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来訪者 横島忠夫 目次

横島が鬼畜王ランスの世界に行きました


第1話
第2話
第3話
第4話
第5話
第5,5話
第6話
第7話


このSSはGS美神SSの大御所サイト
Nighttalker様の投稿掲示板に投稿していました。

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来訪者 横島忠夫 第1話


ここは神界のとある場所。
この場所で神族、魔族の両トップであるキーやんとサっちゃんがある事柄について話し合っていた。



「それで、面白そうな人間を一人貸してくれって言われたんかキーやん」

「はい、それで彼をと思いましてね」

「断る事はできへんかったんか?」

「それも考えはしたんですが、なんせ相手は向こうの世界の創造神ですからね。
 私達二人で相手をしても勝算は5割あるかって所ですし…」

「おまけに自分の世界が破壊されても全く気にせえへんしなぁ」

「そういうことです。あまり刺激するのは得策ではないですね。」

「だけどあっちの世界に行って彼は大丈夫なんやろか?」

「う~ん、まあ悪運は強いですしなんとかなるんじゃないでしょうか?」

「随分適当やなぁ。そんなんでよく神族のトップにおれるもんやなあ」

「……その言葉、そのままお返ししますよ」

「けれど、アシュタロスの時と言いうちらは彼に迷惑かけてばっかりやなぁ…」

「そうですね……なんとかお詫びをしないといけないとは思うんですが……」








来訪者、横島忠夫










「そっち行ったわよ!しっかり決めなさいよ横島君」

「ういいす」


とあるビルの屋上。
GSである美神令子はいつものように助手の
横島、おキヌ、シロ、タマモを連れて除霊作業を行っていた。
令子の神通棍の一撃に怯んだ悪霊はその場を逃れるために移動する。
がそこには霊波刀を手に纏った横島が回りこんで待ち構えていた。


「往生せいやああぁ!」


不意を突かれ硬直していた霊を素早く霊波刀で突く。さらにぐりぐりっと傷口をえぐる様に手を動かす。


………!!


悪霊は悲鳴を上げる間も無くその場から消え去ってしまった。


「ふう……」

「よくやったわ横島君」


止めを刺し一息ついた横島に令子が駆け寄ってきた。


「いや~今の霊の防御力が低くて助かりましたよ」

「なに謙遜してんのよ。あいつ、私の一撃でも大して
 ダメージ受けてなかったのにそれを一撃だなんて、随分やるようになったじゃない」

「そ、そうっすか?」


美神の素直な称賛に少し照れながらも喜びを隠し切れない横島。


「そうよ、この私が誉めてるんだからもっと喜びなさいよ。
 …そ、そうね、それじゃあご褒美にい、いっしょに食事でも…」

「え?」


「横島さ~ん!」

「せんせえ~!」

「終わったみたいね」

「あ、みんな」

「……ちっ…」


別の場所に張っていたキヌ、シロ、タマモも戻ってき、
いつもの様にあ~だこ~だ言いながらもみんな仲良く事務所へと帰っていった。







「いや~今日の仕事もぼろかったわ~」


令子は今日の仕事の書類整理をしながら満面の笑みを浮かべて言う。


「あ~そりゃ良かったですね」


ソファーの上でごろごろしている横島が令子の独り言に反応する。


「なによその態度。会社が儲かってるんだからもっと喜びなさいよ」

「ど~せ俺に給料には還元されんでしょうが」


ふてくされた感じに横島が言う。


「そうねえ、この調子で利益が上がるようなら給料アップも考えておいてあげるわよ」

「また適当な事を……どうせならその体で給料アップ分を!!」


言うのが早いか動くのが早いか。
令子に飛び掛る横島。手は何かを握ろうと怪しく動いている。


「こんの馬鹿!!」

「ふげっ!!!」


令子の美しいフォームから繰り出された右フックの直撃を貰った横島は不細工に吹っ飛んでいく。


「ったく、すぐ調子に乗るんだから!とにかく今日はもう仕事は無いからさっさと帰りなさい」

「へ~い…」


血の海に顔を埋めていた横島がかろうじて令子に返事をした。







事務所からの帰り道、横島は先程の傷などなんのこと?と言いたげなほど無傷な体をしていた。


「くそ~もうちょっと美神さんのちちを!尻を!ふとももを~~~!!」


どうやら令子に抱きつく事が失敗した事を死ぬほど後悔しているようだ。


「次こそは!……こうなったら文殊を使って……ん?」


ぶつぶつと独り言を続けていた横島だがふと違和感に気がつく。


「な、なんじゃこりゃあ!!」


目の前には半径2メートル程の”闇”が広がっていた。
突然その空間に現れた”闇”はそのまま一気に横島にせまってくる。


「ちょ、ちょっと待て。な!話し合えばお互い分かりあえるさ!」


”闇”は横島の問いかけには反応せずそのまま横島を飲み込んだ。


「うぎゃあああぁ!!」


一瞬。
気がつけばその場には何も無かった。
横島忠夫はこの世界から消え去ってしまった。














「う、う~ん……っは!」


その場でうずくまっていた横島が目を覚ます。
少しの間固まっていたがやがて正気に返り辺りを見回した。


「な、何があったんだ一体……それにここは…ってげげ!?」


場所は広々とした平原だろうか。
それはいい。さっきまで家に帰る途中だったのに何故こんな所にいるのかわからないのだが
その事に関してはまだいいのだ。問題はそこではない。


「し…死体か?そ、それもこんなに…」


平原には大量の人間がいた。
だがその人間の大勢は血を流して倒れている。いや既に事切れている。
服装を見てみると何やら西洋の鎧らしきものを着ていた。手には槍やら剣も持っている。


「な、なんだこの格好?……ま、まさか!?」


そこで横島は以前にもこのような格好をした連中を見たことがあることを思い出した。
そう、それは令子の能力によって中世のヨーロッパに行ったとき…


「もしかして俺はまたしても過去に来てしまったのかあああ!!」


数少ない情報を元に考えた結果、横島は以前に訪れたことのある過去の世界に来てしまったと判断した。
少し後に彼は気づく事になる。その答えは大外れだという事に。


「なんだあ?まだ生き残りがいやがったのか!」

「え?」


突然、聞こえた男の声に横島は反応し振り返る。
緑を基調とした服の上から銀色の胸当てを着け、更にその上からマントを付けているその男。
横島のイメージにあるファンタジーの世界の戦士そのものであった。
彼は腰につけてある剣を素早く引き抜くとそのまま横島に向けて横なぎに振ろうとした。


「さあお前もさっさと死ね!」

「ひいいぃ堪忍やぁ!堪忍やぁ!」


剣はあっさりとからぶった。
横島は正に一瞬と言える速度で土下座の体勢に移行し男の剣を結果的に回避したのだ。


「………」

「堪忍やあ……」

横島はこれ以上情けないやつはいないのではというぐらい土下座を繰り返していた。
男も振るった剣を鞘に戻し、呆れたように言う。


「お前……もしかして反乱軍のやつらじゃないのか?」

「堪忍やぁ…反乱軍?なんすか、それ?」


男の質問に横島はさらに質問で返す。


「違うのか?だったら一般人か。…いやだったらなんでこんな所に…」


男は横島の言葉に違和感を覚え頭を悩ませる。


「あ、あの~あなた様はいったいどなたなんですか?」


思いっきり低姿勢で質問をする横島。だが聞いた事が悪かったのだろうか。
男は一気に機嫌を悪くする。


「ああん!?俺様の事を知らんだと?貴様は自分の国の王様の名前すら知らんのか!?」

「ひいぃ!すんませんすんません!よくわからんけどとにかくすんません!」

「……ちっ、まあいい。今日の俺様は機嫌が良い。本当なら男なんぞに名乗る名前等無いが
 今日は特別サービスで教えてやろう。ありがたく思えよ?」

「は、はい!」


「俺様はな!超絶美形の英雄にして世界最強の男!!」

そこで一旦言葉を切り両手を腰に添えて胸を思いっきりそらし、そしてはっきりと言う。



「ランス様だ!」




来訪者 横島忠夫 第2話


来訪者、横島忠夫  第2話











「ランス……」


横島は目の前の、ランスと名乗った男を唖然とした様子で見ている。
あまりにもでかい態度に呆れてしまったのだろうか。
ランスはそんな横島の態度に気づき、更に喋りかけてくる。


「ところでお前は何者だ?何故反乱軍でもない奴がこんな所にいやがるんだ?」

「あ、お、俺は横島忠夫って言います。
なんでこんな所にいるんだって言われてもそれは俺の方が聞きたいぐらいでして…」

「ヨコシマ?変な名前だな。…いや、JAPANの人間か?」


ランスは横島と言う名前からJAPANの者であると推測した。


「JAPANって日本のことっすか?だったらそうっす。」


この時点で二人の思っている場所は全く違うのだがお互いにその事は気づかない。
もっとも名前は一緒なので気づけと言う方が無理があるのだが。


「だったらなおさらの事だ!てめえなんでこんな所にいやがるんだ?」

「だからそれは俺の方が……」


さっきと同じやり取りが繰り返されようとしたが
その邪魔をするかのごとくランスの後ろから声が聞こえてきた。


「キング!」

「あ?リックか、どうした?」


ランスはキングという声に反応して後ろを向く。釣られて横島も同じ方向を振り向く。


「うおっ!?」


思わず驚きの声を上げる横島だがそれも無理は無い。
そこには数百はいるかと思われる赤と白を基調とした鎧を身に着けた集団がいた。
どうやらさっきからいたみたいだが横島は死体とランスに気を取られて気づかなかった様だ。
いわゆる騎士団と言うやつなんだろうか?横島は頭の中で一人ごちる。
その中で先頭に立っている長身の男。
他の者より明らかに質の良いと思われる鎧に加え、額に「忠」の文字が刻まれた兜を着けている。
どうやらランスを呼んだのはこの男のようだ。




「はっ!先程バレス将軍から連絡がありまして
 反乱軍の総大将であるエクス将軍を捕らえたとの事です」

「がっはっは!そうか、よしそれじゃあ早速そのエクスって奴の面でも拝みに行くとするか!」

「キング!何卒、エクス将軍には寛大な処置をお願いします。」

「ああ?俺様に逆らった男に寛大な処置だ!?
 ったくハウレーンといい、メルフェイスといい、更にはお前もかよ」

「申し訳ありません。ですがエクス将軍がこのような行動を取ったのは……」


「…………むむっ!」


リックと呼ばれた男とランスが話をしているその時、横島の目が突如輝きを放つ。

我が求める者を見つけたり

横島の霊力がぐんぐん充電されていく。
そしてそのまま己の本能の赴くままにすぐさま行動を起こした。
この時のスピードは小竜姫や韋駄天等が使う超加速にも
勝るとも劣らずと言ってもさほど誇張にはならないであろう。


「…っとそうだ、リック。こいつを城まで連れて行け。」


ランスはそう言うと横島がいた方向に向かって剣を指す。


「こいつとは……どこにいるのですかキング?」

「ああ?だからこいつを……ってあれ?」


横島のいた方を向いてみると何故か横島の姿は無い。
話をしている間に逃げられたか?
ランスは一瞬そんな事を考えたがリックの後ろから聞こえてきた声でそうではないのだと気づく。



「ねえねえか~のじょ!可愛いね、名前なんて~の?僕横島!」

「え、え、……メ、メナド・シセイって言いますけど」

「うわ~名前まで可愛いね。どう、よかったらこれから僕とお茶でもしませんか!?」

「え、そ、そんな可愛いだなんて……」

「………キ、キング。もしかして、彼の事でしょうか?」



リックのすぐ後ろに控えていた女の子に対していきなりナンパをしている横島。
一体、どこでお茶をする気なのかはわからないが一気にまくし立てて喋りかけている。
メナド、と名乗った女の子はそんな横島の可愛い
と言う言葉が聞きなれないのだろうか顔を真っ赤にしている。
ちなみにメナドのいる場所より遥か後ろにいるある男はそれ以上に顔を真っ赤にしていた。
もっとも、その表情から照れが原因では無いのは明らかなのだが。


「……キング?」

「……………ぷちっ……」


いきなり自分が狙っていたメナドをナンパする横島。
そんな横島の言葉に顔を赤くしているメナド。
それだけで十分である。
彼のクモの糸よりも遥かに細いとされている堪忍袋の緒を引きちぎるには。
ランスは腰の剣を抜き、横島に向かって勢いよく切りかかっていった。


「え、え~っとその僕には恋人がいますんで、って危ない!」

「へ……どあぁ!」


メナドの声によりランスの一撃を辛うじてかわす横島。


「な、何するんすかランスさん!?」

「やかましい!!てめえ、俺様の女(予定)に手を出すとはいい度胸してやがるぜ」

「え、…も、もしかして彼氏さん…ですか?」


実際は違うのだがランスの言葉でメナドの彼氏だったのかと思ってしまう横島。
すぐさまメナドが否定の言葉を上げようとしたがランスは口を挟ませない。


「せいぜい、城で尋問するぐらいで許してやろうと
 思ったが気が変わった!てめえはこの場で俺様が直々にぶっ殺してやる!」

「なんでじゃああぁ!」


いくらなんでも目の前で恋人をナンパしたぐらいで
殺すなんてやりすぎだろうが!!(本当は彼氏でもなんでもないのだが)
横島の心の叫びが自分だけに空しく響く。


「……おらよっ!!」


掛け声と共にランスが本気で剣を振ってきた。


(……は、はええ!)


これまでギャグモードでランスの剣をかわしてきた横島だったが、ここにきて相手が本気だと気づく。
その、凄まじい剣速に背筋がぞっとするが、なんとか体を捻ることでかわすことができた。


「何!?また避けただと?」


これまでとは違い、本気の本気(女絡みだから)で放った一撃を避けた横島に驚きを隠せないランス。


(……今の動き……シロより速かったぞおい…)


回避できたのはもちろん理由がある。
横島は以前から自分の弟子である人狼のシロを相手に修行をしていたのだ。
どうしても!っとシロに頼まれて嫌々ながら付き合っていた
横島であったが今はその事に感謝しておこうと思った。
その修行が無ければさっきのランスの一撃はまず回避できなかったとわかっているからだ。
シロの剣ならば割りと楽に避ける事ができるようになるぐらいに成長していた横島だが、
ランスのは思いっきり必死じゃないとかわせなかった。
すなわち、ランスの剣速はシロの剣速よりも速い。
目の前にいるランスからは特別、強い霊力は感じられない。
つまり、ランスは自らの身体能力だけで、人狼であるシロを上回る動きをしてみせたのである。
本来、人狼の身体能力は人間のそれをはるかに上回るとされている。
だがランスはその定説を覆した。それがいかに異常な事か、横島は正しく理解する。


(こいつ、バケモンかよ…)


シロの攻撃をスイスイかわすことが出来る横島も
一般人からすれば十分バケモンなのだがそのことは棚に上げておく。

横島はもはやランスに対して敬語を使う気になれなかった。
目の前の男は自分の命を狙ってくる”敵”なのだ。
横島もぐっと顔を引き締め、足をぐっと踏みしめる。
どうやら真剣に戦う気になったようだ。




「てめえ、素人じゃねえな!」

「ひいぃ、僕はどこにでもいるちょっと貧弱な坊やです!」




引き締まった顔はものの3秒で崩れ落ちた。
彼の真剣さは長く持たない所がミソである。



「舐めやがって……絶対ころーす!!」


その言葉を最後にランスは横島に向かい、剣を振りまくる。


「ぬぁ!!せいやっ!!なんとぉ!!」


気の抜ける声をかけながらもランスの猛攻をことごとくかわす横島。
それがさらにランスを苛立たせる。


「むがああぁ!!ちょろちょろすんじゃねえ!さっさと斬られやがれ!!」

「無茶言うなぁ!!」


こうして、もはや周りから見たらコントにしか見えない、滑稽な戦闘が再び行われるのである。








「あの人……すごい、王様の攻撃をことごとく回避してる」

「確かに。身のこなし等はどう見ても素人にしか見えないが
 ……なぜあれでキングの猛攻をしのぐ事ができるのだろうか?」


横島とランスから少し離れた所でリーザス赤軍の将、リック・アディスンと
同軍副将、メナド・シセイが二人の戦いを見学しながら話し合っていた。


「しかし、どうにも真剣味が感じられない戦いですね」

「そうですね」


ランスは思いっきり真剣に戦っているのだが
いかんせんその攻撃を回避する横島がとにかく格好悪い。
見ているだけでMPが吸い取られそうな動きをし続ける横島は見ている者をどんどん脱力させてしまう。
ちょっと一杯引っ掛けながらのんびりと見物をしたくなる喜劇にすら見えるのだから驚きである。
現にリックとメナドの後ろに控えている大勢の兵士達は完全にだらけていた。


「……どうします、援護でもしておきますか?」


あまりやる気の感じられない声でリックに質問するメナド。


「………手を出すとキングの機嫌が悪くなるでしょうし、もう少し様子を見ましょう」

「わかりました」




「………しかし何時になったら終わるんでしょうか」

「……そうですね」


早く帰りたい。
二人の思いは完全に一致していた。











「蝶のように舞い!」


実際はロボットダンスが関の山ではあるが。


「ゴキブリのように逃げる!!」



急反転しカサカサという擬音が聞こえそうな動きで逃げ出す。
これは本当にゴキブリも真っ青である。


「こら!勝手に逃げるんじゃねえ!!」


慌てて横島を追いかけようとするランス。



(かわし続けるのはそろそろ限界だ。こっちも攻撃しないとやられる)



「と、見せかけてっ」


そういうと右手に自身の霊力を収束させて霊波刀を、
本人いわく「栄光の手(ハンズオブグローリー)」を作り出す。


「蜂のように刺す!!」


スパーン



横島の放った一撃はまるでハリセンで突っ込んだかのような
奇麗な音を立ててランスのデコに直撃する。


「……何の真似だおらっ!!」

「ぬおぅ!!……ノーダメージですかい」


正確にはランスのデコはまっかっかになっており全くのノーダメージと言うわけでは無いのだが
結果的に、ランスの怒りを増幅させるだけとなってしまった。



(今のでダメだとしたら一体どうすりゃいいんじゃい!……むむっ!?)








「……何、あの光ってる……剣?」

「う~ん、私の使っているバイ・ロードのようなものかな?
 いや、しかし彼は何も無い所から出した……」


突然、横島の手から現れた光る剣のようなものに驚いた二人。
そんな二人に突然後ろから声が掛かった。


「ちょっと、リック君。一体なんなのこの騒ぎは?」

「あ、レイラさん」


現れたのはリーザス国親衛隊の隊長、レイラ・グレイニーである。


「いつまで立ってもランス君がこないから呼びにきたんだけど、何がどうなってるの?」


「はい、それが「いや~本当に俺が聞きたいぐらいですよ。
 ランスさんったらいきなり斬りかかってきたんですよ、酷いと思いません?
 ところでお姉さん今お暇ですか?よかったらあそこの木陰で僕と愛を語らいませんか?
 ほら、風がすごい気持ちよさそうだし二人の愛を育むにはもう最適!」


「ちょ、ちょっとなんなの君は?」


先程まで向こうでランスと戦っていたはずなのに
いつの間にかレイラの前に現れている横島。
同じ事をメナドにしたのが原因なのに懲りずに
レイラにちょっかいを出す横島にリックは完全に呆れ果てている。
一瞬で姿を消した横島を探していたランスだったが、レイラを口説いている姿を見て完全にぶち切れた。


「貴様レイラさんにまで手を出すとはもう許さねえ!!食らいやがれ、ランスアタック!!」


気合と共にランスの剣から凄まじい気の塊が飛び、横島に襲い掛かっていった。


「……ぬおお!!」


流石に気づく横島。
そしてこの一撃をもらうと間違いなく気持ちよく昇天してしまうこともわかってしまう。


(あれはやばい、なんとしても避けんといかん!)


一瞬の判断でかわそうとするが、目の前のレイラを見て踏みとどまる。


(あかん、俺が避けたらこのお姉さまに直撃してしまう!)


となると自分が避けずにあれを受け止めなくてはいけない。
そうなると横島に残された手段は唯一つしか無い。
こんな訳の分からない所に飛ばされてしまい
今後の事が一切読めない状況なのでできるだけ温存しておきたかったが
今はそんな事も言っていられない。
横島はそう、自分の中で決着を着け自身の切り札をポケットから出す事にした。


「文殊!「護」ってくれ!」


文殊に「護」のキーワードを念ずる。すると目の前に霊力で出来た防御壁が現れ
ランスアタックを正面から受け止めた。
轟音とともにランスアタックと防御壁がぶつかり合い、そして少しするとお互いが消滅していった。


「な、………お、俺様のランスアタックを受けて無傷だと?」

「な、なんちゅう威力だ。……一撃で文殊の防御壁がぶっ壊れちまった」


互いの最高の技を破られ、ショックを受けた二人。
特にランスは己の技に絶対の自信を持っていたため一層ショックが強かった。


(……残りの文殊は後3つか……)


一見互角に見えるが気を貯めれば特に制限の無い
ランスアタックに対して横島の文殊には数に限りがある。
長期戦になれば横島の方が圧倒的に不利なのである。


(ちくしょう!こんな奴相手にしてられねえよ!)


追い込まれている横島は即座に逃亡する事を考える。
だが、周りを見渡す限り、自分の見方になりそうな者はいない、
仕方なく、横島は残り少ない文殊を再び使う事にした。


「もう、どこでもいいからとりあえずここから「脱」出させてくれぃ!」


そう言うと文殊に「脱」の文字が浮かび上がり横島の体は一瞬でその場から消え去った。
そうなると目の前で消えられた周りの人間は当然驚く。


「な、どこに行きやがったんだ!?いきなり消えるなんて卑怯だぞ!」

「……どうやら逃げられたみたいですねキング」


努めて冷静に言うリック。もちろん彼も内心では突然消えた横島に驚いているが
まずはランスを抑えることを優先した。


「……くそっ!よくわからんが逃げられたか」

「それよりランス君!一体何時まで油売るつもりだったのよ!もうリア様が待ちくだびれてるわよ」

「あ、ああ悪い悪い、それじゃ行くとするか」


そう言ってランスは大勢の兵士を引き連れながら自分の城に向かって歩き始めた。



(くそ、くそ!あいつヨコシマとか言ったな。
 よくも俺様の女を口説きやがって…しかも俺様のランスアタックを…むかむかむか)



「次に会ったときは絶対に殺す!!」



一人、怒りに打ち震えるランスであった。












「ルドラサウム様」

「ん、どうしたのプランナー?」

「は、先程異世界からの侵入者が現れました」

「あ~それ僕が頼んだの」

「は?」

「向こうの人達との約束で彼には手出しできないのが残念なんだけどね。
 でも、なんかそんなことしなくても十分楽しめそうだからまあいいや」

「…そうですか」

「ふふふ、面白くなりそうだよ」





来訪者 横島忠夫 第3話


リーザス城 玉座


現、リーザス王ランスは、一応の妻であるリア・パラパラリーザスと話をしていた。


「でもエクスの処分が国外追放だけで本当によかったのダーリン?」

「ふん、あんな小物どうでもいい。もしまた反乱でも起こしたら今度は殺すしな」


ランスはすぐに話を切りリアの横に控えている筆頭侍女、マリス・アマリリスの方を向く。


「マリス、反乱は終わったんだ。さっさとヘルマンに進軍するぞ!」

「現在のリーザス軍の兵力ではバラオ山脈を越えて、ヘルマン軍を相手にするのは無謀です」


ランスのきつい物言いにも全く動じず、すぐさま問題点を指摘する。
流石のランスも冷静に問題点を言ってくるマリスの言葉を無視することが出来なかった。


「ちっ、だったらどうすりゃいいんだよ」

「当面の間は、自由都市をリーザスの支配下に置く事で軍事力を上げるのがいいでしょう」

「くそっ!早い所へルマンに行きたいってのに……それとかなみ!」


言われると、一瞬でランスの目の前に現れる。
見当かなみ。リーザスに仕えるくの一である。


「何?」


素っ気無く聞くかなみ。
とても主に対する態度とは思えないがランスはそんな事は一切気にせず話を進める。


「最優先の任務じゃないが、一人男を探してきてくれ」

「男?…珍しいわね」

「ふん、JAPAN人で服装は…変な格好だ。後、頭に赤いバンダナを巻いていた」

「なによそれ、全然わかってないじゃない。それで名前は?」



「……ヨコシマタダオ。俺様をコケにしやがったふてえ野郎だ!」












来訪者、横島忠夫 第3話














横島は困っていた。


「ああああぁ!!!」


半泣きになりながらも手に宿した霊波刀を振るう横島。
ギシャアアァとグロい声を発しながら崩れ落ちる魔物。
だが、目の前にはまだまだ大量の魔物達存在し、そのすべてが横島に向かってきている。


「なんで、俺はこんな所にいるんじゃあぁ!」


横島が離脱して出て来た所は異様におどろおどろしい深い森だった。
それだけではない。目の前には50近くの魔物達がいたのだ。
魔物達は突然現れた横島に驚いていたが、横島が人間だとわかると襲い掛かってきた。
当然の如く避ける横島、更に逃げる。そして今に至っている

ピンチから逃げる為に貴重な文殊を使って
脱出したはずなのに出てきた所で、それ以上の大ピンチに陥っている。
自分の不幸を嘆きたくなった横島だがもちろんそんな余裕は無い。
必死の形相で走る走る。時々、追いつかれそうになり、そんな奴は霊波刀でぶった切る。
そしてまた死にそうな顔をして走る。先程からこの繰り返しである。
情けない面をして逃げ惑っている横島ではあるが
実はすでに20体近くの魔物をこの戦法で倒しているのだ。
これだけの魔物を相手にして生き残れる人間はさほど多くない。
魔物達もじりじりと減ってきている味方を見て少々あせってきていた。
このままでは不味い。比較的、知能の高い魔物が思ったのだろう。
その魔物は近くにいる自分より「格上」の者に援護を頼みに行ったのだ。
即ち、魔物達を束ねる者、「魔人」に。





「往生せいやぁ!」


依然としてがむしゃらに剣を振っては逃げる横島。
倒した魔物の数は50を超えるまでになっていた。


「え、ええ加減限界や……」


長時間に及ぶ全力疾走と戦闘によって横島の体力は既に限界ぎりぎりまで減っている。
それ以上にもう気力の方が萎えてしまっているのだ。
徐々に足が鈍っていく横島。魔物達との差がみるみる詰まっていく。
だが、そんな魔物の集団から一瞬で飛び出してきた者がいた。
そして真っ直ぐ横島の方へと襲い掛かる。


「くそっ!文殊、「守」れ!」


回避できないと判断した横島は瞬時に文殊を使用する。
文殊が作り出した「壁」に攻撃した者はその防御壁に驚き距離を取る。
横島もこのまま走って逃げるのは困難と悟り相手の方に振り向く。


「今の一撃を防ぐとは……中々やりますね」


黒のスーツを身に纏い、目にはメガネを付けたいかにも紳士といった感じの男が言った。


ゾクッ


だが横島は目の前の男と対面した瞬間、体が凍りついた様に固まってしまった。


(な、なんやこのおっさん……あかんこんなの相手にしたら殺される!)


相手の持つ独特の雰囲気。体からにじみ出ている力。
明らかに今まで相手をしていた魔物達とはレベルが違うのが横島にも見て取れた。
この感じは魔族だろうか。自身の経験から相手を予想する。


「ケッセルリンク様!」


魔物達から声が上がる。彼の名前のようだ。


「下がっていなさい。私が相手をします」


ケッセルリンクが言う。魔物達はそれに従い、距離を取った。


(も、文殊!!)


ランスの時と同じ様に脱の文殊を使いすぐに逃げようとする横島。


「どこに気を取られているのですか?油断していると一瞬で死にますよ」


一瞬で間合いを詰めたケッセルリンクが爪を振るう。
文殊に気を使いすぎた横島の肩に傷が付く。
更に連続で爪を振り、止めを刺そうとするケッセルリンク。


(あかん、文殊を使う隙が無い!)


今度は目の前にいるケッセルリンクに集中していた為、回避する。
なんだかんだで異常な回避力を誇る横島。猛攻を泣きそうになりながらも凌いでいる。


「ほう、人間のわりにはやりますね」

「人間のわりにってやっぱりおっさん魔族かよ!!」

「魔族?いえいえ、私は魔人ですよ」

「どっちも一緒じゃあ!!」


喋り続けてる間も攻撃を避け続けている。変な所で器用である。


(なんとか……隙を作らんと!)


その瞬間、横島は後ろに大きく跳び、手にサイキックソーサーを作り出す。


「ちくしょう!これでも食らえ!」


勢いを付けてサイキックソーサーを投げつける。
目標はもちろんケッセルリンクである。


(回避する瞬間、その間に文殊を作る!)


そう心に決め、一瞬の隙が出来るのを待つ横島。
しかし、相手の方は横島の予想を超える行動に出る。


「魔法……ですかね?無駄な事を」


ケッセルリンクは避けようともせず、両手を広げ、サイキックソーサーを受け止めようとする。
余裕の顔をしてサイキックソーサーを迎えようとしているケッセルリンクを中心に爆発が起きる。
爆風が爆音と共にケッセルリンクの中心で起き、周りの木を大きく揺らす。


少しして、煙からケッセルリンクが出てきた。
両腕から血を流しており、左手に至っては完全に折れている様に見える。
呼吸も荒く、足取りも重そうだ。高そうなスーツも所々破けており、メガネも割れている。
まるで爆発コントのようである。


「ば、馬鹿な……魔人である私がダメージを……」


避けようともせず勝手に食らいヒィヒィ言っている
ケッセルリンクを横島は後頭部に大きな汗を付けて呆然と見ている。
この世界では魔人には通常の攻撃は効かないので取ったケッセルリンクの行動だったのだが、
そんな事は知りもしない横島には体を張った(命がけ)ボケにしか見えなかった。


「ニ刀でも無く……魔王でも無いのに魔人に傷を付けるとは……生かしては……おけん!!」


今までのような余裕は全く無く、殺気の篭った目で横島を睨みつける。
その瞬間、横島は正気に戻る。


「……あ、いかん文殊だ」


すっかり逃げる気を無くした横島は文殊に「爆」の文字をこめてケッセルリンクに投げつける。


「む……これは一体?」


横島の投げた文殊を全く懲りずに再び避けようともせず今度は手に取り調べようとする。
その瞬間、再びケッセルリンクを中心に爆発が起きる。
ただし、先程より規模がかなり大きい。周りで見学していた魔物達も巻き込んでの大爆発だ。
大きなキノコ雲ができ、辺りの木々をも吹き飛ばす。


「た~まや~」


思わず言いたくなるぐらい、奇麗なキノコ雲である。

しばらくし、爆発の中心の煙が徐々に晴れてくる。


「ば、………馬鹿……な……」

「おっさん、あほやろ?」


爆発の中心地には、地面と接吻をかましているケッセルリンクがいた。
ご自慢のスーツはもはやクールビズといっても
通用しないぐらい破けており、髪の毛もお約束のアフロになっている。
横島はつっこみを入れながらも、その芸術的とも言える姿にちょっと感動していた。
ケッセルリンクが必死に体を起こそうとしているので横島は生暖かい目で見守る事にした。
関西人として彼の芸を最後まで見届けたくなったのだ。


5分経ったがいまだにケッセルリンクは立ち上がらない。
それどころか顔色もどんどん悪くなっており、平たく言えばもうダメそうだった。
横島は乾いた表情でがんばれ~と応援している。もう完全に飽きている。
そんな中、突然上空から乱入者が現れる。


「ケッセルリンク!私達の陣地に単独で乗り込んでくるなんて……ってあ、あれ?」


天使のような姿をした彼女がまず目にしたのは既に虫の息になっているケッセルリンクであった。


「な、これは一体……誰がこんな事を?」

「はっ!それは自分でありますお姉さま!!」

「きゃっ!」


背後に回りこんでいた横島がすかさずアピールをする。


「え、…あなたがケッセルリンクを?」

「そうであります!自分がこの不届きな輩をこのように!このようにしてやりました!」


言いながらケッセルリンクを踏みまくる。
もはやろくに抵抗も出来ず、もろに食らっている。


「ぐはっ!げぼっ!あべしっ!」

「ふん!ふん!」


更に蹴りを入れまくる横島。天使のお姉さまは唖然としてその光景を見ている。


(ど、どういう事?どう見ても人間にしか見えないのに
 …ケッセルリンクをこんな風にしたと言うの?)


時々、こちらの方を見てキラッっと歯を光らせながら満面の笑みを浮かべてくる横島に
冷や汗を浮かべながら尚も考えを続ける。



(見たところ素手…二刀も無しに魔人にダメージを与えている!)


その世界のルールを無視している横島に彼女は驚愕の表情を隠せない。


(一体彼は………あ)



メキャ







ケッセルリンク死す







どうやら当たり所が悪かったようである。

体は風化していき何も残らなかった。
良い仕事したぜ、みたいな満足げな表情をしている横島。


「あ、あなたは一体……」

「はい、僕の名前は横島忠夫と言います!気軽に忠夫と呼んで下さい」


接近して相手の手を握る横島。


「所で貴女のお名前は!?」

「ハ、ハウゼルといいますが」

「美しいお名前だ。良かったらこれから僕とデートしませんか?」

「え、え~っと……その、あの、私達まだ会ったばかりですし…」


こういう時は良く口が回る横島。
しかし以外なのはハウゼル。横島のベタな口説きに顔を少し赤くしている。
こういった経験が少ないのだろうか。それとも……


「さあさあ、善は急げと言いますし早速、ご休憩…ゲボァ!!」

「え?」

「大丈夫、ハウゼル!?」

「……シルキィ」


シルキィと呼ばれた彼女は背後から殴り飛ばした横島を無視してハウゼルに話しかける。
不意をつかれた横島はあっけなく気絶してしまう。
<>

「どういうこと?ここにはケッセルリンクがいるって報告があったから
 来たのにいるのはあなたと……このよくわからない人間だけ?」


ハウゼルはその言葉で顔を引き締め、シルキィに話しかける。


「シルキィ……ケッセルリンクはそこにいる、忠夫さんが倒したわ」


横島の希望した呼び名を律儀に守るハウゼル。


「……はぁ?あのねえハウゼル、こんな時に冗談は辞めてよ」

「私が見た時には既にケッセルリンクは瀕死だったわ。そして止めをさしたのも忠夫さん」


真剣な顔をしたまま淡々というハウゼル
冗談や嘘で言ってる訳では無いとシルキィにもわかる。


「……この人間があのケッセルリンクを倒した?一体どうやって!?」

「さあ……それはちょっと…」

「……だったこの、人間に直接聞きいた方がいいみたいね」


そう言って横島の方を見るシルキィ。
依然として地面に突っ伏したまま気絶している横島。


「すぐには無理みたいだし……とりあえず魔王城に連れて帰りましょう」

「そうね。じゃあ私のキメラに乗せて…」

「ああ、別にいいわよシルキィ。私が運んでいくから」


そう言って横島をお姫様抱っこするハウゼル。どうやら見た目よりもかなり力があるようだ。
そんなハウゼルに対して怪訝な表情を浮かべるシルキィ。


「ハウゼル?」

「……い、いいから、さあ早く行きましょう!」

「あ、ちょっと待ってよ!」














ケッセルリンクの城
 


「ぬがああぁ許さんぞあの人間!!!」

「ケ、ケッセルリンク様落ち着いて下さい!」


実は柩がある限り何度でも生き返ることが出来るケッセルリンク。
再生したケッセルリンクが吼えている。
メイド達は必死に彼を抑えようとするが効果がない。


「この屈辱!!絶対に!ずぅえっったいに忘れんぞおおおぉ!!!」




「むきょおおおおおおおお」




「……ケッセルリンク様が壊れた」


メイド達の心は、光の速さでケッセルリンクから離れていった。






来訪者 横島忠夫 第4話


普通の人間では決して足を踏み入れる事が許されない地、魔人領

その魔人領の中において、現在唯一人間が存在している場所がある。


魔王城

 
魔人筆頭、ホーネットが治めるこの城は、逃走して今はいない、魔王リトルプリンセスに

統治して貰い、人類に対して不可侵を守ろうと考えているグループの本拠地である。

反対に、今だ覚醒していないリトルプリンセスに成り代わり、自らが魔王となり

人類を力で支配しようとするケイブリス派と言うのも存在するがその話は後に置いておく。




魔王城、ホーネット執務室


本来、魔王が治める城だけあって、その豪華な作りにおいては他の追随を許さない。
現在、この城を治めている魔人、ホーネットはそんな豪華な城にピッタリの
とても優雅で美しく、見るものを虜にするような美しい女性の魔人である。
そんな彼女は現在、魔人四天王であるシルキィの報告を受け、驚いていた。


「ケッセルリンクを……人間が倒したですって?」

「はい、私もにわかに信じがたいのですが…」


魔人が人間に倒される。
これはこの世界において、めったに起きない事である。
何故なら魔人には神との契約で「絶対防御」という物が備わっており
人間の通常の攻撃では全くダメージを食らわないのである。
そのため、人間が魔人を倒す事はは3つの例外を除き不可能なのである。
その例外とは神が人間に授けた二刀、魔剣カオスと聖刀日光による攻撃。
そして神に選ばれし人間「勇者」だけである。
これはこの世界において絶対のルールであり今までの歴史上、例外は無かったのである。
そのため、ホーネットは世界の常識で考えられる可能性を口にしていく。


「魔剣カオスを使いこなす者が現れたの?」


もう一つの武器、聖刀日光の持ち主はリトルプリンセスと共に行動している
小川健太郎であることを知っていた為、もう一方の魔剣カオスの使い手が現れたと考える。


「いえ、私が見た限りでは武器の類は何も所持していませんでした」

「どういう事?だとしたら……もしや勇者!?」

「……恐らく違うと思います」

「どうして?」

「私が初めて見た時にハウゼルを……その、…口説いてました」

「く、口説くって……」


ホーネットの顔がほんのりと赤くなる。
これは彼女がその手の経験が全く無いためなのだがそれには理由がある。

通常魔人にとって人間は殺戮の対象であり、人間にとって魔人は恐怖の対象なのである。
まず、恋愛の成立などありえない(例外はあるが)
ならば同じ魔人、なんだったら魔物でもいいじゃないかと思うのだがそう簡単にはいかない。
ホーネットは唯の魔人では無く前魔王、ガイの娘だったのだ。
そのため、他の魔人魔物からも一歩引いた態度で接せられ
とても恋愛に発展するような雰囲気では無かった。
もっとも、単に好みの人物がいなかっただけというのも考えられるが。
ちなみにシルキィも似たような理由から経験は全く無く、顔を赤くしている。


「は、はい。勇者が魔人を口説くとも思えないですし、その可能性は無いと思います」

「そ、そうよね。……でもそうだとすると、どうやってケッセルリンクを倒したのかしら」

「私にもそれはわかりかねます。ですからその人間に直接聞くため城に連れてきています」

「私も聞きたいわ。その人間は今どこにいるのかしら?」

「……気絶していたため客室で休ませています」


自ら気絶させた事は棚に上げ、報告する。
何故かうっすらと汗をかいていて、顔も微妙に引きつっている。


「それじゃあ今から行きましょう。見張りはちゃんとつけているわよね?」

「それなら心配いりません。……ハウゼルが「手厚く」看護していましたから」












来訪者、横島忠夫 第4話













魔王城 客室


寝室も兼ねているこの部屋は魔王城の客室だけあってとても優雅で広々としている。
ベットにしても現在寝ている横島を後10人ぐらい寝かしてもまだスペースがある程だ。
シルキィに背後から殴られて気絶してしまった横島。
ベットの横には何故か薄っすらと微笑みながら横島を見守っているハウゼルが座っている。


(うふふふ……)


何もせず、ただ横島の寝顔を眺めているだけなのだがそれを辞めようとは全く思わない。
少々浮かれているのかもしれない。ハウゼルは自分をそう分析する。


(横島…忠夫さん。……初めて…あんな風に声をかけられたなんて)


横島にかけられた言葉を思い出し、にこにこしながらも顔が赤くなってしまう。
これまで生きてきて数百年になる自分だがこんな気持ちになったのは初めてである。
あんな風に馴れ馴れしく声をかけてきた人間は初めてだった。いきなり手を握られもした。
引っ張られてどこかに連れて行かれそうにもなった(シルキィが入ったため未遂)
だけど、何故かそんな彼を憎めない自分がいた。むしろ好ましいと言っても良かった。
自分はこんなに惚れっぽかったのだろうか。
両手を顔に当てる。すごい熱を持っているのがよくわかる。
何故だろう。この人間には自分を心を掴んで離さない魅力があるのだ。
顔を見てもそれ程美形だとは思わない。
もっと格好いい男など、これまでに幾らでも見てきた。
見た目じゃない。中身だ。
なんて言うほどこの人を知ってなどいない。
一目惚れ、なんだろうか。
それ以外にこの気持ちを証明する事が出来ないのだ。
胸がキュンと鳴ったような気がする。ちょっと切なくて、でもそれが心地良い。


「う、う~ん…」


横島が少しうなされているような声を上げる。
額にかけてあったタオルがずれてしまう。


(あ、タオルを交換しないと)


ハウゼルはすっと椅子から立ち上がりタオルを取ろうと、横島に近づいていった。
タオルを取ろうとした瞬間、不意に顔を触ってしまう。


(あ……)


横島の顔をモロに意識してしまった。
そんなに格好よくは無いがそれなりに整った顔。少し汚れてしまっている。
ぼさぼさの髪に無造作に巻かれている赤いバンダナ。
ハウゼルには、そのすべてが魅力的に感じてしまう。
タオルはずれてしまい、顔から滑り落ちてしまったが既にそんなものには目が行かない。
ドックン、ドックンと、自分の胸の鼓動が高まっている。
ハウゼルの視線はまるで金縛りにあったかのように動かなくなっていた。
しばしの間、辺りの時間が止まってしまったような錯覚を受ける。
その胸の高鳴りだけが時間が進んでいる事を教えてくれている。


(忠夫……さん……私は………)


思わず喉が鳴ってしまう。口の中はとっくにカラカラだ。
もう、止まらない。ハウゼルは自覚している。
してはいけない!こんな事は卑怯、相手の事情を完全に無視している。
理性がそう必死に訴えかけているのだ。
だけど、それでも!
体は言う事を聞いてくれないのだ。そして心もそれを許してしまっている。
今はこの気持ちの赴くままに、行動したい。
だってそれは、きっと、すごく素敵な事だと思うから。

ハウゼルの顔が徐々に横島の顔に近づいていく。
熱に浮かされたかの様に頬が紅潮して目が潤んでいる彼女は
あらゆる男を虜にしそうなほどに美しかった。


(忠夫……さん)


どんどんと、距離が近づいていく。以前、横島は眠ったままだ。


(私はあなたを……お慕いしております)


そして二人の距離が零に……





「ハウゼル!人間はまだ眠っているの……か……あ……」

「シルキィ、どうしたの……あ……あぅ……」


空気が固まってしまった。
むしろ世界が固まってしまった。


「あ、あ、あああなた、一体な、ななな何をして、して」

「お、おお落ち着いて下さい、ほ、ほ、ホーネット様」

「…………………」


ドアを開けた瞬間、そこに広がっていた甘ったるい空気。
そして繰り広げられていたハウゼルのラブシーン。
ホーネットとシルキィは全くの未知の世界を見てしまい完全にパニックになっていた。


「そ、そそこにいるに人間に、はう、ハウゼルが、ハウゼルがああああぁ!」

「し、シルキィ、ああ、ああなたの方こそお、落ち着きな、なさい。」


二人の顔はこれ以上無いのではと言うぐらい真っ赤になっており
その興奮具合が一目で見て取れる。



「ハウゼルが!ハウゼルが人間にん~~って、ん~~ってやってた!!」

「そうです!ハウゼルが、あんな蕩けるような表情して人間にうっふ~んって!」

「いや~~不潔よっ!そんな、男と女がベッドでなんてぇ!!」

「う~ハウゼルが大人の女性になっちゃったぁ!
 私なんてまだ男の子と手を繋いだ事もないのに~!」

「あら、シルキィったらそんな事も無いなんて……プッ」

「む、ホーネット様はあるって言うんですか!?」

「あら、もちろんじゃない。それぐらい乙女なら当然よ」

「誰となんですっ!!言ってみて下さいよ!」

「え、え~っと……それは…」

「さあ!早く言って下さいよ!」

「……………お父様」

「…………ふっ」

「む、むきぃ~~!いいじゃない
 お父様だってちゃんとした男の人なんだから!この洗濯板!!」

「な、な、な、な、言うに事欠いて洗濯板呼ばわり
 ……いくらホーネット様でもそれだけは許せません!」

「ふ~んだ!悔しかったら、もう少しそのつるぺた改善してから言いなさいよ!」

「誰がつるぺただ!もうその胸につけたシリコン引っ剥がしてやるう!!」

「シリコンなんて人聞きの悪い事言わないでよ!!
 ふん、やれるもんならやってみなさい!!」


その言葉を合図に二人の戦闘が開始された。
二人とも半端じゃない力を持っているので既に部屋はめちゃくちゃだ。
そして、ようやくフリーズし続けていたハウゼルが再起動する。


「お二人とも………言いたい事はそれだけですか……」

「ファイヤーレーザー!…っては、ハウゼル?」

「い、いつものハウゼルじゃない……」


俯いている為その表情が読み取れないハウゼルだが、
身に纏った雰囲気は、魔王を遥かに超える威圧感である。

 
「もうちょっと……もうちょっとだったのにぃ………」

「ハ、ハウゼル?お、落ち着きなさい。冷静に、冷静になりましょう!」

「そ、そうだぞハウゼル。たかが人間とキスしようとしてたのを邪魔されたぐらいで」

「おバカ、シルキィ!」

「あ、しまっ……」


勢い良く顔を上げるハウゼル。
既にその目は完全にイっており、見るものを恐怖させる力を持っていた。


「この恨み!晴らさずに置くべきか!!お二人ともお仕置きです!!」

「ま、まずいわ!シルキィ!ここは一旦停戦して共闘します!」

「りょ、了解です!……う~でもハウゼル怖いよぉ。」

「泣き言を言わない……来るわよ!……ってきゃあああ!!」

「いや~~ホーネット様~~!!」


半泣きになっているシルキィを叱咤しながら体勢を整えていたホーネットだったが
ハウゼルの突進による一撃で吹っ飛ばされてしまう。
魔人最強とも言われたホーネットを一蹴するハウゼルに恐怖を隠せないシルキィ。


「さあ次はあなたですよシルキィ……」

「いや……こないでぇ……」

「くっくっく……む」

「白色破壊光線!」


シルキィに後一歩まで近づいていたハウゼルに渾身の魔法を叩き込むホーネット。
既に仲間だという事は忘れ、ハウゼルを最強の敵と認識しているようだ。


「ホーネット様!」

「………まだ抵抗する力があるようですね、ホーネット様」

「そ、そんな今の一撃を食らって無傷だなんて……」

「私の恨み……白色破壊光線などで破れるようなやわな物じゃありませんよ……」

「くっ……!!」

「いけ、キメラ達!ホーネット様を助けるんだ!」


ホーネットに気を取られているハウゼルに
自分の切り札とも言えるキメラを惜しみなく投入するシルキィ。
現在、ケイブリス派ともっか戦争中だと言うのは頭から消えているようだ。


「この……ちょこざいな!」

「援護しますシルキィ!」

「二人とも!素直にお仕置きされなさい!!」


「「やだっ!!」」



入り口付近で行われている戦闘は苛烈を極め、
何事かと様子を見に来た男の子モンスター達がその余波で吹き飛ばされている。
その中に一人、魔人であるメガラスが混ざっていたのは本人だけの秘密である。


「ん………なんやもう、うるさいなあ……」


ここにきてようやく、横島が目を覚ます。
気絶明けと言う事で少々頭がボーっとしている。


「………なんだこれ?」


目の前で繰り広げられている死闘に目をパチクリさせる。
既に城は半壊といってもいい位の被害を受けており
横島のベッドがほぼ無傷で残っていたのは僥倖とも言える。


「……夢か。ふあ~もう一眠りするか」


横島はとりあえず現実逃避をすることで正気を保とうとした。
次に目が覚めた時にはすべてが元通りでありますようにと願って。















こちらは打って変わって平和な雰囲気を保っているリーザス城。
現在、ランスはメナドの練習に付き合っていた。


「さあ、いつでも撃ってきていいぞ」

「は、はい!」


ランスの隙を探しているメナドだが中々そんな隙は見あたらない。
しばらく硬直が続いていたが、やがて意を決したようにメナドが動いた。


「やぁ~~!」

「いきなりランスアタッ~ク!!」


カウンターでランスアタックをもろに食らってしまったメナド。
しかし、体に衝撃が来ないので周りを見渡してみると、
自分の剣が柄だけ残して無くなっているのに気が付く。


「俺様の勝ちだなっ」


そういってにやりと笑う。


「す、すご~い!!王様の剣、ほとんど見えなかったや!」

「が~はっはっは!もっと誉めていいんだぞ!」

「はい!」


訓練でいきなり必殺技を使うランスに周りは冷や汗をかいていたのだが
当の本人であるメナドが嬉しそうにしているので誰もそれを口にする事は無かった。


「ところでメナド、今日こそは俺様の部屋に来てくれるんだろうなぁ」

「え、え~っとそれは……その……すいません!!」

「あ、こら待たんか!」


メナドは素早く後ろを向き、ランスから逃げていった。
ランスはしばらくの間、メナドの去っていった方をつまらなそうに見ていた。


(ムカムカ、まただ、また断られた!
 くそっ、それもこれも全部あのヨコシマって奴のせいだ!)


男にはなど全く興味を示さないランスが事、横島に関してだけは未だに覚えていた。
もっとも覚えている原因は怒りだが。ここの所、アプローチをかけている
メナドにことごとく振られる原因だと思われているのである。


(レイラさんにしてもそうだ!全部あいつのせいだ!)


以前から関係のあったレイラにもランスは断られていたのだ。
好きな男が出来たのが理由と言ったレイラだったが
その相手を横島だとランスは勘違いしたのだ。
冷静に考えればありえないのだが、もちろんランスは冷静ではなかった。
よほど、自分の女(ランス主観)が口説かれたのがムカついたようだ。
ちなみにレイラの本命は同僚のリック・アディスンである。


(くそっ!俺様の女を二人も取りやがって!……許せん、許せん、許せん!!)


「うがああああぁかなみの奴、何をとろとろしてやがんだ!
 人一人ぐらいさっさと連れてきやがれってんだ!!」


まだ、頼んでから日が経っていないのに八つ当たりをする。


「くそう、とりあえずかなみには帰ってきたら罰を与えんとな。くっくっく……」


そういって邪笑を浮かべるランスであった。





来訪者 横島忠夫 第5話


どれくらいの時間が経ったのだろうか。
意識を手放して睡眠に専念していた横島には正確に把握することができなかった。
頭がボーっとしており、現在の状況が掴めない。
10秒、20秒と時間が経過するにつれ、だんだんと意識が覚醒してくる。
やがて、周りを見渡して現状を確認するぐらいまでに回復することができた。


「……どこだここは?」


最後に残っている記憶は自分がハウゼルにナンパをしていた途中までだった。
そこでぷっつりと切れている。そして気が付けばこんな所にいるのだ。
自分の寝ているベッドを確認してみると、とにかくデカイ。キングサイズって言うんだっけ?
シーツもふかふかだし、まるでホテルのスイートルームの様だ。
横島はそんな感想を持った。
しかし、部屋全体を見渡してみると、またもや疑問だらけなのである。
ベットのサイズに負けないぐらい、部屋だってでかい。
おまけに、いかにも高そうだと言う感じの絵やツボ等がセンス良く飾られているのである。
備え付けであるソファー、テーブル、いずれも格調高い代物に見える。
少々散らかっているのが気になるがまあ許容範囲だろう。
しかし、そんな数々の高級品以上に人の目を引く部分があるのだ。
それは部屋のある一部分。おそらく入り口だったであろう場所だ。
何故か、そこだけ廃墟と言った方がいい位にボロボロに壊れていたのだ。
とても高級感のある部屋だけにそこだけが一際異彩を放っている。

しばらく、その破壊されている場所を呆然と眺めていた横島であったが
そこから、人が出てきた事によりようやく話が進む。


「あら、忠夫さん。目が覚めましたか?」

「えっと……ハウゼルさん、ですよね?」

「はいっ」


嬉しそうに返事をするハウゼル。


「なんでそんなにボロボロなんですか?」

ハウゼルは先の戦闘によりボロボロになっていた。
服は所々擦り切れており
顔も城を破壊した際に出た埃やススでドロドロに汚れてしまっていた。
せっかくの美貌もこれでは流石に色あせてしまう。
しかし、女性に対してボロボロ等と言う物言いはあまりにも失礼である。
指摘を受けたハウゼルは自分の状態を確認してショックを受けてしまった。


「あ!いや、これはその……すいません失礼します!」


横島にこのような姿を見られるのは非常に不本意であるハウゼルは
入浴と着替えをするためにその場から素早く立ち去って行ってしまった。
一人置き去りにされる格好となった横島はとりあえずベッドから出ることにした。
その時、部屋の外からなにやら話し声が聞こえてきた。


「まったくハウゼルの奴、あんなに強いならケイブリスだって一人で倒せるじゃないか」

「そうねえ……でもようやく落ち着いてくれたんだし、この話は蒸し返さない方がいいわね」

「う~もうハウゼルを怒らせるのは辞めよ」

「その方がいいわね」


ピク ピク

横島が誇る地獄耳が発動する。
声で分かる。間違い無く美女である。
横島はすぐさま部屋を飛び出し目標を確認する。


「……あら、目が覚めたようですね」


先に横島に気が付いたホーネットが軽く微笑みながら気軽に喋りかけてきた。
すぐ隣にビキニのような服しか着ていないという格好の
シルキィもいるのだが横島には全く目が入らない。
思わず本能の赴くままに飛び掛っていた。


「ごっつい美人のね~ちゃんやぁ!!」

「え、ちょ、ちょっと……」

「あ、危ないですホーネット様!」


その素早い身のこなしに、すでにかなり疲労していたホーネットは反応が遅れてしまう。
シルキィも同じ様で声を出す事が出来ても体の方は付いていかなかった。
5メートル、3メートル、1メートル……


もうダメかと思われたその瞬間、横島の横から赤い光を放つ強烈な魔法が飛んできた。


「にょばああぁぁ……」


横島をその鈍い悲鳴と共に体ごと魔法が飲み込んでいく。
かなりの熱量を持っているその魔法は横島の体を容赦なく燃やしていく。
ホーネットとシルキィはただそれを眺める事しか出来なかった。



「……………………」



やがて、赤い光が収束していき、その場に残っていたのは
魔法でこんがりとローストされた横島だけであった。
モクモクと黒い煙を体のそこいらから出して、その場に倒れこんでいる。


「ふぅ、嫌な予感がしたと思ったら」

「ハ、ハウゼルさん………」


苦しみながらも横島が見上げてみると
そこには笑顔のハウゼルがいた。手には銃らしき物を持っている。


「今のは、ハウゼル……さんが?」

「もう、忠夫さんったら。ちょっぴりお茶目が過ぎますよ」

「いや、お茶目って…」

「ホーネット様に飛び掛るなんて……私って結構、嫉妬深いんですよ」

「…………(血の気が引く)」

「うふふ、それじゃあ忠夫さん。改めて私はお風呂に入ってきますので
 ちょっと待ってて下さいね……くれぐれもホーネット様に
 手・を・出・さな・い・よ・う・に……ねっ忠夫さん」

一部分にだけ思いっきり力を入れて言うハウゼル。
その瞬間だけ目が完全にすわっていたのを横島は確認した。
言いたい事を言ったハウゼルは横島に手を振りながら意気揚々とその場を後にしていった。



「………やっぱりハウゼルって怖い」



震えながら言ったシルキィの一言にホーネットは何度もうなずきながら同意するのであった。














来訪者 横島忠夫 第5話













ただ今横島は食事中である。
この世界に来てからかなりハードな戦闘をこなしたり走り回ったりしていたのに
今まで一度を食事を取っていなかった(取れなかった)からだ。
お腹が減ったような仕草を盛んに見せていた横島に気づいたハウゼルが気を使ってくれたのだ。


「むしゃむしゃむしゃむしゃ……んんっ!」

「大丈夫ですか、忠夫さん」


喉が詰まった横島にさっと水を差し出すハウゼル。
当たり前の様に横島の隣の席に着き、とても献身的に世話をやいている。


「んぐっ、んぐっ……ぷはぁ、危なかったあ…」

「くすっ、そんなに慌てて食べなくても料理は逃げませんよ」

「いや、こんな美味い料理、食える時に思いっきり食っとかな絶対後悔します!」


そういって、再び猛スピードで食事を再開する。
横島にとってまったく見たことも聞いたことも無い
未知の料理であったが食べてみるとすごく美味しかったのだ。


「あの~、横島さんでよろしかったんですよね?」


その光景を、シルキィと一緒に眺めていたホーネットが喋りかけてくる。


「もぁい」

「食べながらで結構ですので、少し質問に答えていただいてもよろしいですか?」

「ホーネット様!こんな人間に敬語なんか使わなくてもいいですよ!」


シルキィが横島を見下した表情で言う。
彼女は人間を軽視しており、そのため自分の主であるホーネットの低姿勢が気に入らない様である。

が、


「シルキィ?」


ハウゼルが微笑みながら問いかけると一瞬で静まった。
そんなシルキィを無視してホーネットは横島に問いかける。


「横島さんは、人間ですよね?」

「?……ほう、でふけど」

「それだったらどうして魔人領にいられたのですか」

「もぁむぃんにょう?」


食べながらなので横島はまともに喋れていない。
とりあえず横島は食事を中断し、会話に専念することにした。


「……ふぅ、すいませんその事なんですけど」


横島は事情を話すことにした。
自分に優しくしてくれてるし、何かしらの力になってくれるだろうと期待して。


「多分、なんですけど俺この世界の人間じゃないんですよ」

「「「えっ?」」」


横島も少しは考えていたのだ。
最初に来た時は自分が過去に来てしまったと思っていたのだがどうもおかしい。
例えばここ。目の前にいる3人の美女。
露出度が平均的に高いのもあるが、それ以上になんともファンタジーな格好なのだ。
最も、自分の世界にも変な格好をしていた人は大勢いたのでこれは決定的ではないのだが。
途中で倒してきた魔物も違和感があった。
自分の世界で見た、悪霊や魔族達とはどうも違うのだ。
わりとコミカルなのが多かったからそう思ったのだろうか。
ほかにもいろいろ変に感じるところはあったのだが
具体的にどこが自分の世界と違うのかと言われれば答える事はできない。
ただ、感覚でわかるのだ。「ここは違う」と。
なんとなくではあるが横島は頭で理解していた。


「……異世界の住人、と言う事ですか?」

「だと思います」

「なるほど……」


普通に考えれば納得など到底できないであろう。
しかし、ホーネットにはそれをあっさりと否定することはできない。
なぜなら、自分達の主である魔王、リトルプリンセスも異世界の住人であったからだ。
シルキィは未だに口を空けたまま硬直している。ハウゼルも似たようなものだ。


「それで、横島さんはケッセルリンクを倒したと聞きましたが」

「ケッセルリンク……誰っすかそれ?」

「……忠夫さんが倒したあのスーツを着たメガネの魔人の事です」

「ああ、あのおっさん」


シルキィより先に正気に戻ったハウゼルが説明する。
ぽんっと手を打ち納得した様子を見せる横島。


「まあ倒したって言えば倒したんでしょうけど、
 ってかあのおっさん俺の攻撃避けずに食らって勝手に死にましたよ?」

「何故人間のお前が魔人を殺せるんだ!」

「シルキィ落ち着きなさい、横島さん。
 この世界では通常、人間の攻撃は魔人には効かないのです」

「へ、どういう事ですか?」


ホーネットはこの世界の魔人と人間の関係について説明する。
そして、自分達もまた魔人であることも言う。
魔王リトルプリンセスの事、現在戦争中である事、
更には自分達の理想も、すべて包み隠さず横島に教えていく。


「はぁ、そうなんですか」


なんとも淡白な反応の横島。スケールが大きすぎて付いていけないようだ。


「はい、ですから横島さんがどうやってケッセルリンクを倒したのか教えて頂きたいのですが」

「どうやって言われても、普通にこうやって」


横島は手にサイキックソーサーを出す。


「そ、それは……」

「サイキックソーサーって言いますけど、
 これと後、文珠を当てたら死にそうになってましたよ」

「なんでしょうこれは、魔法ですか?」


横島のサイキックソーサーの幻想的な力(に見える)釘付けになっているハウゼルが言う。
文珠の方は聞き流されたようである。


「魔法?いや、違います。これは霊力って力で」

「「「霊力?」」」

「はい、まあどんな力って言われても俺もよくわかんないんで
 答えられないんすけど、とりあえずこれが俺の力です」

「その力なら魔人を倒す事ができると言うことですか…」

「忠夫さん、すごいです」

「いやぁ~そうっすか?うはははは」


ハウゼルが尊敬の眼差しで横島を褒め称える。


「調子に乗るな人間!」

「な、なんすかシルキィさん」

「ふん、私は認めないぞ!霊力って言うのは魔人に効くかもしれないが
 それだけで人間にあっさり負ける程魔人は弱く無い!」

「はぁ」

「ケッセルリンクだって、油断さえしなければお前なんかに負けはしなかったはずだ」


魔人を舐められたくないシルキィは、敵であるケッセルリンクをフォローする。
もっとも、その指摘はかなり的を得ているのだが。


「シルキィ……」


ハウゼルが呼びかける。
その瞬間、自分が不用意だった事に気づいたシルキィだったが時既に遅し。


「ちょっと、外でお話をしましょうか」

「い、いやだ……」

「シルキィ、あなたにはよ~く言い聞かせないといけないようね」

「ちょっ、お願いハウゼル許して!」


すっと席を立ち、シルキィの首根っこを掴みずるずると引きずっていく。


「あぅ~ホーネット様助けてぇ~」

「シルキィも懲りないわねえ」


それだけ言ってホーネットは横島の方に向きを変える。
二人はそのまま部屋を後にした。
シルキィの弱弱しい悲鳴が徐々に遠くなっていった。


「それで、横島さんはこれからどうなされるのですか?」

「……え?ああ、そうですねえ、とりあえず自分の世界に帰りたいんですけど」

「……そうですか」


その答えにホーネットはかすかに落胆の意味を込めた声を上げる。
横島の答えがリトルプリンセスと同じだったからだ。
やはりみんな自分の世界に帰りたいのか………
リトルプリンセスの説得の仕方を考えて少々気が重くなる。


「なにか当てはあるのですか?」

「いや~当ても何もこの世界に来たばかりですし、もうどうしていいのやらさっぱりです」

「……それでしたら、しばらくの間この城に滞在しませんか?」

「え、いいんすか?」

「ええ、ハウゼルもその方が喜ぶでしょうし」


とは言うものの、ホーネットにも多少の打算はある。
第一にその力である。
魔人を倒す事ができる横島の力は現在、
ケイブリス派と戦争中であるホーネットには非常に魅力的なのだ。
それだけではない。
同じ異世界の住人である横島ならば、あるいは
リトルプリンセスも説得に応じてくれるのではないか?
そんな期待も込められている。
最も、横島も自分の世界に帰りたいと言っていたのでこちらの方はあまり期待していない。


「ここまで優しくしてくれるなんて
 ……これはもう俺に対する愛の告白としか思えん!ホーネットさ~ん!!」


先程ハウゼルに燃やされたのに懲りずに飛び掛る横島。


「ちょ、ちょっと横島さん、やめて下さい!」

「ああ~やらかいな~いい匂いだな~たまらんなぁ~」


何故か成功してしまう。
ホーネットは身をよじりながら抵抗するがあまり効果がない。
横島はこの幸運を逃すまいと煩悩を全開にして抱きついている。
その抱きつきは何故か的確にホーネットのツボを刺激している。
ホーネットはそのくすぐったいような気持ちいいような曖昧な感覚に少しずつ飲まれていく。


「お、お願いです…横島さん……やめてください……」


徐々に抵抗の力が弱くなっていくホーネット。
目がとろんとし、だんだんと思考がぼやけてきたようだ。その様子が横島にもわかる。


(……いける!これならいける!
 このまま一気にホーネットさんとのひと夏のアバンチュールを!!」


「タ・ダ・オ・さ・ん?何をなさってるんですか?」


血の気が引く。
振り返ろうとしたが、ハウゼルに頭を掴まれてしまい無理だ。


「ハ、ハ、ハ、ハウゼルさん」

「ホーネット様には手を出さないようにといいましたよね?」

「い、いや、そうですけど……なんでハウゼルさんが怒るんですか?」

「…………………!!」



それからしばらく、見るも無残な制裁が横島に与えられる事になった。


「ふぅ……横島さんったら」


ホーネットが一人、顔をほんの少しだけ赤くして呟いた。











「それじゃあ、この城にいる魔人を横島さんに紹介しますね」

横島はハウゼルのお仕置きを食らい、結局その日はそのまま強制的に就寝となってしまった。
そして次の日、ホーネットに呼び出された横島
はこうしてホーネットの執務室へと足を運んでいた。


「魔人の人達っすか?」

「ええ、ここにいる皆が魔人です」


部屋に入るとそこにはすでに複数の人達がいた。
ホーネットとハウゼルとシルキィ、後二人見たこと無い人物がいる。

一人は赤い髪が奇麗な小柄な女の子。もう一人は男なのでどうでもよかった(横島主観)


「まず私からですね。魔人筆頭、ホーネットです。あらためてよろしくお願いします」

「ラ・ハウゼルです。忠夫さんがここに残ってくれて嬉しいですわ」

「魔人四天王、シルキィだ。………なんでホーネット様はこんな人間を……」


ぶつぶつと小言を言うシルキィではあったが面と向かって反対をする事はない。
流石に昨日で懲りたらしい。


「後はこの二人、横島さんとは初対面になると思います」

「……サテラだ」

「………………………メガラス」


サテラは不機嫌そうに、メガラスはひたすら無愛想に言う。
横島的はすぐにでもサテラを口説きたかったが、昨日のハウゼルの恐怖がそれを許さなかった。


「ホーネット、なんで人間がここにいるの?」


サテラは何も聞かされていなかったのかそんな事を言う。
メガラスにしても同様の疑問を持っている。


「この方は横島忠夫さんといいます」

「ど~もっす」

「横島さんをこの城の客人として迎える事にしました」


さらっと言うホーネットだったが二人がそれで納得するわけも無い。
人間が魔王城の客人になるなんて普通ではありえないからだ。


「ちょ、人間なんかを客人にってどういうことよ!?」

「…………………………」


事情を知らない二人の疑問はもっともである。それはホーネットも理解している。


「そうね、私も普通の人間だったらそんなことはしないわ」

「だったらなんでよ!?」

「横島さんは魔人を倒す事が出来るそうです」

「「なっ!!」」


サテラとメガラスの声が重なる。


「そ、そんな嘘をつかないで!人間に魔人を倒せるわけないじゃない!」

「………………二刀?」

「いえ、横島さんは霊力という力で魔人に傷を付けることができるそうです」

「忠夫さんはね、それでケッセルリンクを倒したのよ。凄かったんだから」

「いや~はっはっは」


ハウゼルが何故か嬉しそうに横島を誉める。
だが二人にはその前にハウゼルが言った事が信じられなかった。


「ケッセルリンクを!?そんな……嘘に決まってる!」

「いいえ、私はしっかりと見ました」

「…………………信じられん」

「そうだ、私は信じないぞ!そんなに言うんだったらサテラと戦ってみろ!」


サテラが興奮した様子で横島に近づいていく。
だが、メガラスがその前にすっと入りサテラを止める。


「メガラス?」

「……………俺と戦え」

「え………」


メガラスはサテラの代わりに戦うという。
この男、以外とフェミニストな所があるようである。


「そんなぁ~ホーネットさ~ん」


情けない顔をしてホーネットに助けを求める横島。
だが、ホーネットは期待とは違う答えを出す。


「……そういえば、実際に戦う所は見たこと無かったですね」

「……ホーネットさん?」

「というわけで横島さん、メガラスと戦っていただきますね」

「えぇ~~~!!」


ホーネットも一度、自分の目でも確認しておきたかったのだ。
実際に魔人と戦う横島を。本当に魔人を倒せるのかを。


「いざとなった時には止めますので、安心して戦って下さいね」

「忠夫さん!頑張ってくださいね、メガラスなんてもうコテンパンにしてやって下さい!」

「ハ、ハウゼルどうしたの?」


サテラはちょっと前に見たハウゼルとのギャップに戸惑ってしまう。
メガラスはちょっと悲しくなってしまった。








「なぜ俺はこんな所で戦わなければいけないんだ……」


ここは魔王城を出てすぐの平野。
結局は横島は断る事が出来ず、流されるままにメガラスと戦う事になっていた。
対峙しているメガラスは魔人というだけあってとても強そうに見える。
だがそれと同時にメガラスのすかした態度が
自分の天敵であった西条をかすかに連想させてむかむかしてくる。
だが、強そうである。できれば逃げたい。でもむかつく。でも逃げたい。
横島の気持ちは非常に不安定だった。



「頑張って~忠夫さん!」

(………ここでメガラスに殺されればそれで良しとしよう)

「ふん!人間がメガラスに勝てるもんかっ」


他の魔人達は少し離れた所で観戦することになった。
審判を努める事になったホーネットがメガラスと横島の間にいる。


「いいですか、二人とも味方同士ですのでくれぐれも本気で殺しあわないように」

「………………………」

「うぅ~帰りたい、煎餅布団が待っている俺の家に帰りたい」


この期に及んでぶちぶちと言う横島。
しかしホーネットは気にせずに試合の開始を告げる。


「それでは始めてください」


そう言ってその場を素早く離れるホーネット。


「………ハイ・スピード!」

「うおっ!!」


開始早々、いきなり己の持つ必殺技を容赦なく放つメガラス。
超音速で自らの体を敵にぶつけるこの技はその威力、速さともに尋常ではない。
横島は回避を試みたがその凄まじいスピードに対応しきれなかった。
直撃こそ避けれたものの、左腕はもろに食らってしまう。


「……いってえええぇ!!」

「…………………………」


左腕から血がとめどなく流れ出し、自分の命令を聞いてくれない。
横島の方に向きなおす無言のメガラスであったが実はかなり驚いている。
情けない、どこにでもいる普通の人間にしか見えなかった横島が
自分の必殺技を完璧ではないにしろ回避したのだ。


「ちくしょう……やりゃあいいんだろやりゃあ!」


ヤケクソ気味に叫んだ横島はハンズオブグローリィを作り出し、メガラスに飛び掛る。
メガラスとまではいかないが、それでも十二分に素早い動きで距離を詰めて斬りかかる。


「おらよっ!」


意外なスピードに少々驚いたメガラスだが、それでも自分には遠く及ばない。
余裕を持ったメガラスは大きく動かずギリギリの所で軽く横に動くだけで回避に成功する。

が、しかしそれは横島の狙い通りであった。


「……………………なっ!?体が……!」

「へっ、掛かりやがったな!」


横島はメガラスが回避した瞬間に隠し持っていた文珠を発動させていた。
その文珠は「縛」
メガラス文珠の力によって縛りつけられ、身動きが取れなくなってしまった。


「よくもやってくれたなこんちくしょう!!お礼はしっかりさせてもらうぜ!」

「くっ!!」


横島が右手を大きく振りかぶる。
通常ならば人間の攻撃など恐れるに足らないが
魔人を殺せると言ったホーネットのお墨付きに加え
自分の動きを完全に封じる横島を実際に目の当たりにしてメガラスは焦りを隠せなくなった。


「横島、バーニングファイヤーパンチ!!」


霊力が漏れ発光している拳が唸りをあげてメガラスへと突き刺さった。


「うおぉぉぉぉ!!」



メガラスが大きく横に吹っ飛んでいく。
流石に本気でやって(横島の場合は霊波刀)
殺してはいけないという事で素手を選んだ横島だった。
もちろん、やられた分の恨みを込めているためかなりの霊力が付与されていたが。
吹き飛ばされたメガラスは勢い良く大岩を破壊してそのまま岩ごと埋もれていった。



「………………横島さんの力は本物のようですね」

「あっさりとメガラスを…………」

「流石忠夫さん………素敵です」

「そんな、メガラスが一撃で!?最初で決めてればあいつを亡き者に出来たのに!」



横島の戦いを目の当たりにした皆は驚きを隠せない。
ちなみに最後の一言はシルキィである。


(メガラスが油断していたのもありましたがそれを差し引いてもあの横島さんの力はすごい)


ホーネットは横島の予想以上の力を素直に受け止める。
そして、自分の判断が間違っていなかった事に安堵する。


「サテラ、これで横島さんを客人として迎える事に納得できましたね?」

「……う、うん。あいつは………強い」


サテラはあっけに取られた様子のままこくりっ、と頷いた。
そんなサテラを見てホーネットは微笑んだ。


(これでサテラも人間を見直して、人間嫌いも少しは直ってくれるといいんだけど)


ちなみにサテラ以上に人間が嫌いなシルキィについては全く考えていない。


「……っんぎゃあ、いってええ!!」


左腕に強い痛みを感じた横島がその場にしゃがみこんでしまう。
手の感覚がかなり鈍くなっており、思いのほか重症であった。


「忠夫さん!大丈夫ですか、すぐに治療をっ」

「さぁ、サテラ。横島さんの所に行きますよ」

「う、うん、わかった」

「……あいつの力は役に立つ。
 しかしそれではホーネット様に身の危険が…私は一体どうすればいいのか」




横島の力を目の当たりにした魔人達は

皆、それぞれの思いを持ちながらも横島を受け入れる事を認める事にするのであった。



なお、メガラスは岩に埋もれたまましばらく動き出す事は無かった事を追記しておく。



来訪者 横島忠夫 第5、5話





「キーやん!ビッグニュースやで!……ってなにしてるんや?」


ここは第一話でも登場した神界のとある場所。
大急ぎでやってきたサっちゃんは
モニターのようなものを熱心に見ていたキーやんに話しかけた。


「いえ、ちょっと横島君の様子を見ていたんですよ」

「なんや、また見てたんか。キーやんもすっかりお気に入りのようやな」

「サっちゃんこそ、暇さえあれば見ているでしょうが。お互い様ですよ」


苦笑しながら言うキーやんの言葉に二やつきながら同意するサっちゃん。


「違いないわ。娯楽の少ないわしらにはたまらんな彼は」

「最初に横島君をあちらの世界に送ってしまった時は
 申し訳無い事をしてしまったと思ったんですけど…」

「よこっちもなんだかんだで楽しそうにやっとるしなあ。
 あれじゃこっちの罪の意識も薄れるっちゅうもんやで」


いつの間にかサっちゃんは横島の事をよこっちと呼ぶようになっていた。
それだけ彼の事が気に入っているのだ。


「死と隣合わせの危険な世界ですけどよく考えたらこっちにいても同じ様なものですしね」

「自分所の事務所でしょっちゅう死に掛けてたって聞いてるで」

「その通りです。更にGSと言う職業を考えれば
 彼の死亡率は向こうの世界の一般人よりはるかに高かったでしょう」

「なんや、わしらはむしろよこっちにとったらええ事したんとちゃうか?」

「う~ん、なんの説明も無く無理やり送った事を考えればそうとも言い切れませんが……」

「まあまあ、結果オーライっちゅうことでええやん。
 それより今のよこっちはどんな感じなん?」


なんとも無責任なサっちゃんの言い草に
少々呆れてしまったキーやんだがすぐに気を取り直す。


「…魔王城に住むようになってから2週間程経ちましたけどもうすっかり馴染んでますね」

「相変わらず人外には好かれてるんやなぁ」

「報告では聞いていましたが実際に見てみると
 面白いぐらい抵抗なく受け入れられますね彼は」

「まあこっちの世界で幽霊やら魔族となかようしてたしな」

「ルシオラに至っては恋愛にまで発展していましたしね…」

「……そうやな」


そう言って一息ついてからモニターに目を向ける二人。
モニターには歩きながら話し合っている横島とサテラが映っている。
二人の表情は楽しそうで中々盛り上がっているようだ。



「サテラとかゆうたっけこの子?」

「はい。彼女にしても最初は彼を毛嫌いしていたんですけど…」

「いまやこのなつき様やもんな。大したもんやでよこっちは」

「そうですね。まだ会って2週間しか経っていないのに
 もう何年も一緒にいる仲の良い兄弟のようですね」

「兄弟って恋人やないんか?」

「サテラさんには恋愛とかそういった感情はまだわからないようですね。
 単純に横島君といるのが楽しいんだと思います」

「あ~言われて見ればよこっちにしても恋愛の対象には見てへんようやな」


モニターに映っている横島は確かにサテラに対して煩悩を持っているようには見えなかった。
自分の話に興奮して、ときおりじゃれついてくるサテラにも苦笑しながら冷静に対処している。


「あんだけ可愛いサテラちゃんに飛び掛らんとは珍しいもんや」

「サテラさんの精神年齢が低すぎたので横島君の射程範囲には入らなかったんだと思います」

「こっちの世界のシロちゃんやタマモちゃんみたいなもんか」


横島達はそのまま横島の部屋に入ったがそこにはハウゼルが待ち構えていた。
ハウゼルはにこやかに横島を迎えようとしたが隣にいたサテラを見つけ青筋を立ててしまう。
勢い良くサテラに襲い掛かってしまうハウゼル。
だが横島が反射的にサテラをかばってしまう。
当然の如く怒り狂うハウゼル。標的を横島に変え更に暴れまわる。


「…………………」

「うはははは!相変わらずみたいやなハウゼルのねーちゃんは」

「そ、そのようですね。しかし彼女にしても普段はむしろ大人しい性格らしいのですが」

「そんなもんよこっちに惚れる前の話やろ。
 女は変わるっていうしこれが彼女の地なんやないか?」

「い、いやこれは横島君が相手だからだと思いますが……」

「せやったらねーちゃんをここまで壊れるぐらいに
 惚れさせたよこっちは凄いって事でええやん」

「はぁ……」



モニターにはハウゼルのファイヤーレーザーによって燃え上がる横島が映っている。



「魔王城にいる魔人は後3人やったっけ?」

「ええ、ホーネット、シルキィ、メガラスの三人です」

「ホーネットちゃんはなんか考えてるようやな」

「彼女は魔王であるリトルプリンセスを横島君に説得させようと考えてるようですね」

「魔王として覚醒して欲しいってか?」

「はい」

「アホかい、よこっちがそんな役目引き受けるって本気で思ってるんか?」

「彼女はリトルプリンセスが魔王として覚醒するのが
 本人にとっても一番良いと考えてるようです。罪悪感は無いでしょう」

「はっ!これやから温室育ちのお嬢様は困るで。」

「本人の気持ちが一番大切なのでしょうけど
 ホーネットさんは魔王というものに囚われすぎてそこまで気が回らないんですよ」

「そんなもんかいな。わいにはようわからんわ」

「まあそう言わないであげましょう。彼女はまだまだ変われますよ」

「よこっちに接するうちに、やな」

「そういうことです」

「それやったらこの、シルキィのねえちゃんにも言えることやな」


サっちゃんはモニターに映るシルキィを見ながら言う。
先程までの映像はあまりにも酷かったためいつの間にか切り替わっていたようだ。


「彼女だけはまだ横島君に気を許してないんですよね」

「まあホーネットちゃん狙ってるのが見え見えのよこっちにそう気を許すとは思えんけどな」

「ですが……それも時間の問題じゃないでしょうか?
 なんだかんだで彼女も横島君の力だけは認めるようにはなってますし」

「ぷっ………しょっちゅう襲い掛かってくるメガラスを返り討ちするのを見てやけどな」


我慢しきれなくなったのかそのまま笑い転げるサっちゃん。


「あれはもはや魔王城の名物に近い物になっていますね」


そういってキーやんはリモコンのようなものを操作しモニターに向ける。
瞬時に画面が切り替わった。どうやら録画していた物を再生するらしい。



廊下を歩く横島の背後から襲いかかろうとするメガラス。
この時は一緒に歩いていたハウゼルに燃やされた。


横島の寝込みを襲おうとしたメガラス。
この時は夜這いに来たのかと勘違いした横島の怒りの一撃により吹き飛んでいった。


サテラと談笑中の横島に襲い掛かろうとするメガラス。
邪魔をするなと怒ったサテラのムチにより捕縛され横島にぶん殴られる。


他にも多数の映像が流されていく。
サっちゃんはもう限界近くまで笑い続けている。



「すっかり彼もギャグキャラになってしまいましたね。これも横島君の力でしょうか」

「ひぃ~ひぃ~無言で襲い掛かって帰り討ちにあうメガラスは反則やで。おもろすぎるわ」

「私はむしろ悲惨すぎて泣けてくるのですが……」

「そこがまたおもろいんやんけ」

「まあ否定はしませんが………」


それからしばらくの間、よく見たら
「メガラス傑作集(笑)」と表示されている映像を見続ける二人。



「……ぷっ…………ところで最初に言ってたビッグニュースとはなんだったんですか?」

「…………おお!!忘れとったで!!!」


急に我に帰りキーやんの方を向くサっちゃん。


「キーやん!ビッグニュースやで!」

「それは最初に聞きました」

「話の腰折んなやキーやん。とにかくビッグニュースなんや!
 ええか、わいが向こうの創造神と交渉してたのは知っとるな?」

「もちろんです。少しでも彼の危険を無くすようにと私もしてるんですから」

「キーやんが神界の会議で無理やったさっきの交渉の時に進展があったんや!
 なんとこっちの世界から、よこっちのためにもう一人応援を送れるようになったんや!」

「なっ!それは本当ですか!?」


驚きの余り手に持っていたリモコンを握りつぶしてしまう。
そのせいかモニターはメガラスの大往生シーンで固まってしまっている。
うっすらと笑いながら目を閉じ
走馬灯を感じているかの様な安らかな表情が印象的ではあるが今は関係無い。


「もちろんや、創造神からしっかり返事もらっといたで!
 しかも今度は向こうの世界の事を説明しても大丈夫や!」

「GJですサっちゃん!それにしてもよくOKをもらいましたね」

「いや~その方がおもろうなるでって言ったらあっさり了承したわあのクジラ。
 あの様やったらもっと交渉したらもう2,3人そのうち送れるようになるかもしらんで」

「しかし今回は一人ですか……誰にするか迷いますね」

「ん~そこやねん問題はまず第一によこっちと一緒に戦えるぐらい強くないとあかん」

「彼の力はすでに人間の枠を超えていましたし…必然的に神族か魔族になりますね」

「それによこっちの知らん奴を送るのもどうかと思うしな。
 やっぱりそれなりに親交のある奴やないとあかんやろ」

「でしたら小竜姫はどうでしょうか?彼女なら横島君とも親しいですよ」

「あ~ワルキューレなんかもええんとちゃうか?」

「やはりぱっと思いつくのはこの二人になりますか」

「まあそう焦ったらあかんでキーやん。他にも候補がいろいろおると思うで」

「そうですね……ゆっくりと考えますか」

「手遅れにならん内にやけどな。あ~なんか楽しゅうなってきたな」


あ~でもない、こ~でもないと言った議論が
神界のとある場所からしばらくの間、止むことはなかった。




来訪者 横島忠夫 第6話


「へぇ~ハウゼルさんって双子の姉がいるのか」

「そうだ」


横島とサテラは二人でだらけながらくっちゃべっている。
横島が魔王城に来ておよそ3週間が経った。
気がつけば横島はすっかり魔人連中とも打ち解けており中々楽しく日々を過ごしていた。
最初は反発していたサテラも今ではすっかり打ち解けて気軽に喋る仲になっていた。
サテラはほぼ毎日と言っていいぐらいこうして横島の部屋に来ている。


「でもさぁ、まだ見たことないんだけど俺」

「……サイゼルは私達の敵のケイブリス側についている」

「はぁ?なんでハウゼルさんと敵対してるんだ?」

「ハウゼルとサイゼルはあんまり仲が良くないんだ。
 と言ってもサイゼルが一方的に反発してるだけだけど、多分そのせいだと思う」

「…姉妹喧嘩で戦争かよ。それはそうとそのサイゼルちゃんは美人なのか?」

「……ヨコシマ、お前ハウゼルに手を出しておいてサイゼルにも手を出す気?
 ハウゼルに燃やされる羽目になってもサテラは助けないよ」


思わず噴出してしまう横島。
既に何度もハウゼルの手によって燃やされている横島にとってその脅しは非常に効果的だった。


「うぅ……っていうかハウゼルさんに手は出しとらん!」

「なんで?」


きょとんとした顔でサテラが質問する。
妙に子供っぽい表情をしておりそれがサテラの容姿に合いとても可愛らしく映った。


「いやなんでってお前………確かにハウゼルさんはええね~ちゃんやけど
 その、なんで俺なんかに惚れてるのかなって思って……」


魔王城に住む事になって以来、ハウゼルは横島に対しての好意を全く隠さず
積極的にアプローチもしているので割と鈍い横島にも彼女の気持ちがはっきりと伝わっていた。
セクハラしまくりのわりに意外と初心な横島は彼女のアプローチにむしろ戸惑っていた。
ここまで露骨な好意をぶつけられた事がほとんど無いからそれも仕方が無いかもしれないが。


「俺なんかってそんなに自分を低く見なくても大丈夫だぞヨコシマ」

「え?」

「ヨコシマは魔人(主にメガラス)に勝てるぐらい強いし
 話をしてても面白い。顔だってそんなに悪くない。
 サテラは結構ヨコシマの事好きだぞ。だから俺なんかって言わなくてもいいぞ」

「あ~~ぅ~~」


横島が顔を赤くしてしまう。
サテラの言葉に深い意味が無いのは分かってはいるが
それでも面と向かって好きと言われるのは照れてしまう。


「その、なんだサテラ。……ありがとな」

「ふふふ、ヨコシマ照れてるな。結構かわい…い…」


微笑みながら横島と喋っていたサテラの表情が突如凍りつく。
気がつけば横島の部屋の扉が空いており入り口にはハウゼルが。


「サテラが忠夫さんを好きってサテラが忠夫さんを好きってサテラが忠夫さんを好きって……」

「あわわわわわ、ヨ、ヨコシマ馬鹿!何時まで照れてるんだ!」

「え………(顔が凍りつく)」

「は、はやくハウゼルをなんとかしろヨコシマ!」

「……さっきサテラは俺が燃やされる羽目になっても助けないって言ったよな」

「!!い、いや、それは言葉のあやで!」


横島が親指をぐっと立てる。もちろん、良い笑顔もセットだ。


「Good Luck!生きていたらまた会おうサテラ(歯が輝く」

「覚えとくんだぞヨコシマ~~~!!」


言いながら全速力でその場から逃げ出すサテラ。


「逃がしません!サテラ、お仕置きです!!」


美しい羽で空を飛び、勢い良くサテラを追いかけるハウゼル。


「またですか横島さん」

「あ、ホーネットさん……とシルキィさん」

「サテラも懲りないな」

「そうねぇ。最近ようやくシルキィが慣れてきたと思ったら今度はサテラですか」

「う……」


嫉妬に身を焦がしたハウゼルが暴走するのはもはや日常茶飯事になっていた。


「しっかしやけに平和っすねえ」


横島が独り言のように言う。
横島が魔王城に来てからのおよそ3週間。
魔王城では全くイベントらしきものが無かったのである。
しいて言えば上のハウゼルの嫉妬とメガラスの玉砕(笑)
があるがそれも日常と化しイベントとは言い難くなっている。


「確かここって戦争中じゃなかったんですかホーネットさん?」

「そうですけど、何故かここの所ケイブリス軍からの攻撃が止んでるんですよ」

「はぁ」


横島は知らなかった。
ケイブリス軍の攻撃が止んでいる理由がケッセルリンクのご乱心のせいだという事に。
知らない内に横島はホーネット派にプラスになる行動を取っていたのだ。


「まあ攻撃されないに越した事は無いからそれはいいんだ。
 それより横島、お前メガラスを知らないか?」

「メガラス?いや、今日はまだ見てないっすけど」

「そうですか……サテラもどこかに行ってしまいましたし困りましたね」

「ん、なんか用事でもあるんすかホーネットさん?」

「はい、実は3人に頼みたい事が出来まして」

「なんすか」

「リトルプリンセス様の居場所がわかったんだ!」


シルキィが声を張り上げる。
台詞を奪われたホーネットがちょっぴり青筋を立てているがそこは無視しておく。


「え、リトルプリンセス様ってホーネットさん達が探してたっていうあの?」

「そうです。情報によるとリトルプリンセス様は人間領のリーザスにいるらしいのです。
 そこでサテラとメガラス、それに横島さんの3人で
 リトルプリンセス様の護衛について貰おうと思っています」


本当は真の魔王として目覚めてもらうよう
説得をと考えているホーネットだが今は口にしなかった。


「サテラとメガラスはともかく俺もっすか?俺会った事無いんですけど…」

「リトルプリンセス様は元々異世界の人間です。
 同じ異世界の人間である横島さんが入れば心も落ち着くと思いましてね」

「あ~確か動揺してたから逃げ出したんですよね?」

「はい」


これは真実とは言い難かった。
正確には動揺して逃げたのではなく魔王になる事を拒否して逃げたのだ。
だがホーネットはあくまでリトルプリンセスが落ち着いてくれれば
絶対に魔王になってくれると信じていた。
そのため横島にはそういったニュアンスで教えていたのだ。


「ん~そういうことなら了解っす。」

「なんだ、あっさりOKを出したな。お前の事だから護衛と聞いて逃げ出すと思ったが」


辛辣に言うシルキィ。だが日頃の横島のへたれっぷりを見ていれば妥当な発言である。


「いや~まあ護衛っつったってサテラとメガラスもいるんでしょ?
 だったら俺はのんびり応援に徹してても大丈夫っしょ」


どうやら自分が護衛する気は無いようだ。
シルキィとホーネットはそんな横島を見て呆れたように溜め息をついた。












魔王城にリトルプリンセス発見の情報が届く数日前。
ここ、リーザス城では大変な事件が起きていた。
突如、魔物部隊がリーザス城に対して攻撃を仕掛けてきたのである。
その為、リーザス軍は熾烈な迎撃戦を繰り広げざる得ない羽目に陥っていたのである。


「だああ!魔物の数が多すぎるぞ!」


目の前の魔物を一撃に死に追いやりながらもリーザス王ランスは愚痴を吐いていた。
ランス率いる緑軍は現在、城の防衛に専念していた。
だが緑軍は先日、自由都市ジオを制圧して帰って来たばかりでかなり疲労の色が残っていた。
ランス自身も体調は万全とは言えなかったがそれぐらいはどこ吹く風か
自ら軍の先頭に立って驚異的な戦果を挙げていた。


「あ~うっとおしい!……ん?」


そのとき、上空から突然氷の矢が襲ってきた。
ランスは反射的にかわすことに成功したが回りの兵達はかなりの犠牲が出る。


「な、なんだぁ!?」

「あんたがリーザスの王ね」


上空には美しい羽を持った天使がいた。
また彼女の背後にも多数の天使達がいた。


「いきなり攻撃してくるとはいくら可愛い女の子でも許さんぞ!」

「ふふん。あたしは魔人サイゼル。今日はあんた達に警告に来たのよ。
 リトルプリンセスを隠してないでさっさとあたし達に渡しなさい」

「…リトルプリンセス?」

「そうよ!この国いるのはわかってるんだから早い所渡しなさい。
 そうすれば命だけは助けてあげるわ。あなただってまだ死にたくないでしょ?」

「…むかむかむか、リトルプリンだかプリンアラモードだが知らん俺様はそんなもんは知らん!
 お前は生意気だから俺様が直々にお仕置きしてやる!さっさと降りてきやがれ!」

「ふ~ん。交渉は決裂ね。もういいわ、じゃあ死になさい」


それだけ言うと一斉に彼女の後ろにいた天使こと偽エンジェルナイトがリーザス軍に襲い掛かった。
ランスは交戦できているが他の緑軍は上空からの攻撃に全くと言っていいほど対応できず
どんどんと戦死者を増やしていった。


「こら、お前達!ぼんぼん死にすぎだ!もう少し遠慮しろ!」

「キング…帰ってきてすぐにこの戦闘ですから無理もありません」


一緒に迎撃していた赤軍の将リックがそういう。
そんなことはランスも十二分にわかってはいたが
それでも言いたくなってしまうぐらいのやられ方だった。


「くっ……ちくしょう!!このままだとジリ貧だぞ、リックなんとかしろ!」

「ほ~ほっほっほ!リーザス王、魔人に逆らった事をあの世で後悔しなさい」


勝利を確信しているかのような笑いをするサイゼル。
だが、勝利の女神は気まぐれだった。
突如、戦闘を行われていた場所に光輝く隕石のような物が落下してきたのだ。






あまりの衝撃に全ての戦闘行為が止まってしまう。


「なに!?なんなのよ一体!?」

「なんだありゃあ!?」


落下の際の土煙が徐々に引いてくる。落ちてきた「人」が徐々に明らかになってくる。
しかし、はっきりと見える前にその中心点から声が聞こえてきた。


「ここが最高指導者様が言っていた世界か…なんとも珍妙な格好をした輩が多いのう」


そういって「彼女」は片手を横なぎに振るった。
その瞬間、周りの土煙が吹き飛び
更には周りにいた偽エンジェルナイトをも吹き飛ばし消滅させてしまう。


「な!?い、一撃であの天使を!?」


思わずリックが叫んでしまう。そしてその姿を見て固まってしまう。
ランスも同じく固まってしまった。


「私の偽エンジェルナイトを一撃でなんて……あんた一体何者よ!!」


サイゼルはしっかりと彼女を視認した上で叫んだ。


「わらわは







 織姫!!」




美しい十二単をその身に纏い、
あまりにも豊満な大胸筋(胸にあらず)を見せつけながら彼女はそう言い放った。











「あ~~はっはっは!!これや、わいが求めてたんはこれやねん!!」


サっちゃんはのた打ち回りながら爆笑している。


「ほんっっっとうに申し訳ありません横島君!!」


キーやんは画面に向かって土下座をしていた。
こうしてGS世界からの横島の援護者は決まってしまった。





theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

来訪者 横島忠夫 第7話


「ふむ……見たところどうやらここは戦場のようじゃな」


リーザス軍の死体で埋まっている周りを見渡して織姫はそう判断する。
突如現れた織姫は一瞬にしてその場の空気を支配していた。


「なんだあのバケモノは、魔人の援軍か?」

「しかしあちらの天使を倒していましたしそうとは言えないのでは?」


しばしの間固まっていたランスとリックはようやく立ち直り織姫を見定めようとしていた。
ランスにしてもリックにしても正体不明の織姫に対してどう対応すればいいのかわからず
簡単に身動きが取れない状況になっていた。
腕の一振りで偽エンジェルナイトを消滅させる、それこそ魔人のような力を持つ織姫
を迂闊な対応で敵に回すのは不味いと無意識の内に判断したからである。


「人間対魔族、といった所かのう。わらわとしてはどうでもいいが……」


織姫の目は凛々と輝いていた。例えるなら獲物を見つけた肉食獣。
その視線は───────────ランスとリックに向けられていた。


「あれほど良い男を見殺しにするのはわらわの趣味では無いのう」


そう言って舌なめずりをする。
リックの顔は兜によって完全に隠れているのだがそこは圧倒的な力を持つ天上神。
何故かはわからないがリックが美形であると見抜いていた。


(それに確かこの世界のキーになる者達だったはずじゃ。
 この者達の側につけばいずれダーリンにも会えるはずじゃ)


一応自分がここに来た理由を忘れてはいなかったようだ。
ちなみにダーリンとは横島のことである。
以前横島が七夕の日に「いい女と運命の出会いがしたい」と短冊一杯に書いた願いを受けて
舞い降りた事がありそこで横島とラブラブな関係になっていたのである(本人主観)
最後は恋人である彦星に対してもう浮気はしないと誓った織姫であったがそこはそれ。
別世界だからいいや等と自己弁護をしている。

得体の知れぬ恐怖に狩られているランスとリックを尻目にサイゼルは一人怒り狂っていた。


「よくもあたしの部下達を……食らえ氷雪吹雪!!」


サイゼルの魔法が織姫に向かって放たれる。
不意打ち気味に放たれた魔法が織姫に直撃するが食らっている本人は平然としたまま


「ふんっ!!」


怒声とも言えるぐらいの大声と共に出した気合で魔法を消し飛ばす。


「な、なんですって!あたしの魔法があんなにも簡単に……」

「その程度の攻撃でわらわに傷をつけることなどできぬわ」


言うと同時に織姫の体がサイゼルのいる上空へと飛び跳ねる。
軽やかに弾むその体は肉団子の如し。
ゴムマリのように飛び跳ね一瞬でサイゼルの背後に回るとそのまま首をホールドした。


「とりあえずお主は今回は引け。わらわとしても無益な殺生は避けたいのじゃ」


完全に上から見下したその発言はサイゼルのプライドを面白いぐらいに刺激していた。


「な、な、な……人間の分際で舐めた口を聞くな!!く…このっ…外れない…」


魔人の力をフルに使い首に巻きついている腕を外そうとするがビクともしない。
それ所か更に力を込められ首がどんどんと絞まっていってしまう。


「ぐ……かはぁ……な、なんで……人間のくせにあたしが……」


自分より格下の筈の人間相手に苦しめられサイゼルは完全にパニックに陥っていた。
今まで味わった事の無い苦しさを味わい徐々に意識が薄れていく。



「こら、そこの筋肉ダルマ!カワイイ子を虐める奴は俺様が許さん!」

「………え?」



しばし無視されていたランスが織姫の方に向かって罵声を浴びせていた。


「この者はそなた達に危害を加えているように見えたが違ったのか?」

「うるさい!例え1分前まで敵だったとしても俺様はカワイイ女の子の味方なのだ!」


ランスから見れば織姫は女の子を虐めているむさい人間にすぎない。
自軍のピンチを救ったとか魔人を追い詰めている等様々あるつっこみ所を全て無視している。


「むう……自分の信念に従う一本筋の通った男よのう。あい分かった、この者を解放しよう」


サイゼルをあっさりと解放した織姫であるが
視線はランスの方を向いておりあまつさえ頬を赤らめているではないか。
ある意味男らしいランスの姿はしっかりと一人の男女(おとめ)乙女の心を掴んでいた。


「げほっ!げほっ!……くっ、覚えてなさい!」


咳き込んでいたサイゼルも息が整うと同時のその場から飛び去った。
慣れない痛みで混乱してしまいサイゼルの頭には既に戦いを続けるという選択肢はなかったのだ。

サイゼルが飛び去った方を見ていた織姫だったが
フッと鼻で笑いゆっくりとランス達の方へと向きを変えた。
その余裕たっぷりな仕草はダンディズムに満ち溢れているがそれには誰も触れなかった。


「くそ!貴様ら、あれはバケモンだぞ、気合入れろ!」


ランス達は残った兵達の体制を整え対織姫の布陣を引いていた。


「待つのじゃ、わらわはお主達と戦う気は……」


「バイラウェイ!」


衝撃で音とともに砂煙が大きく舞い上がる。
織姫の背後に回っていたリックが己の必殺技であるバイラウェイを放っていた。
己の騎士道から外れている卑怯とも言える不意打ちではあったが
リック自身織姫に脅威(いろんな意味で)を感じていた為殲滅を優先したのである


「……少し、痛かったぞよ」


砂煙が晴れていくとそこには赤く光る魔法剣バイ・ロードを素手で掴んでいる織姫の姿があった。


「何!……うわぁ!」


織姫は手に持った剣をそのまま引き寄せリックを自分の胸元に引き寄せた。
リックの顔が織姫の胸に当たったが
むにゅっとかパフッ等の柔らかそうな擬音は全く発生しなかった。


「むふふふ……やはりそちはいい男よのう」

「く……なんという力。全く……外れん!」

「しかしそちの顔を隠すこの兜は……少々邪魔じゃのう」

「え………あっ!」


リックのつぶやきは既に織姫の手によって兜を引っぺがされてからだった。



「うわああああああぁああああ!!た、助けて!怖いよう!!誰か、誰かあああ!」

「おっとと、どうしたのじゃ急に」

「離して!離してええ!!怖いよおおお!」


リックは兜の下に隠れていた端整な顔を見るも無残な泣き顔に変えて悲鳴を上げ続ける。
その姿を遠目から見ていたランスが焦りだした。


「まずい!リックの兜が取れやがった!」

「ランス王!」


リックに変わりにランスの隣にいた青の軍の将軍コルドバがたまらず声をかける。
赤の将軍リックが兜を外すとモンスター達に対して極度に怯えてしまうことを知っていた為だ。
織姫が当然の様にモンスターと同類扱いになっているのは気にしてはいけない。


「コルドバか。見ての通りリックはもう役立たずだ。俺様の軍とお前の軍で総攻撃をかけるぞ!」

「承知しました!全軍突撃!」


コルドバの号令と共に兵士達が一斉に織姫に襲い掛かった。
が、かなりの距離があった為織姫にたどりつくまで多少の時間がかかってしまう。
織姫は兵士達が自分に向かって襲い掛かってきているのを全く気にせず
泣き続けているリックをあやしていた(本人主観)


「お~ほれほれ泣くでない。わらわがついておる。何も恐れることはないぞよ?」

「うわあ~ん!離してよ~~!!」

「……ごくりっ……泣き顔が非常にこう……そそるのう……」

「ひぃぃ!!」


生唾を飲み真っ赤な顔でハァハァしている織姫にリックの恐怖心が更に煽られる。
織姫としてもこのようなチャンスを逃す気は毛頭なく理性等という物はとっくの昔に切れていた。


「やはりまずは……せ、接吻からじゃな……」

「いやぁぁぁぁ!!!やめて!お願い!許して!」

「ん~~~~」


目を閉じて唇を突き出しゆっくりと、しかし確実にリックの唇へと進軍を進める織姫。
いやいやと首を振り必死に逃れようとしていたリックだったが
片手で首を固定されてしまい、いよいよ抵抗も出来なくなってしまった。



「リーーーーック!!」




ぶっちゅううううう




ランスの悲痛な叫びはあまりにも大きな接吻の音でかき消されてしまった。
どこからともなくズキュウウゥンと効果音が聞こえたような気がしたが今はそれ所ではない。


「んふ、んふ………べちゃ、ぴちゃ…」

「…………………………」

「うわぁ…………」


誰が言っただろうか、あるいは誰もが言ったのか。
目の前で繰り広げられている接吻はむしろ捕食と言った方が近い光景であった。
始めの内は手足をバタつかして抵抗していたリックも今では力なくされるがままであった。
誰もが動けなかった。あまりにも無慈悲なその光景を見ていることしかできなかった。
ランスでさえも完全に固まっていた。




「…………ぷはぁ~!……ふふ、中々よかったぞよ」



どれほどの時間が立ったかはわからないがようやく満足した織姫はリックから口を離した。
膝から崩れ落ちぴくりとも動かないリックは金髪も白くなっておりもう駄目そうだった。


「………あ、リ、リック!!大丈夫か!」


もちろん大丈夫ではないリックは主君であるランスの問いかけにも反応しなかった。


「リック将軍の敵討ちだ!全軍突撃!!」


コルドバは恐怖を振り払うかのごとく叫んだ。
それに従い兵士達も必死の形相で織姫に襲い掛かった。ほぼ皆半泣きである。


「む、少々遊びが過ぎたようじゃな」


あくまでも慌てない織姫。兵士には目もくれずランスへと熱視線を送る。


「わらわに策あり、じゃな。ここは一旦引くが……待ってってねマイダーリン(はーと)」


視線が合ってしまい硬直していたランスに
ウインクを決め織姫はその場から飛び立ち離脱していった。
この場合のダーリンとは横島ではなくランスである。


「ぐわぁぁぁぁ!!筋肉ダルマにウインクされた!鳥肌があぁ!」

「ランス王、落ち着いて下され!」

「うわぁあぁぁ、気持ちわりぃぃぃ!」

「いた、いた、ランス王暴れんで下さい」

のた打ち回るランスをコルドバが必死に抑えようとするが効果は泣く時間だけが過ぎていった。


一般兵士 多数死亡

リック  多分死亡

ランス  鳥肌多数

コルドバ 軽症


リーザス軍の今回の対魔物戦はいろんな意味で深刻な被害をもたらしてしまい
今後の軍事活動にも大きな影響を及ぼすのであった。



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