

じわじわと僕との距離を詰めてくる詩織。顔がすっごい笑顔なんですけど……


「さあ公君!!今日は最後までやりましょうね!」

「何をやるんですか、何を!!」

「ナニってそんな……公君のエッチ!わかってるくせに、もう私の口から言わせる気?」

「お願いですから正気に戻ってください!!」

「えいっ!!」


可愛い声とは裏腹に凄まじい速度で僕に抱きついてくる詩織。


うっきゃああ!捕まってしまった!!


ああ、詩織の胸が!!匂いが!!……………嗚呼(陥落寸前


「う~ん、公君良い匂いね……私のためにちゃんと準備してきてくれたのね」

「な、な、そんなんじゃないよ!僕は普通に風呂に入っただけで……」

「照れないで公君、私はちゃんとわかっているから……」

「わかってねえええ!!」


い、いかん頭がくらくらしてきた………


「うふふ、公君ったら顔真っ赤にして可愛いんだから……」


詩織は体重を前にかけて僕をベットへと押し倒した。

そして僕の胸に顔を埋めてくる。


「ううぅ………詩織これ以上はまずいって………」


これ以上は……引き返せなくなってしまう……


「まずくなんかないわ……私はずっとこの時を待ち望んでいたんだから……」


詩織はこれまでの壊れ具合を払拭するかのような真面目な顔で僕だけを見ている。


「詩織…………」

「公君…………愛してるわ、私にはあなたしか見えないの……お願い……」


………………詩織……そこまで僕の事を…………

久しく見ていない詩織の真剣で、熱い目を見てしまって僕は………




「うぅ………………詩織………ごめん!!」




ギブアーップ!!



僕は詩織を強引に押しのけてドアへとダッシュした。


「あん、公君どこに行くの!!」

「ごめん、僕はまだ身を固める気はないんだ!さらばだ詩織!!」


速攻でドアを開け部屋から脱出。そして部屋の鍵をかけて詩織を閉じ込める。

僕の部屋には窓が無いので詩織はこれで脱出不可能である。

何故鍵を今持っているのかは聞かないでくれ。しいて言うなら経験の賜物といった所だ。



「公く~~ん、カムバーーーック!!!ああんもう、また逃げられちゃった!!」



素早く家を飛び出す僕の耳に詩織の叫びが聞こえた。









さて、どうしようか………

詩織から逃げる事に成功した僕は暗い夜道を一人歩きながらこれからどうするか悩んでいた。



しかし、さっきは本当にやばかった……長い事詩織に襲われ続けているが(笑

あれほど僕の心が揺れ動いたのは初めてだった。

原因はもちろん、あの詩織の真剣な顔を見てしまったからだ。

詩織があれほど真剣な顔をして僕を見てきたのは何時以来だろうか…

いつも僕を襲い、誘惑してくる時はとろけきっただらしない顔をしていたんだが……

もし、あれが本当の詩織だったら……僕は………



……考えててもしょうがないか。それよりもこれからどうしようかな……



現在、僕の部屋には詩織がいるしあんなに状態の詩織の所に帰るのはあまりにも無謀。

となると……

僕は携帯電話を取り出して、ある人へと連絡をとる事にした。


「………あ、もしもし?うん僕。悪いんだけどさぁ……うんそうなんだ。また詩織がさぁ

 ……そうそう、だからさ、今日も悪いんだけど泊めてくれない?……良い?本当、

 ありがとう!うん、それじゃあ今から家に行くね!うん、それじゃあ!」


やれやれ、今日もまた世話になっちゃうなんて……。

僕は苦笑しながら目的地へと向かった。













おまけ


「もう、公君ったらまた逃げちゃって度胸がないんだから」

公に逃げられて部屋に閉じ込められてしまった詩織は公のベットに入り、今日の反省をしていた。

その手馴れた一連の動作から経験の豊富さが伺える。


「でも公君いままでと反応が違ったわ……やっぱりシリアスで攻める作戦は成功のようね。

 これからもこの作戦で押していけばその内………ふふふふふふふふ」


暗闇に包まれた公の部屋に詩織の笑い声がしばらく響き続けた。



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愛すべきは幼なじみ? 第5話


………んん………


「……きて……主人君朝だよ、早くしないと学校に遅刻しちゃうよ……」


むにゃ……ん……後……1時間……


「もう、1時間も眠ったら完全に遅刻だよ。ほら、早く。」


……布団がめくられてしまった。……布団……これかな?


「きゃっ、ちょ、ちょっと主人君、寝ぼけてるの?」


うるさい布団だな……

僕は布団?を体に巻き込み再び寝ようとする。


「あ…主人君……やめて……でも……主人君なら私…で、でも詩織ちゃんになんていったら!」


布団がなにやら白熱してるようだ。僕は布団を強く抱き黙らせようとした。


「きゃあ!主人君……いいの?私、詩織ちゃんに遠慮しなくてもいいの?

 ……詩織ちゃんから私を守ってくれるの?それだったら私……」

「それは勘弁してください。」


一瞬で目が覚めて上半身を起こしながら言う。


ったく、なんて恐ろしい事を言うんだ!この布団は……って!!


「うわあ!!ってなんで一緒に寝てるんだよ!!」

「な、なんでって公君が無理やり……それよりそれは勘弁って……ひどい

 ……私なんか詩織ちゃんにボコボコにされちゃえばいいって思ってるんだ主人君は…」


布団……もとい彼女はゆっくりと僕に詰め寄ってくる。

目が潤んでいて今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。


「って、僕が無理やりって!!何やっちゃったんだよ僕は!!」

「うぅ……うわあああん!!」


彼女は我慢できなくなったのか泣き出してしまった。




「あぁ!!泣かないで!愛ちゃん」




美樹原家の朝は一人娘の鳴き声で迎える事になった。






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愛すべきは幼なじみ?
         5話


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「その、なんていうかごめん」

「……もういいよ」


朝食をとりながら僕は愛ちゃんに謝るが彼女はすっかりご立腹のようだ。

二人の間に気まずい空気が流れ、僕はご飯を食う事でそれをごまかす。


「すいません、御代わりお願いします。」

「はいはい、公君今日はよく食べるわねえ」


愛ちゃんのお母さんに御代わりを頼む。

ちなみに三杯目。もうお腹は膨れているが食べないと間が持たない。


「それで公君、昨日も大変だったらしいわねえ。また詩織ちゃんに襲われたんですって?」

「はは……まあそんな所ですよ」

「まあそのおかげでまたうちに来てくれて愛は喜んでるみたいだけど」

「お、お母さん、何言ってるのよ。」


愛ちゃんが顔を赤くしてお母さんに言う。

お母さんの言うまたとは言葉通りで、僕が詩織に襲われて家に帰れない時は

いつも美樹原家にお世話になっている。

確か詩織を通して愛ちゃんと知り合ってそれ以来ずっとだから……かれこれ2年ぐらいかな?

普通は年頃の娘がいる家に同年代の男を泊めるなんて考えられないのだろうけど

愛ちゃんのお母さんは何故か泊めてくれる。

お母さんいわく上でもいってる通り「愛が喜ぶから」らしいけどなんで愛ちゃんが喜ぶんだろう?

僕に好意を持ってるでもあるまいし。今だってからかわれてるから赤くなってるだけだし。

ちなみに詩織は僕がここに泊まっているのは知らない。

ばれたら愛ちゃん共々詩織に恐ろしい目に合わされるのは目に見えているから教えていないのだ。

しかしこれまで詩織の目を誤魔化し続けれているのは我ながらすごいと思う。


「何をいまさら否定してるのよ。普段は男の子とまったく喋れない愛がいつも公君とは楽しそうに喋ってるし。

 昨日だって電話があった後一人部屋で浮かれてたじゃない」

「そ、それは……あぅ…」


顔をさらに真っ赤にして俯いてしまった。


「それよりいつまで公君の事怒ってるのよ。あんな事いつもやってるじゃない。」


そう、僕がこの家に泊まった時はほぼ毎回、今朝と同じような事をしている。

僕もやめなきゃとは思ってるんだけどなかなか上手くいかなくてね。


「それは…だって主人君が……」

「だからそれもいつもの事でしょ。いつまでも怒ってると嫌われるわよ。」

「いや、別に嫌いになんてなりませんけど……」

「うぅ………それだけは嫌…」

「え?」


愛ちゃんが小声で何かを言うが僕には聞き取れない。

少しの間考え込んでいる様子をしてから顔を上げてこう言った。


「………動物園」

「え、動物園?」

「今度、動物園に連れて行ってくれたら許してあげるね」


微笑みながらそう言う愛ちゃん。

僕が断るとは全く思っていないようだ。それだけ信頼してくれてるってことかな?


「……うん、もちろんOKだよ。」


僕も微笑みながら返事をする。

信頼には答えないとね。


「あら、やるじゃない愛。仲直りなんて言って上手いことデートに誘うだなんて」

「お母さん!」


愛ちゃんはお母さんにやられっぱなしのようだ。








「よっと…よし行くか」


玄関で靴を履いていた僕に遅れて準備を済ませた愛ちゃんが近づいてくる。



「あ、主人君。もう学校に行くの?」

「うん、家に帰って鞄取りに行かないといけないしね。」


詩織も、もういないだろうしね。


「あの……よかったら私も一緒に行っていいかな?」

「え、愛ちゃんも?」

「う、うん。私も準備済ませちゃったけど今から真っ直ぐ学校に行ってもまだ早いし、

 それだったら主人君についていってい、一緒に登校しようかなって……だめ、かな?」

「え、え~っと」


愛ちゃんと一緒にかぁ。


…………………




一緒に家に行く

  ↓

母に見られる

  ↓

詩織にちくられる

  ↓

昨日の夜の再現



………………………………

わかりやすい未来に少々へこむ。


「ご、ごめん一緒にはちょっと。愛ちゃんはもう少しゆっくりしてから学校に行ってよ」

「そ、そっか。そうだよね、私なんかと行っても楽しくないもんね……」

「ち、違うよ。僕と一緒に行ったら詩織にばれるから……ってああっ!

 もう本当に行かないと遅れちゃうよ。それじゃあ愛ちゃん、またね。」 

「あ、主人君………」


家を出る時にちらっと見えた愛ちゃんの表情が少し寂しそうに見えた。


















「おはよう、主人君」

「お、おはよう」



「よう、主人早いな」

「う、うん」



どういうことだ?

僕は家に戻ってから登校してきて驚いていた。

クラスメイトが普通なのだ。

昨日あれだけの騒ぎがあったというのに僕に対して極めて普通に接してくるのだ。

というより喋った事の無い大半のクラスメイトが僕に話しかけてくる。

一体全体何があったというのだ。



ガラガラガラ



「ふ、おはよう庶民」


教室のドアが開いた音がしてすぐ、頭を伏せて考えている僕の頭上から突然キザな挨拶が聞こえてきた。

この声は……


「おはよう、伊集院。……でも僕に声をかけるとは思わなかったよ」

「な、何故かね?僕が挨拶をしてはいけないというのかね君は。」

「だって、昨日の自己紹介で言ってたじゃん。男はどうでもいいってさ」

「そ、それはそうだが……っく、君という男は意地が悪い!」

「ははは、まあそう言うなって」


顔を赤くして言う伊集院。

昨日のやりとりでこいつが結構いい奴だってのは分かったし僕も親しげに話す。

こいつとはいい友達になれそうな気がする。


「………もう……」

「え、……どうしたの伊集院?そんな拗ねた顔をして。」

「な!何故僕が拗ねなくてはいけないんだ。ま、まったく勘違いしてもらっては困る。」

「そうだよね、伊集院があんな可愛い顔して拗ねるわけないもんね。」

「な、な、な!か、可愛いだなんて……うぅ……」


顔を真っ赤にして俯いてしまった。

はは、こいつからかうと面白いや。

しかし、そうとう怒ってるみたいだね。あんなに顔が真っ赤になってて、もう見てられないぐらいだよ。
 

「ところでさ、伊集院。」


伊集院の怒りが爆発する前に話しの矛先を変えよう。


「うぅ…可愛いだなんていきなり言われたら私……はっ!な、何かね庶民!!」

「ああ、それがさ、他のクラスメイトを見てくれよ」


何かぶつぶつ言ってたが僕は気にせず言う

言われた通りに周りを見渡す伊集院。


「……ふむ、特に何も無いようだがどうかしたのかね?」

「いや、どうもないっておかしいだろ。昨日あれだけ追い回されてたのに今日はみんな

 何事も無かったかのように親しげに接してくるんだよ。」


昨日まったく喋ってない人達までね。


「ああなんだ、そんな事かね」

「え、なんでだか知ってるのか?」

「決まっているだろう。この僕が昨日みんなを洗脳……いや、ちゃんと説得したんだよ」

「ま、まじ!?」

「ふ、伊集院の力を持ってすればこのぐらい容易いものだよ」


僕も周りを見渡す。別に僕の方を見ている人はいない。

つまり、昨日の事は無かった事に………





もう、だめだと思ってたのに……

もう、高校生活で彼女ができるのは無理だと思ったのに……ううう……





「うおおおおっ!ありがとう、伊集院!!」


僕は感動のあまり、伊集院に勢いよく抱きついた。


「きゃあ!ちょ、ちょっと庶民、辞めたまえ!!」


伊集院が抵抗するが僕は抱きつくのを辞めない。


「本当に!本当にありがとう!!これで僕にも彼女ができるよ!」

「か、彼女だなんてそんな……あぅ!」


僕が強く抱きしめると伊集院が可愛い声を出してびくんと震えた。

なんかこいついい匂いするな。やっぱりお金持ちともなると高い香水でも使っているのかな?

ちなみにこの時点で先程とは違いクラスメイトの視線は僕らが独り占めしているが

僕はまったく気づかない。


「詩織の誤解さえ解ければ!僕にだって、僕にだって絶対彼女が!!」

「誤解ってどういうことかしら公君?」






一瞬にして興奮が冷めた。

僕は背後から伝わってくる冷気に震えながらゆっくりと伊集院から離れる。


「い、いや、詩織。別に僕はただ彼女が欲しいだけで」

「あら、彼女ならここにいるじゃない。」


にっこりと微笑み僕を見る詩織。


「誤解だなんて、公君は恥ずかしがり屋だから隠したくなるかもしれないけど……

 そこまではっきり嘘を言っちゃうなんて、私怒っちゃうわよ。」


いや、それこそ嘘だろ。

僕は口に出そうになった言葉をなんとか飲み込んだ。

今めったな事を言うと命に関わる。



「藤崎君、主人君は真実を言っているだけで別に問題は無いと思うがね」



僕の背後で悶えて?いた伊集院が言ってきた。

伊集院、君は僕の味方なんだね。


「あら、伊集院君。公君はちょっと恥ずかしがり屋さんだからこんな事言ってるだけよ。


 それに見たでしょ。昨日、教室で私と公君が愛し合ってた所を」


詩織が伊集院にも冷たい目をしたままそんな事をのたまう。


「……あれはどう見ても藤崎君が嫌がる主人君に無理やりしていたようだが。

 あれを愛し合っていたとは片腹痛いね。」


伊集院、詩織に向かってなんて勇気のある発言を!

感動した!骨は拾ってやるぞ(助けようとはしない


「……ど、どうやら伊集院君には私と公君の愛が分からないようね。」


詩織さん、青筋が怖いです。


「ふ、一方的に押し付けるのは愛とは言わないのだよ藤崎君」

「な、な、な………」


詩織さんの青筋がふくらんできました。やばいかもしれないです。


「それに主人君にも聞いたが藤崎君とは付き合っていないとはっきり言っていたよ」

「公君………」


あわわわわ……伊集院なんでそこで俺に振る!!

詩織の目がまるでメデューサの様になっている。要するに僕は動けない。

二人の間に挟まれて……あれ、胃が痛いぞ?







「ふふふふふふ……」

「ほほほほほほ……」









二人の睨み合いは先生が来るまで延々と続けられた……僕を挟んで。


………あいたたた(十二指腸潰瘍)


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愛すべきは幼なじみ? 第6話


キーンコーンカーンコーン




…………っは!!


チャイムの音に反応して時計を見ると既に今日の授業は終わっていた。

どうやら恐ろしさのあまり現実逃避をしていたようである。

HRもそこそこに終わり、クラス全体があわただしくなっている。

みんな帰ろうとせず、それぞれ口々に喋っている。

今日から部活の見学又は仮入部がOKなのでみんなその事で盛り上がっているのだろう。


「公く~ん!」

「ん、何詩織?」


いきなり詩織が近づいてきた。

放心状態が続いていた僕はやる気なさそうに返事をする。

これがまずい、非常にまずかった。



グワシ



「さあ、今からバスケ部に見学に行くわよ公君」

「あががが、し、詩織首が、頭がああぁ!」


いきなり僕の頭を鷲掴みにして引きずりながら歩き出す詩織。

脅威の握力だ、僕の首と頭が悲鳴を上げている。


「し、詩織。僕はバスケ部じゃなくて水泳部に行きたいなあ……って思ってるんだけど」



クワッ


振り向きざまに恐ろしい目つきで僕を睨んでくる。

プレッシャーで胃がすごく痛いです。


「駄目に決まってるじゃない!!どうして水泳部のあばずれ共に「私の」公君の肉体を見せないきゃいけないのよ!」

「あ~もう相変わらず病んでるな詩織は」


いったいどうしてこんな風に育ってしまったのだろうか。



「公君の体は私しか見ちゃいけないんだからね!本当なら小学生の時だって……くぅ!

 スイミングスクールの女コーチの緩みきった顔が目に浮かんでくるわ!!

 どうして!!どうして私はあの時公君を止めなかったの!
 
 ああ公君の二の腕が!ふくらはぎが!!全部あの女コーチにいいぃ!!!」



「…………………」



誰か助けて……この人を止めてください。



「とにかく!公君は私と一緒にバスケ部に入るの。さあ早く行きましょ」

「いやだ~俺は水泳部に入るんだ~~」


体をくねらせてなんとか逃れようとするが詩織に鷲掴みにされている頭が離れない。

必死に抵抗する僕を見て何を思ったか詩織はうっすらと微笑み


「もう公君ったら……えい(はーと)」






ドス!!






可愛い声と共に放たれる可愛くない地獄突き


「っ……………!!!」


喉を突かれて悲鳴すら上げれないままその場にのた打ち回る僕。

しかし頭はしっかりホールドされているままだ。

そんな僕を見て満足そうに微笑みながら


「さあ、バスケ部に行くわよ公君」

「………………………」


もはや脳に悪魔が寄生しているとしか思えない詩織(Lv∞)

そんな彼女を目の前にしてもまだ水泳部に行きたいだなんで言えるわけも無く

僕(Lv4)は半泣きで首を縦に振ることしかできなかった。









─────────────────────────


愛すべきは幼なじみ?
        6話 

─────────────────────────












あ~る~晴れた~ひ~る~下がり~


「~~~~♪」


い~ち~ば~へ続~く道~


「~~~~…………」


ドナドナドナドナドナドナドナドドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナ………




きゅう




「あががが!!」

「もう、公君そんな顔しちゃだめよ」

「は、はひ……」


上機嫌な詩織の気分を害してしまったのか掴まれている頭をさらに強く握られてしまった。

ちくしょう。僕は心の中で歌う事すら許されないのか。


「え~っとあっちに行けば体育館よね」

「……そうですね」


非常にまずい。

このままでは中学に続いて高校でもバスケ部に入るはめになってしまう。

しかし、いかんせん頭をがっちりと掴まれ逃げようとすると頭が潰されかねない現状。

この絶望的な状況で笑顔を浮かべれる程太い心を持っていない僕は

何かに憑かれているんじゃないかというぐらい暗い顔をしている。

周りの生徒達はそんな僕を見てはいけない物を見てしまったという表情で見ている。

くそ、笑えよこんな僕をあざけるように笑えよ!!


しかしそんな数ある視線の中に一つだけ普通の視線があった。

………ん?

僕はその人と目線が合った。

ショートカットで何故か髪の色が水色の女の子。顔は……かなり可愛い。

詩織にだって負けてないかも。

まだ少し幼い顔立ちをしているし同年なのかな?

彼氏は………いるだろうな、きっと。


引きずられながらも意外と余裕があるのかいろいろ頭の中で考えている僕を尻目に彼女はどんどん近づいてくる。

どんどんどんどん近づく。目を僕から逸らしていない。

なんだなんだ?

そのまま彼女は50センチぐらいまで近づいてきた。

気がつけば彼女は自信満々といった笑みをしておりそして大きな声でこういった。




「あなたには根性があるわ!あなたのその根性さえあれば国立だって狙えるわ!!

 さあ!いますぐサッカー部に入りましょう!さあ!さあ!!!」








「え?」

「……………」


第一印象を大幅に修正する必要あり、彼女はどこか詩織に似た匂いがする。僕にはわかる。

声に気づき振り返る詩織。

しかし水色の髪の女の子は詩織には目も向けず僕に話しかけてくる。


「主人公君。あなたなら絶対国立のスターになれるわ!私と一緒に国立を目指しましょう!」

「声がでかいですよ。ってなんで僕の名前を?」

「…………………」


無視された格好の詩織。


「ああごめんなさい。私はサッカー部のマネージャーをやってる虹野沙希っていうの。あなたと同じ一年生よ」

「あ、やっぱり同学年だったんだ。」

「え?」

「いや、こっちの話。それでなんで僕の名前を?」

「そりゃあ、昨日あれだけ目立ってたら誰だってわかるわよ」

「昨日って………ああ」


昨日の逃走劇を目撃されていたようだ。


「あの時の走りは見させてもらったわ。あの走りは正に根性よ!」

「根性って……」

「あの走りはサッカーでは大きな武器になるわ。それで……」

「え~っと勧誘しにきたってことですか?」

「そうなの。お願い主人君。サッカー部に入ってくれない?」


そう言って手を合わせておねだりポーズをする。非常に可愛い。


「…………ピキ……」


無視され続けている詩織の額に怒りマークが……

そして僕と虹野さんの間に入り込み


「ちょっとあなた!何勝手な事言ってるのよ!公君は私とバスケ部に……」

「ねえお願い!主人君がいれば今年は全国狙えそうなの!」




<|%L|>詩織を手で押しのける虹野さん<>





「…………プチ」


あ、切れた








無言で虹野さんに向けて拳を振るう詩織。


ってやべええええ!!虹野さん死んじゃうう!!


が、しかし虹野さんはなんとその拳をバックステップであっさりとかわす。


「な……私の攻撃をかわすなんて………」

「さっきからなんなんですかあなたは?私と主人君の邪魔ばっかりして」

「……私と主人君ですって?………プチプチプチ」


あ、三本は逝ったなあれは。

唖然とする詩織を氷の目といった感じの視線で睨む虹野さん。

というかなんだ?あれは誰だ?

詩織が二人いるようにしか見えないんだけど

どうやら彼女も相当病んでいるようだ。もちろん現代医学では治療は不可能だ。


「公君に近づいた事を一生後悔するといいわ!!」


そういって再び虹野さんに襲い掛かる詩織。

右拳がものすごい音を立てて虹野さんに襲い掛かる。

しかしまたあっさりとかわす虹野さん。……が!


「………え?な、なんで……?」


完璧にかわしたはずの虹野さんの頬からうっすらと血が出ていた。

傷は浅そうだが鋭利な刃物で切ったような見事な切り口に虹野さんは驚きを隠せない。

そんな虹野さんを見て詩織は得意そうな顔をして


「はん、私の拳はかわせるみたいだけどその衝撃波まではかわせないようね!」

「衝撃波って……かまいたちかよ!!」


詩織の拳はかまいたちが起こせるそうです。

っていうかあれだ。なんでこんなにバイオレンスなんだ彼女達は?


「さあ逝きなさい!えい!えい!!えい!!!」

「く………くぅ!!」


畳み掛けるように連続で殴りかかる詩織。

かけ声が何故か可愛らしい。

次々と襲いかかる攻撃をかわしていく虹野さんだがやはり衝撃はまでは

防ぎきれないらしく体に切り傷が増えていく。


「………はっ!」


わずかな隙を突き反撃をする虹野さん。

がそれをあっさりとかわす詩織。

詩織が攻撃をかわすのを見ると素早く後退して詩織との距離をとり体制を整える虹野さん。







ヒュウウウウ~~







一陣の風が流れ、にらみ合う両雄の頬を撫でる


ここだけ世界が違います




「ほ~~ほっほっほ!どうやら手も足も出ないようね虹野さん!」


下品に笑う詩織。僕の幼なじみは死にました(現実逃避


「……………………」


冷たい表情をしたまま詩織を睨み続ける虹野さん。

焼き尽くすような熱い目で虹野さんを睨む詩織。

対極に位置する二人。どうやら元々相性は最悪だったのかもしれない。


「どうやら、私だけでは貴女には勝てないようね……」

「ふふ、負けを認めたようね。ならばさっさと逝きなさい!」

「いいえ………逝くのはあなたよ」




パチン

彼女は手を上に掲げて指を鳴らした。







どどどどどどどど






彼女の後ろから数十人はいるだろう人間が埃を巻き上げながらやってきた。

見ると全員半そで半ズボン……ってサッカーのユニフォームかよ!!

ってことはあいつらサッカー部……


「虹野マネージャー!!サッカー部全員集合しました!」

「ふふ、ありがとうキャプテン」

「な、な、な………」


集団から一歩前に出たリーダー格らしき人が虹野さんに敬礼をして挨拶する。

もちろん後ろの集団も同時に敬礼。

流石の詩織も呆然としている。


「ちょっとこの人がね、私の邪魔をしているのよ。だから……ね、お願い」

「は!了解しました。いくぞお前達!!」


「「「「うぃいいいいいす!!!」」」」


そのまま詩織に向かって全員特攻し始める。


「ちょ、ちょっと……ってきゃあああ!!」


一瞬にして詩織が人の波に飲まれる。



「「「「わっしょい!!わっしょい!!」」」」



全員で詩織を胴上げしてそのまま歩き始める。


「きゃあ!ちょ、ちょっとやめなさいよ!スカートが捲れちゃう!」


「「「「わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!」」」」


「ああ~ん。公君助けて~~~~!」


僕に助けを呼びながらどんどんフェードアウトしていく詩織。

いや、自分でなんとかできるだろう。

そんな突っ込みが思い浮かんでは消えていく。

何故か詩織は暴力を振るわずに結局そのまま消えていった。

グッバイ詩織……できれば永遠に。


「ふう……やっと邪魔者がいなくなったわ。……さぁてと」


くるっと回って僕の方を見る虹野さん。



「さあ、主人君!サッカー部に入ってくれるわよね!」

「いやに決まってるでしょうが」


言ってすぐに反対方向へ走り出す。

もうこの手の人は話をしても無駄だ(詩織で経験済み)。とにかく逃げるべし。


「ちょ、ちょっと主人君!!」

「ごめんね、僕は水泳部に入る気なんでサッカー部には入れないんだ」

「水泳部……………」


虹野さんは追ってこようとせず、その場で呆けたように僕の方を見続けていた。

なんでだろ?てっきり追いかけてくる物だと思ってたけど。

まあ、それならそれでいいや。とにかく、今のうちに水泳部に行こうっと。

何か納得いかないが、とりあえず僕はプールを目指して歩き始めた。



















おまけ




「水泳部………水泳部………水泳部………」


呆然としながら水泳部と言い続ける沙希。

しかし言い続けるうちにどんどんとその表情が冷たくなっていく。


「そう、水泳部があるから主人君はサッカー部にこないのね……それだったら……ふふ」


獰猛な笑みを浮かべ何かを決意する沙希。

その顔は詩織の裏の顔にもまったく引けをとらない。


「あの根性は………私の物よ!!」


要するに怖いのである。




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大きいのが好きです プロローグ(スクールランブル)


プロローグ.



テレビの前で寝そべりながらまったりしている彼は播磨拳児。
既に夕食を終えて後は寝るまでゴロゴロとしているだけだ。


「ふぅ………拳児君、君も風呂に入ったらどうだ?」

「ああ、そうだな……ぶっ!」


後ろから同居人の刑部絃子が声をかけてきたので振り向きながら答えたが
何故か彼女はバスタオル一枚で出てきたので思わず噴出してしまった。


「おい絃子!てめえなんて格好してんだよっ!」

「おや、拳児君。この格好に何か問題でもあるのかい?」

「服ぐらい着ろよ!………目のやり場に困るだろうが」


そういってそのままテレビの方に体の向きを戻す。既に彼の顔は赤く染まっている。
流石に高校生で女性経験の無い彼にはスタイル抜群の彼女の体は刺激が強すぎたのだろう。
そんな彼を「素直で可愛い子だ」と大人の余裕で見ていた絃子だが
ふと、悪巧みをしているなと一目見て分かるぐらいの嫌な笑みを浮かべた表情になる。
そろりそろりと彼に近づいていく。そして寝そべってる彼に合わせて思い切り体をかがめて


「ふ、拳児君には少々刺激が強かったようだね。だが照れる事はない、好きなだけ見てもいいのだよ?」


耳元で甘く囁く。


「な!なに言ってんだ………よ………」


勢いよく振り返ったはいいが振り返ったら何故か視界は肌色で一杯になった。
正確には胸。胸の谷間で目の前が一杯になっているのだ。
その大きさに目を奪われて喋る事も出来なくなる。


「あ……あう、あう……」


ただでさえ赤くなっていた顔が更に赤く染まっていく。
体温もぐんぐん上昇している。ついでに下半身の一部も上昇している。


「なんだったら触ってもいいのだよ?」


タオルを少し開いて更に胸を見せながら言ってくる。


「………!!」


ここで彼の脳はショートしてしまう。
刺激に耐え切れず気を失ってしまったのである。
ちなみに彼は思いっきり前傾姿勢で胸を見ていたため、気を失った際に前のめりに倒れて彼女の胸に顔を埋めている。


「………ぷっ、くくく……」


そんな彼を怒りもせず楽しそうに笑う絃子。
どうやら彼には自分の肌を見られても、触れられても全く恥ずかしくは無いらしく
それどころかこういった素直なリアクションをする彼が可愛くて仕方ないようだ。
少しの間、彼女は自分の胸には顔を突っ込んでいる彼の頭を撫で続けていた。



「………さてと、そろそろ寝ようか。拳児君は………少々一人寝は寂しいのでな。今日は一緒に休ませて貰うよ」


そう言って彼を自分のベットに引っ張っていく。どことなく嬉しそうな顔をしているが確認する人間はどこにもいない。
こうして播磨、刑部家の一日は終わっていくのである。



ちなみに次の日、彼が目を覚ますとまたしても彼女の胸に顔を埋めていたため再び気を失う事になる。












これは彼、播磨拳児が刑部家に居候するようになってから日常的に行われている一幕である。



毎日の様に刑部絃子の大きな胸を見続けている内に彼は自分でも気づかない内に「大きいの」が大好きになってしまったのだ。



今はまだ心の奥に眠っているその気持ち。



しかしそれが表に出てきた時、彼の塚本天満一色で染まっていた恋愛模様は一気に変化してしまったのである。

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大きいのが好きです 第1話(スクールランブル)


おかしい。

最近の俺は何かがおかしい。それは間違いない。



学校へ向かうためにバイクを走らせている播磨はそんな事を考えていた。
高校生の彼が通学のためにバイクを使うのは明らかにおかしいのだが
それを咎める勇気のある者など周りにはいない。
この所、様々な奇行(一番最近では体育祭のハゲ頭晒し)を周りに見られていて
一般生徒の播磨に対する恐怖心が以前よりかなり薄くなっているのだが
それでもやっぱりまだ怖いらしい。


(・・・俺は天満ちゃんが好きだ!そう大好きなんだ!)


心の中でも強く塚本天満への思いを言葉にする。
だが以前とは違い、何故か自分に言い聞かせるような口調になっていた。


(・・・なのに・・なのになんでだよ・・・)


自分でも原因がわからないこの気持ち。
今まで信じていた事が根底から覆されてるようでけっして認めたくないようだ。


「あ、播磨君おはよ~」

「うおっ!・・ああ塚本か、おはよう」


信号待ちをしていた彼にいきなり横から話しかけてくる少し小柄な女の子。
名前は塚本天満。彼女こそが彼の心の中を埋め尽くしている思い人


「・・・・・・・・」

「ん?どうしたの播磨君?」

「・・・いや、なんでもねえ」


これまでも、そしてこれからも彼女の事だけを思い続ける。播磨は自分でそう誓っていた。
なのに・・・



「あ、青になった。それじゃ播磨君お先に~」


そう言い残し走り去っていく彼女。
一人取り残された播磨は青信号になっているのにバイクを動かそうともせず呆然としている。


(・・・やっぱりだ・・・なんでなんだよ・・・)


「なんでなんだよーーーー!!!!」


辺りも気にせず思いっきり叫ぶ播磨。
そして言い終わると同時にアクセルを一気に捻りその場を走り去ってしまった。


(なんで俺は・・・・)






───────天満ちゃんと会ってもなんとも思わなくなってるんだよ!!









大きいのが好きです 
         第1話 彼はこうして自覚する。









ガラガラガラ

自分の声とチョークを書く時の音しかない静かな教室。
しかし突然ドアが開きその雰囲気は崩れる。
授業をしていた刑部絃子は邪魔されたため、やや気分を悪くしながらドアの方を見る。


「・・・播磨君。随分と遅い出席だね。何か言う事はないのかね?」

「・・・遅れてすみません」

「・・・・・・まあ、いいだろう。席に座りたまえ」


相手が自分の同居人である播磨拳児であったため何か一言きつく言っておこうと思った絃子だったが
彼の表情を見るとそんな気も失せてしまった。
明らかに落ち込んでいる。
これだけ酷い彼の表情を見たのは何時以来だろうか?
何があったのか?自分に出来る事は無いのか?私では慰める事ができないのか?
過去、何度と無く彼は突然家出をしたことがある。
その度に自分は不安で毎日眠れなくなり
自分が彼の傷ついた心に気づくことなく癒す事ができなかった事を後悔していた。
もうあんな思いはしたくない。彼女の頭はそんな気持ちで一杯になっていた。
もし、今が授業中で無かったら彼女は彼を慰めるためにありとあらゆる手を尽くしただろう。


「・・・・・・」


無言でうなだれたまま自分の席へと向かう播磨。
周りの生徒もどうしたんだ?という感じで彼を見る。


(ねえ美琴、なんであいつあんなにうなだれてるんだろ?)

(あぁ?そんなのあたしが知ってるわけないだろ)

(それもそうよね・・・晶何か知らない?)

(さあ・・・気になるの愛理?)

(べ、別にあんなヒゲの事なんか気にならないわよ!)

(どうしたんだろ~播磨君)


小声で話をする仲良し四人。
だが播磨そんな事はまったく気にせず席に座ると同時に机と腕で顔を隠し周りをシャットアウトする。
流石にそんな彼を見た絃子は眉をひそめるが気にせず授業を続ける事にした。





キーンコーンカーンコーン





授業の終わりを告げるチャイムがなる。
播磨はチャイムが鳴ると同時にのっそりと立ち上がり、教室の外へ出る。


「け、拳児君。ちょっと話があるんだが・・・
ちょ、ちょっと待ちたまえどこへ行く?私を無視するんじゃない!」


わざわざ近づいてきて小声で話しかけてきた絃子を無視して。







「ちわ~すお姉さん・・・っていないのか」


播磨が向かった先は保健室だった。どうやらとことん寝る気らしい。
普段はお姉さん事、姉ヶ崎妙の美貌に目がくらんだ男達でごった返す保健室だが
何故か今日に限っては無人だった(ちなみに人がいたら無理やり追い出す気だった)


「まあ、いいか。お姉さんなら大丈夫だろ。」


一人で納得してそのままベットに向かう。
ベットに寝転がりそのまま寝に入る。


(俺は・・・もう天満ちゃんが好きじゃないのかな
・・・いや・・好きになる資格が無かったってことなのかな・・・)


もはやよくわからない考えになっている播磨。相当追い込まれているようだ。
しばらくすると彼は完全に寝に入ったが、そのサングラスの下からは薄っすらと涙が流れていた。









「・・・・ん・・・んん・・・」

「あ、ハリオ起きた?」

「・・・お姉さん?・・・ってなんで一緒に寝てるんすか!?」


数時間程して、彼が目を覚ますと何故か横にはお姉さんが一緒になって寝転んでいた。
播磨は慌ててベットから離れようとしたが妙が体を絡めていたため動けなかった。


「ちょ、お姉さん離して!」

「あ~んちょっとぐらい良いじゃない。・・・それよりハリオ、何かあったの?」


播磨の抵抗が止まる。妙から見て何かあったのがすぐにわかった。


「・・・別になんもないっすよ」

「・・・ハリオ泣いてたわよ」



保健室のお姉さんこと、姉ヶ崎妙は保健室に戻ってきた時にまずベットのふくらみに気が付いた。
最初は誰だ~?と思ったが直感ですぐにハリオだとわかり彼女は嬉々としてベットに近づいた。
が、彼の顔を見て彼女はかなりびっくりしてしまった。
彼は寝ながら泣いていたのだ。
苦痛に満ちた表情をしながらサングラスを着けていてもわかるぐらいに涙を流している。
一体彼に何があったのか?
これだけ辛そうな顔を見るのは初めてあった時以来か。
そんな彼を妙が捨てておく事など出来るわけも無く、
妙は彼を優しく包み込むように抱きしめ一緒に寝ることにしたのだ。


「なっ!・・そんなことないっすよ!」

「ハリオ・・・何も言わなくてもいいのよ」


妙はうろたえる彼の頭をそっと胸元に引き寄せる。
驚き、離してくれと言う彼に対して優しく囁く。


「ハリオが言いたくないんだったら私は何も聞かないわよ~
・・・でもね、辛いことがあったら少しぐらい私を頼ってくれたら
 嬉しいな。こうやって慰める事ぐらいならできるし
・・・ハリオのして欲しい事だったらなんでもしてあげるよ、私」


妙の心からの優しさが播磨の心に染み入っていく。
かつて激しく落ち込み絶望していたあの時、同じように手を差し伸べてくれた妙。
彼女の優しさに救われ立ち直ることができた。そして今回も・・・
気が付けば涙が止まらなくなっていた。
もう我慢する事ができない。我慢しなくてもいい、彼女がいる。


「・・・俺は・・・俺は天満ちゃんが好きだったんだ・・・」

「うん・・・そうだね・・・」

「なのに俺は・・・もう彼女の事を好きになることができないんだ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・うう・・・・ごめん天満ちゃん・・・」


溜め込んでいた思いを吐き出す。
彼は塚本天満が好きだった。そんな事はとっくに知っていた。
だが気づいたときには彼女に対する思いが消えてしまっていたのだ。

ショックだった。

ある意味振られることより傷ついたのかもしれない。
自分の思いはその程度の物だったのか。
愛すべき人だったはずなのにもう愛せない。それがショックだったのだろう。
妙はそれ以上何も言わず、ただ泣き続ける彼を優しく抱きしめることにした。













どれぐらい時間が経っただろうか。
妙の胸元でひたすら泣いて泣きまくっていた播磨がようやく少しずつ落ち着いてきたのだ。
妙はそんな彼を変わらない慈愛の表情で見続けている。
更に少し時間が経過した時、彼が慌てた様子で言う。


「お、お姉さん、もういいっすよ。」


よく見ると彼の顔は真っ赤に染まっている。
今頃になってこの体勢が恥ずかしくなったのだろう。
そんな彼を見て妙は


「あら~ハリオ照れてるの?もうちょっとぐらい良いでしょ?」


彼をぎゅっと抱きしめる。
もう彼の顔は完全に自分の胸に埋もれていて表情が分からない。


「むう~~~むう~~~ん~!!」


声にならない声を出して抵抗する播磨。


「あ~ん可愛いハリオ(はーと)」


ますます強く抱きしめる妙。
まずい、非常にまずい。何とかして脱出せねば。
なんて事を考える播磨だがここで自分の気持ちの異変に気づく。




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




(あ、あれ・・・なんだこの気持ち)


恥ずかしさとは違うこの胸の高鳴り。
この気持ちはいったいなんだ?
・・・いや、彼はこの気持ちの正体を知っている。
それは、最近まで彼女、塚本天満にのみ出ていた胸の高鳴り。


(な、なんでお姉さんに・・・)


それはまだ自覚していない気持ち。だがすぐに彼は気づいてしまう。


(も、もしかして俺・・お姉さんの事が?)


「・・・ハリオ~どうしたの~」

「・・・はっ!・・・・俺は、俺はなんて奴なんだーーー!!!」

「あ、ハリオ!」


動かなくなった彼を心配して話しかけた妙だが
彼は急に叫びだし妙を振りほどきそのまま保健室を飛び出してしまった。
突然の彼の行動に少々呆然としていた妙だったが


「・・・よかった。元気になったんだハリオ」


彼が元気になったことを素直に喜んでいるようだ。


キーンコーンカーンコーン


「あ、もう放課後だ。さ~てお家に帰ろっと」


姉ヶ崎妙、あまり仕事熱心ではないようだ。









(俺って奴は!!天満ちゃんの事が好きじゃないと思ったら本当はお姉さんの事が好きだったのか!?)

走りながらも彼の思考は止まらない。


(俺はなんて節操が無いんだーーー!!)



「けどさぁ、結局ヒゲって何があったのかしら?」

「確かになぁ。あれから教室にも戻ってこなかったし」

「う~ん八雲と喧嘩でもしちゃったのかなぁ?」

「・・・それは無いと思うけど」


授業は既に終わっており、帰ろうとしている2-Cで人気を4分割していると言っても良い四人組み(割合は公平ではない)

仲良く喋りながら廊下を歩いている。


「なんか落ち込んでたみたいだったしなあ。また学校来なくなっちまうかもな」

「えぇ~八雲がいるんだからそれは無いよ~美コちゃん」

「・・・寂しくなるね、愛理」

「な、なんで私が寂しくなるのよ!」


ドドドドドド


話をしている彼女達の後ろから何やら足音が聞こえてくる。


「ん、なんだ?ってありゃ播磨じゃねえか」

「本当だ~なんであんなに走ってるんだろ?」

「どうせヒゲの事だからくだらない理由じゃないの!?」

「・・・こっちに向かって来てるね」

「・・・本当だね。って播磨君私達に気づいてないの?」

「と、止まりそうにないわね。離れた方が良さそうよ」


彼女達は素早く横に逃げようとする。が、


「・・・ってうわっ!」


あせった美琴が廊下に足を取られてしまい、体制を崩してしまう。


「あ、美コちゃん、危ない!」


慌てて体勢を立て直すが既に播磨は目の前まで走ってきていた。
播磨はそのまま勢い良く美琴ぶつかってしまい、播磨は美琴を押し倒すようにして倒れこんでしまった。






(・・・つぅ~俺とした事が目の前の障害物にすら気が付かないとは。
・・・しかしこの顔を覆う柔らかい物は一体なんだ?)


「ちょ、播磨!いつまで乗っかってるんだよ!)


(・・周防か?・・・って事は・・・これは・・・む、胸!?)


自覚した時にはもう、顔は真っ赤になっていた。
素早く顔を上げる播磨。目の前には頬を少し赤くした周防がいる。
やや視線を下げると、そこには見事な胸が。そういえば誰かが教室でD~D~って言ってたような気が・・・


(・・・ってあれ、この感じは・・・)




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




(お、おいおい、どういうことだ?俺って周防の事も・・・ええ!?)


「・・おい、播磨、早くおり・・・ろ・・・」


何時までも自分に乗っている播磨に早く降りるように言おうとした美琴だったがそこで気が付く。
播磨が顔を真っ赤にして自分の顔を見ている事に。


(ってなんで播磨の奴、顔が真っ赤なんだよ)


その時ふと、天満が前に言っていた事が思い出された。


(・・・確か私に告白する練習してたって・・・え、えぇ!!)


ここで美琴の顔も一気に赤くなってしまう。
彼の事をどう思っているのかと、聞かれれば「そこそこ付き合いのあるクラスメイト」
ぐらいにしか思っていない美琴ではあったが元々嫌いでは無かったのだ。
いや、むしろ男気のある性格に好感を持っていたぐらいだ。
そんな彼が今、目の前で自分の事を顔を真っ赤にしてみている。
いくらなんでも意識するなという方が無理である。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


お互いに顔を真っ赤にして見詰め合っている。
辺りが緊迫感に包まれて喋る事すら許されない空気になる。


(お、俺は周防の事が・・・・す、好きだったのか・・・?)

(こ、告白か?・・・もしかしてこのまま告白する気なのか?・・そんな事言われたらあたしはどうしたら・・・)

(・・・・なんか・・すっごく・・・むかつくわね!)


この状況を非常に腹立たしく見ていた女の子がいた。
もちろん、その彼女とは沢近愛理。
なぜ、こんな状況になったんだろうか。
いきなりヒゲが走ってきて美琴とぶつかったと思ったらなんか顔赤くして見詰め合ってるし。
私は私で口も挟めずこんなにイライラしてるし。ああ~もうわかんない!
なんでヒゲの事で私がこんなにムカつかなきゃいけないのよ。
大体美琴も美琴よ!なんでヒゲなんかと顔赤くして見詰め合ってるのよ!
ああ~もう晶もビデオ回してる暇があったら止めなさいよ!
天満も何、顔赤くして固まってんのよ!
あああもうこれも全部ヒゲのせいよ!そうよヒゲが悪いのよ!!



タッタッタッタッタ



「・・・え?」

「な~に何時までも美琴を押し倒してんの、よ!!」


ガスッ!!という鈍い音と共に丁度良い高さにあった播磨の頭に愛理が渾身のシャイニングウィザードを放つ。
油断していたため直撃を食らった播磨は不細工に吹っ飛び廊下の壁に叩きつけられた。


「ぐはっ・・・お、お嬢てめえなにしやが・・・・」


最後まで言い切ることができず力尽きる播磨。


「ふぅ、美琴大丈夫だった?」

「・・・え、・・・ああ大丈夫だよ・・」


やや放心していた美琴だったが沢近が呼びかけたので我に返った。


「まったくこのヒゲは!美琴にまで手を出そうとするなんて本当最低!」

「い、いや・・別に私は・・・」

「嫉妬かい、愛理?」


ポツリという晶。


「な、なんで私が!嫉妬しなきゃいけないのよ!・・・って何時までビデオ回してるのよ!」

「記念にいいと思ってね」

「なんの記念よ!なんの!」

「播磨君・・・八雲がいるのに・・・」


そのまま騒ぎながら廊下を後にしていく4人。もちろん播磨は放置されたままだ。



(やばかった・・・あのまま告白されてたら多分あたしは・・・)










「・・・・・・・・・・」


播磨は家でテレビを見ていた。
沢近にKOされてからしばらくしてようやく目覚めた頃には既に空がオレンジになっていた。
しょんぼりしながら家に帰り今に至る。
テレビには有名お笑いタレント達によるバラエティー番組が流れていたが播磨の頭にはほとんど入ってなかった。


(・・・俺って奴は・・・)


今日の出来事についてずっと考えていた。


姉ヶ崎妙、周防美琴。


二人に対して播磨は本気でときめいてしまったのだ。


(お姉さん、周防・・・俺は二人同時に好きになってしまったのか?)


ゴロン、とその場に寝転がる。


(どういうこった?俺はそんな器用な人間じゃねえはずなんだけど・・・わからん)


だがあの胸の高鳴りを否定する事はできない。
否定してしまったらそれまで抱いていた天満ちゃんへの思いすら嘘だった事になるからだ。


(・・・・・・・・)


二人の事を思い出し顔が真っ赤になる。
自分を優しく胸元に抱き寄せてくれた妙。
自分の不注意で胸に顔を突っ込んでしまった周防。


(・・・・ん?)


ここで播磨は思った。
なんかおかしいな。お姉さんに惚れるのは・・・まあ分かる。
しかし周防に惚れるのは・・・一体どういうことだ?
これまで接点がさほど無かったのにあの時には胸の高鳴りがやまなかった。
なぜだ・・・なぜ俺はこの二人に惚れたんだ(もう惚れた事は認めている)


(なにか・・・なにかあるはずだ。あの二人に惚れる原因となった決定的な何かが・・・)



彼が物思いにふけっているその時。刑部絃子が静かに帰ってきた。
彼女は帰ってくるなり播磨に対して悪態を放つ。


「拳児君・・・よくも学校では私の事を無視してくれたね」

「い、絃子!帰ってたのか!」

「さんをつけろといつも言ってるだろうがっ」


言うやいなやどこから取り出したのかわからないが手に持っていた拳銃(エアガン)で播磨を撃ち始めた。


「あいたたっ!こら!辞めろ絃子!」

「ふっふっふ・・・君には少しきつくお灸をすえる必要があるようだな」


授業中に心配していたことなどお構いなし。
とにかくストレスを発散させるとばかりに撃ち続ける。


「や、やめろっていってるだろうがっ!」

「辞める?こんなに面白い事をどうして辞めなければいけないのかね?」

「だあああぁ!!」


それからしばらく銃声が鳴り止む事は無かった。








「・・・・・・・・」

「まったく、この程度でへばるとは情けない」

プスプスと煙を上げて倒れている播磨に対して情け容赦ない一言を放つ絃子
本当の所を言うと絃子はあまり怒っていなかった。
それどころか家に帰ってきたときに播磨がいた事に対する安心感で一杯だった。
以前も突然家出をした播磨だ。今回の不安も当然のものだろう。
そんな彼が家にいて嬉しくはなったがそれを素直に表に出すのも恥ずかしいらしく思わず撃ってしまったのだ。


(・・・少々やりすぎたかな?)


随分と天邪鬼な反応をしてしまったものだ。本当は嬉しかったのに。
哀れな彼の姿を見てしまい少しは素直になろうか、と思う。
倒れている彼に近づいていき目の前で座り込む。
そして彼の頭をそっと持ち上げ自分の太ももに乗せた。


「すまないな、拳児君。こんなにボロボロにしてしまって」

「え・・・い、絃子?」


突然の事にとまどう播磨。


「それなりに私も心配していたんだが・・・どうやら大丈夫なようだね」

「心配・・・ああ、学校の時か・・・・・・まあなんとか、な」

「そうか・・・それならいい」


そういって優しい笑みを浮かべる絃子。


(絃子の奴・・・こんな表情もできるのか・・・ってあれ?)


意識して彼女の顔を見た時に彼女の顔の下半分がまともに見れない事に気づいた。
「何か」が播磨と絃子の顔の間にありよく見えないのだ。その「何か」とは・・・


(い、絃子の奴・・・こ、こんなに胸がでかかったのか!)


もちろん胸である。
彼女の太ももに頭を乗せている彼が彼女の顔を見ようとすると必然的にほぼ真下から見上げることになる。
これまでに見た事の無いアングルで胸を見たせいでその大きさが一層分かってしまったようだ。


(うう・・・これは・・・)


当然のように顔が赤くなってしまう。
突然顔を赤くした播磨に絃子が気づかないわけも無く


「ん、どうしたんだい拳児君?」

「あ、いやっ!別に何でも」


慌てる彼の視線を追っていくと、どうやら自分の胸を見ているようだ。
別に彼に見られても恥ずかしいという気持ちは無い。が、タダ見されるのはねえ・・・等と考える。


「おや、拳児君・・・一体どこを見ているのかね?」

「はうぁ!べ、別にどこも見てねえよ」

「ほう・・・さっきから私の胸ばかり見ているようだがそれでもどこも見てないというのかね?」

「バ、バレテマシタカイトコサン」

「くっくっく・・・相変わらず素直な子だな、君は・・・」


そういうと彼女は播磨の頭にどんどん胸を近づけていった。


「ってちょ、絃子何を!」

「ふふふ、いつも言っているだろう拳児君。好きなだけ見ても良いと。それになんだったら触ってもいいって」

「・・・あう・・あう・・・」


声にならない声をあげる彼を見て満足そうに微笑む絃子。


(い、絃子の奴何考えてんだよ!・・・って、おいおい・・・マジかよ・・・)




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




なんと絃子へのフラグも立ってしまったようだ。
播磨は自分の胸の高鳴りを完全に自覚していた。


(俺って奴は・・・絃子まで好きになっちまったのかよ・・・)


泣きたくなった。俺はこんなに節操無しだったのか。
ああ~そういや天満ちゃんがおさるさんって言ってたな~~
しかしそれはそれで目の前には絃子の胸が。
・・・どんどん脈拍が速くなっているのがわかる。


姉ヶ崎妙


周防美琴


刑部絃子












(はうあ!!!!ま、まさかそういう事なのか!!!)



すべてが一本の糸で繋がった。そんな錯覚さえ起きた。
この仮説が正しいのだとしたら俺は・・・
いや、まだだ。まだ確信には至ってはいない。
そうだ。まだ可能性は残っている。
播磨は最後の可能性に賭けて行動に移す事にした。




ムニュ




「え、・・け、拳児君?」

「・・・・・・(驚愕の表情)」



ムニュムニュムニュムニュ・・・


猛烈に絃子の胸をもみ続ける播磨。その顔にはショックがアリアリと浮かんでいる。
まさか本当に触ってくる(というか揉んでいる)
とは思ってなかった絃子も一瞬固まった後パニックになる。


「ちょ、ちょっと拳児君・・ウン・・や、辞めないか・・ン・・・」


ムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュ・・・・


絃子の抵抗も空しく播磨は揉み続ける。
気が付けば播磨が絃子の上に乗りかかり胸を揉み続けていた。


「・・ん・・・あ・・・け、拳児君・・・」


絃子はもう、抵抗らしい抵抗もせず潤んだ瞳で播磨を見ていた。
それでも、しつこく揉み続ける播磨。


「はあ・・・はあ・・・拳児君・・・私は・・・君の事が・・・・」



「うおおおおおおお俺って奴はーーーーー!!!!!!!」



ズドドドドドドド



突然頭を両手で抱え叫んだかと思えばそのまま外へと飛び出してしまった。


「・・・拳児君・・・?」


うっとりした表情をしている絃子をそのままにして。









「うおおおおおおおおお!!!!」


播磨は泣いていた。自分の新たな一面に気づいたからだ。


「うおおおおおおおおお!!!!」


播磨は叫んでいた。自分の新たな一面を認めたくないからだ。




「俺は!!」


「俺は!!!!」




「大きな胸が好きだったのかーーーーー!!!」





巨乳好き。彼は自分の趣味にとうとう気が付いてしまった。



「ちくしょう~~~!!!天満ちゃんすまねええ!!!君じゃ無理だったんだ!!」


彼は気づいた。その事がこれからの彼の恋愛にどういった影響を及ぼすのだろうか。
いや・・・既に影響しまくりだった。
しかし、誰を選ぶかは彼次第。結局の所は・・・



「ああああああぁ!!!!!」



本当の彼の物語が始まっただけなのかもしれない。

    
      続く










おまけ.

しばらくしてから彼が家に帰ると、そこには般若がいました。
彼は泣きながら許しを乞いましたが般若は決して許してはくれませんでした。
先程とは比べ物にならない位の弾丸が部屋中を飛び交い、悲鳴が止みませんでした。
しばらくして般若はボロキレの様になっている彼を自分のベットに引きずって行きました。










どうも、真空ワカメです。
書いてて恥ずかしくなりました。

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

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