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愛すべきは幼なじみ? 第1話


ん…………なんか……いい気持ちだな………

なんだろこれ………やわらかくてずっと触ってたいな……


「あ……公君ったら朝から激し……あんっ」


…………なんか目が覚めてきた………………はぁ、またか………

僕は勢いよく布団から飛び出しなぜか横にいる幼馴染の女の子に向かって叫ぶ。


「詩織!何度言ったらわかるんだよ。朝、ベットに潜り込むのはやめてって言ってるだろ!」

「あら、公君。朝に潜り込んだんじゃないわよ」


詩織がベットからゆっくりと起き上がり僕に色気たっぷりの視線を向けて喋る。


「昨日の夜からずっとだもん……」

「余計に悪いわ!!」

「ああ……公君って相変わらずいい匂い………」


僕の声を無視していきなり抱きついて匂いをかぐ電波幼馴染。


「人の話を聞けええええ!!」


どうやら今日も僕の幼馴染は絶好調のようである。








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愛すべきは幼なじみ?


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「いい加減にしてよ、今度やったら本当に怒るからね」

「うん、ごめんね公君」


リビングで朝食をとりながら隣でにこにこして僕を見ている詩織に警告する。

その顔に反省の色がまったく見られないのが非常に気になるがとりあえず朝食を優先する。


「ねえ公君、いよいよ今日から高校生だね!」

「……ああ、そうだね」


食事中なのにお構いなしにどんどん喋りかけてくる。


「私……公君と一緒のクラスになりたいな~、公君だってそうでしょ?」

「……いや別に」


なぜか椅子を近づけ頬をなでなでする詩織。目がなんかうっとりしてる。


「もう、公君ったら素直じゃないんだから……でもそこが可愛いのよね~」

「いや、本音なんだけど…」

「ふふ、もう食べちゃいたいぐらい可愛いわ………」


目が怖いです、詩織さん。


「うふふ、うふふふ………」

「……………………………」



しばらく僕は彼女のされるがままになっていた。




「公!いつまで、ご飯食べてるんだい。始業式に遅刻するよ!」


母の声が響く。我に返り時計を見るとすでに8時5分を指していた。

ここから僕の行くことになるきらめき高校までは徒歩で20分ぐらいはかかる。


「もう、詩織のせいでご飯食べる時間なくなっちゃったよ!」


テーブルにはまだ6割ぐらい残っている朝食があるがもう諦めよう。


「詩織ちゃん!公の事頼んだよ。」

「もちろんですわ、お義母様」


満面の笑みで母に返事する詩織。

何故か母の中ではいつからか僕と詩織は恋人同士ということになっているらしい。

僕はそんな事実は一切無いと訴えたがあえなく却下された。

母公認となってから詩織は、ほぼ毎日僕の部屋に忍び込み今朝のような事を繰り返してきた。

僕としても詩織と寝る事は嫌いではないというかむしろ気持ちいいし好きなのだが

一度許してしまうとそのままイク所までイッちゃいそうなので表向きは頑なに拒んでいる。

僕は詩織と一生を共にする気などまったく無い。もっとまともな子と付き合いたいのだ。


「さ、公君行くわよ(はーと)」


僕より3センチ背が高い詩織は僕の腕を抱いて玄関へと向かった。

…………まあ嫌いじゃないんだけどね(腕に伝わる感触を味わいながら








「ねえ、詩織…」

「なあに、公君?」


学校へと歩いている僕と詩織だが気になる事があるので言う。


「腕……離してくれない?」

「だ~め。公君はずっと私と腕を組むの。」


もうすぐ学校だというのに腕を離してくれないのである。

今後の学園生活を考えるとこんな状態で学校に向かうのはやめた方がいいだろう。


「もう、いい加減離してよ!」

「ぶぅ~わかったわよ~」


語気を強めて言うと本当にしぶしぶといった感じで腕を離す詩織。

ふぅ……なんとか誰かに見られる前に離してくれたか。


「どうして腕組んじゃだめなの~?」

「どうしてって…恋人同士って思われたら恥ずかしいよ……」


そう、僕と詩織は恋人同士じゃないのだ。それなのにいきなりあんな所見られたら

恋人同士じゃないって言う方が無理がある。

そんなことになったら彼女が作れなくなるじゃないか!!


「だったら問題ないじゃない、私達恋人同士なんだから(はーと)」


そういって再び腕を取る詩織。


「いつから僕と詩織が恋人同士になったんだよ。」


強引に詩織の腕から逃れ言い返す。


「決まってるじゃない。生まれた時からよ。」


もう一度腕を取り返す詩織。なんだかすっごい笑顔。


「僕は生まれてからずっと一人身のつもり……なんだけどね!」


かなり強く持たれている腕を思い切り力を込めて取り戻した。


「照れ屋なんだから公君は。でもあんまり意地悪言ってると………おしおきしちゃうわよ(はーと)」

「………………………………」



勝負有り 藤崎詩織 1R45秒 貫録勝ちです!


  
僕の頭の中にそんな言葉が浮かんできた。









「詩織~僕のクラス何処かわかる~?」

「ん~ここからじゃよくわからないわね。ちょっと見てくるから待ってて公君」


ようやく学校にたどり着いた僕らはまずクラス分けが掲示されている場所に向かった。

道中時間が少しかかったせいか既に多くの生徒や保護者らしき人達で溢れ返っていた。

ちなみにその中でも僕らは結構な注目を浴びてしまっている。

結局あのまま詩織に押し切られて腕を組んだまま学校に入ってしまったからだ。

いわゆる嫉妬が篭った怖い視線を僕はずっと感じ続けている。

なんてったって僕の隣にいるのが詩織だからね。正直こうなるとは思ってた。

成績優秀スポーツ万能なんていうありがちなフレーズに完璧に当てはまる(性格は別)上に

容姿まで完璧で中学時代は正に学園のアイドルだった。

そのせいで僕もこういう視線を三年間浴び続けてたんだっけ……

嗚呼、せっかく高校になってやり直せると思ってたのに……

今度こそ彼女が作れると思ってたのに……いや、諦めるのはまだ早い!

幸い詩織が掲示板を見に行ってくれたおかげで視線は結構向こうに流れている。

この隙に逃走……したら後で詩織が怖いから却下として……

せめて!せめてまた腕を組まれたりするのだけは避けよう!うん、これしかない。


なんて事を一人決意してると詩織が凄い勢いで帰ってきた。


「公君やったわ!!私達同じクラスよ!やっぱり私達は運命で結ばれてるのね~!」


言うが早いか抱きつくが早いか。ともかく僕の計画は2秒で破綻した。


「し、しお…わかった、わかったから離して!」

「これで一日中公君とらぶらぶできるわね!」

「恐ろしい事を言うなああ!!」

 

こんな感じで僕の高校生活は始まってしまった。

3年間にも及ぶ人生において最もといってもいいぐらいの大事な日々。

いったいこれからどんな事が僕を待ち受けているのだろうか。

僕にはほとんど予想もつかない。

ただ一つだけわかっている事といえば………


「公く~ん(うっとり)」

「いい加減離れろ~~~!!!」



なかなか乱れた日々になりそうって事ぐらいかな(遠い目
















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愛すべきは幼なじみ? 第2話


「……というわけで私からの挨拶は以上です」

「……ありがとうございました。続きまして……」


なんとか詩織を落ち着かせる事に成功した僕は体育館で入学式に参加していた。

幸いな事にクラスが同じといっても、席があいうえお順だったので詩織と離れる事ができた。

あれだけ浴びていた大量の視線も現在は舞台で喋っているPTA会長とやらに注がれていた。


「……ありがとうございました。続きまして、新入生代表の挨拶です。

新入生代表、藤崎詩織さんお願いします」

「はい」


そういってすっと立ち上がる詩織。

………まあ、詩織だからな。おかしくはないか。

中学時代、学年1位の成績でこの学校の入試でもトップの成績をとったらしい(自分で言ってた)

詩織が新入生代表になっても別におかしくはないだろう。

………周りを軽く見渡してみると、男達が鼻を伸ばして前を見ている。詩織に見とれているのだろう。

お前らは朝の騒ぎを知らんのか。僕は声を大にして言いたかった。

中学時代もそうだった。

詩織はあの頃からすでにおかしかった。

具体的にいうとイロボケだった。

クラスが別だからか登校する時や休み時間、下校の時まで僕にべったりだった。

それなのになんでだろう、詩織はみんなの人気者だった。

部活でもバスケットボールで学校を始めての全国へ導く原動力になって

全国のベスト5にも選ばれたりしてたし、

クラスでもその外面の良さでみんなに慕われてた(らしい)

上の3行だけ見ると詩織の人気もわかるよ。だけどね。


僕に対する態度を見ただろうが!どう見てもキチ(ry


詩織ファンの間では僕のせいで詩織が狂ってしまったらしい。






あいつは敵だ!みんなで協力して主人公(ぬしびとこう)をヤル(殺る)ぞ!!!

ジークしお(ry





なんでやねん。


「以上で新入生代表の挨拶を終わらせていただきます」


詩織の挨拶がいつの間にか終わってた。

一礼して自分の席に戻る姿は優雅の一言。

周りの男もそれに釣られて視線を動かしていく。限りなく目じりが下がっている。



……あれが本来の詩織の姿なのかもな……なんで壊れた(失礼)んだろう……

………本当に僕のせいなのかもな……変なフェロモンでも付いてるのだろうか、僕には………





後々になって僕はわかるのだろう、僕の考えが間違ってなかった事を…………(泣







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愛すべきは幼なじみ? 
            2話

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ようやく入学式も終わり僕はその他大勢の生徒と共に自分のクラスへと向かった。

教室に入り、みんな適当なグループになって喋っている。

中学の時の知り合いなのだろうか。

一つ大きなグループがあった。女の子が大量にいてその中心を見る事はできなかったが

女の子全員が中心にいるであろう人物に注目し、喋りかけてるのがここからでもわかった。

どんな人なのか興味はあったが僕はそれを確かめようとは思わなかった。なぜなら………


「公君!他の女の子を見てデレデレしちゃだめ!」

「……別にデレデレなんかしてないよ。」


隣にいる詩織が怖いからね。


「公君がデレデレしていいのは私だけなんだからね!」


そういって腕をとる。やめんかい。


「ちょ、詩織やめてよ。こんな所で……」

「もう、公君ったら照れ屋なんだから。でもそんな所も好き!」


そう言って頬擦り。いかん、逆効果だ。

状況は極めてまずい。徐々にクラスメイトの視線を集めだした。

黒い視線の割合も高くなってきた、なんとかしなければまずい!!


「もうっ!いい加減にしてよ!」

「あん……」


強引に離れました。なんか色っぽい声を出す詩織。

やめてくれ、その切ない目線を僕に向けるのは。

まるで僕が悪者じゃないか。周りも責めるような視線を止めろ。

段々空気が悪くなってきた教室だったがドアが開く音で一掃された。


「はい、みなさん席に座って下さい。席順は黒板に書いてある通りです。」


そう言いながら壇上に上がる女性。

このクラスの担任の様だが結構若く見える。後、かなりの美人。

僕は密かにガッツポーズ、あくまで密かにだ。

露骨にすると詩織が怖い。


「え~っと、私がこのクラスの担任をする事になりました雛山といいます。みなさんよろしくお願いしますね。」


そういって微笑む先生。なんかのんびりした雰囲気の人だが僕的にはツボ。

周りの男達もにやにやしている。どうやら第一印象は最高のようだ。


「みなさん初対面同士の人達も多いと思いますのでぇ、自己紹介をみなさんにしてもらいますね。

 それじゃあ出席番号の1番の人からお願いしますね」

 
1番の人が立ち上がり自己紹介を始める。

男だったのであまり興味が沸かなかった。

何人かの挨拶が終わり、次の人が立ち上がると女の子達が歓声をあげた。


「きゃあ~カッコいい!」

「うわ~モデルみたい……」

「ふ、僕の名前は伊集院レイ。女の子達は仲良くしてくれたまえ。男どもはどうでもいいよ。」


そういう伊集院とやらに女の子が更に歓声をあげる。

男達は黒くなっている。目とかオーラが怖い。

僕はというと何故かあまりムカつかなかった。


どうも彼を見ていると……違和感があった。


それが何なのかはわからないけど、ムカつくとかそういった感情は沸かなかった。

まあそれはどうでもいいのだが彼が庶民はどうたらと自己紹介なんだか喧嘩を売っているんだか

よくわからない挨拶をしている時に僕に目線があった瞬間、ビックリした様な表情をしたのが

すごく気になる。その後も僕の方をちらちらと何度も見てきたのは更に気になる。

何度も見てくる内に顔がうっすらと赤くなってるのは僕の気のせいじゃないと思う。

ふと詩織の方を見た。いや、見てしまった。


「………………」


すっごく怖かったです。







「主人公(ぬしびとこう)です。趣味特技共に特に無し。よろしくお願いします」


挨拶なんかどうでもいい。僕は適当に言ってさっさと座ろうとした。が………


「そこの席の女の子との関係は何ですか~?」


詩織の方を指しながら質問してきた奴のせいで簡単にいかなくなってしまった。

この男には見覚えがある。先生が来る前の教室で女の子にいろいろ聞きまわってた奴だ。


「んん、え~っと彼女とは家が隣同士の幼馴染で……」


なんと言うべきか困りつい詩織の方を見ると、彼女は何かを期待するような視線を僕に向けていた。

詩織……君の期待する答えはわかるけど僕にその気はないよ……

ついでに伊集院の方にも目を向けた。

何か僕を睨んでる。彼は詩織狙いなのかな?


「……それだけです、以上。」


結局僕は無難に答えそのまま座る。

もう、詩織の方は見ない。どんな表情しているかわかるから。

伊集院の方を見ると……ほっとしているようにも見える。

やはり彼は詩織狙いのようだ。



その後も自己紹介はどんどん進んでいく。

途中、少し可愛い子に僕は何度かにやけるがその度に寒気がするのですぐ正気に戻る。

原因は言わずもがな。

そうこうしている内に詩織の番がやってきた。


「藤崎詩織です。」


立ち上がり彼女が名前を告げると周りの雰囲気が変わった。

すべての視線は彼女に注がれ彼女はそれを堂々と受け止めている。

その優雅な立ち振る舞いにみんなは目を奪われる。

そう、これが藤崎詩織なのだ。圧倒的存在感とその美貌でみんなの注目を独り占めする。

この時ばかりは僕も目を奪われる。

それまでの自己紹介とは比べ物にならない程の注目を浴びながら自己紹介を続ける詩織。


「趣味はクラシック鑑賞です。クラブはバスケットボール部に入ろうと思っています。

 みなさんよろしくお願いします。………後、最後にみなさんに言っておきたい事があります……」


あれ、何か空気が………


「先程、公君は私との仲をただの幼馴染と言ってましたが……違います」


そう言いながら僕の方に近づく詩織。

………嫌な……予感が……



「私と………公君は………恋人同士ですから(はーと)」



そのまま抱きついてくる詩織。しまった、こうくるとは!!



どっこーん



そんな感じ、今の教室の雰囲気は。

詩織の爆弾発言により教室は一気に騒がしくなった。

みんな僕を見てくる。うう、何とかしないと……


「ちょ、違うって、みんな俺の話を聞いて…むごっ!」

「ん………」



おおおおおおおおお!!!




弁解しようとする僕の口になんとキスをぶちかましてきた。

僕は手足をじたばたさせて抵抗するが身体能力のすべてが僕の上を行く詩織は離してくれない。



「んん、んん~~~!!」



誰か助けて~~!!


「ん、……うん、ん……」


騒がしかった教室の空気も、その妖しい雰囲気に呑まれて静まりかえっていく。

結局詩織は3分もの間僕の唇を奪い続け、僕の頭がとろけてきた所で開放してくれた。

そして、辺りを見渡しながら言い放つ。



「……というわけなんで、……公君共々よろしくお願いしますね」




その挨拶があまりにも色っぽくて…………クラスの男どもは完全に魅了された。



女の子だってやばいのが何人かいるようだ。必然的に僕に対して……




神は無慈悲だ。あまりにも無慈悲だ。だって………



「ふふふ………」






………………………………………………





僕に、こんなに沢山の敵を作るのだから






















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愛すべきは幼なじみ? 第3話


現在僕は廊下を全速力で走っている。

中学の3年間、詩織に無理やり入れさせられたバスケ部で多少なりとも鍛えられてたのか

自分で思っていたよりも良い速度を維持している。

だけど何故僕がこんなに走らなくちゃいけないんだろう……

疲労のため、かなり低下してきた僕の頭脳は答えてくれない。

………ちらっと後ろを見る。

…………ああ、そういえばそうだった……



「待ちやがれ主人!!」

「藤崎さんをたぶらかす悪魔め!生かしてはおけん!!」

「うおおおおおおお、てめえさえいなければ!いなければああ!!」

「今こそ!中学の時の時からの恨みを晴らす時!主人覚悟!!!」



僕は追われているんだった……











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愛すべきは幼なじみ?
           3話


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ああ~疲れたよぉ。でも止まったら後ろの奴らに何されるかわかんないし。

なんでこんな事になったんだろうか……












結局しばらく続いた沈黙を破ったのは雛山先生だった。


「……え、ええっとそれじゃあ藤崎さんの自己紹介は以上ね。

 …次の子、自己紹介を続けてね。」


どうやら何も見なかった事にするらしい。

こののんびりした雰囲気の先生には少し刺激が強すぎたようだ。

詩織も僕に流し目をして自分の席へと帰っていく。

僕は周りのオーラに圧倒されて震えている。


「………です。よろしくお願いします。」

「は、はい、以上でみんなの自己紹介は終わりですね。……そ、それじゃあ今日はこれだけで終わりにしますね。 明日からは本格的に授業に入るから皆さんよろしくお願いしますね。」


そう言い残してさっさと帰っていく先生。先生もあまり長居したくない空気のようだ。

クラスの皆は先生が教室を後にした事を確認すると一斉に二手に別れ、突進してきた。


「ふ、ふ、ふ、藤崎さん!う、う、嘘ですよね!ぬ、ぬ、主人が彼氏だなんて!!」

「貴女は騙されてるんだ!あんな奴にキ、キ、キスをするなんて!!」

「藤崎さん!!主人君とどこまで進んでるの!?もう、しちゃってるの!?」

「ぼ、僕、初めて会った時から藤崎さんの事が!!」



一つは詩織に



「うおおおお!主人殺す!!」

「ちくしょおおお!!羨ましいぞ、この野郎!!」

「お前さえいなければ藤崎さんは俺の物に!!!」



もう一つは僕に襲ってきた。


「ちょ、ちょっとなんだよ急に!」


僕は素早く鞄を取り教室へと飛び出した。無論彼らも付いてくる。

普段ならすぐにそばに来る詩織も大勢の集団に囲まれて動けないようだ。


「あ~ん、公君助けて~~」


何か聞こえたけど無視しておく。

こうして僕は大量の人間を引き連れ、学校を走り回る事になってしまった。






……ええっと詩織が暴走したのが原因ってことかな……

なんで暴走したんだっけ……ああ、そうだ、僕が唯の幼馴染って言ったからだ、きっと。

ああ、しくじったぁ、というかあの場合はああ答えるしかないよ、実際付き合ってないんだし。

あああ!そもそもなんであんな質問してきたんだよ、あの野郎!

だれだっけあいつ……確か、女の子に話聞きまわっててその時名前言ってた……

…………確か早乙女好雄とか言ってたっけ……


ちくしょう!あいつがあんな質問してこなけりゃこんな事にならなかったかもしれないのに!

むかつくからあいつの出番減らしてやる。

レギュラーなんてとんでもない!脇で十分だあんな奴!




つい、口汚く罵ってしまうぐらいイライラしている僕だが

そんな事をしても、もちろん状況は好転しない。

むしろ、僕が疲労してきたせいで徐々に差が縮まってきた気がする。

彼らもどうやら体育会系の人達だったようだ。まだまだ余裕が感じられる。

まずい、いよいよまずくなってきた。

そう考えながらも僕は運動場を駆け抜ける。


「あの走りは………根性ね!!」


何か聞こえてきたが確認する余裕はない。

野球部、サッカー部、テニス部、水泳部等の皆さんの注目を浴びながらも僕の逃走は続く。

走り回っている内にこの学校の裏門が見えてきた。

う~ん……どうする、学校を出るべきか……

だが僕に考えさせてくれる時間を彼らは与えてくれなかった。


「いたぞ!!あそこだ!」

「ここまでだ!主人!!」

すぐに追っ手が来た。



「主人タン、ハァハァ……」



嫌な言葉は華麗にスルー


「もう!行くしかないじゃないか!」


僕はそう言って裏門に向かった。

……ん?なんだあの車……

よく見ると校門の所に黒塗りの高級そうな車が止まっていた。

やけに長いし……あれがロールスロイスってやつかな?

意外と冷静に僕が車を見ていると急に後部座席のドアが開いた。


「ふ、乗りたまえ庶民。」


この声は確か伊集院。おお、僕を助けてくれるのか!

僕はその救いの声をまったく疑いもせず車に飛び乗った。


「ありがとう、伊集院!」

「ふ、礼はいらないよ。外井、出せ。」


言うやいないや、すかさず車を発進させる運転手の人。

素晴らしい加速で後ろのクラスメイトを引き離す。

僕は裏門の所で文句を言いまくっているクラスメイトを窓越しに見ていた。


「うわ~危なかったなぁ」

「……………ハァハァ」

「え?どうしたの?」

「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」


そういって笑う伊集院。だが笑いが乾いている。


「いや~本当に助かったよ伊集院。ありがとう」

「……礼には及ばないよ。僕が帰ろうとしたら、たまたま君がここに逃げてきたからついでに乗せただけだからね」

「それでもだよ。伊集院がいなかったら僕はどうなってたか……」

「………確かに何をされるかわかったもんじゃないわね……」

「え、何か言った?」

「い、いや、なんでもないよ。はっはっは……」


そういってまた乾いた笑いをする伊集院。

美形の彼がやると、こんな姿も様になる。


「乗りかかった船だ。君の家まで送ってあげよう。」

「おぉ、悪いね。僕の住所は………」


僕の住所を伝えると、伊集院は運転手に指示を出した。

僕は走り回ったせいで荒くなった息を整えるべく、しばらく静かにしていた。


「……時に庶民、少し聞きたいことがあるのだが……」


しばらくすると伊集院が真剣な表情で喋りかけてきた。


「ん?何?」

「……その、藤崎君とは本当に……つ、付き合っているのかね?」


……その事か。この際一人でも多く誤解を解いておかないとな。


「いや、僕は詩織とは付き合ってないよ」

「し、しかし君は教室で藤崎君と、…く、口付けをしていたじゃないか!」

「あれは!詩織が無理やりしてきたの!詩織は、…僕の事を……その………と、とにかく!

 僕は詩織の事はなんとも思っていないよ!」


やや必死になって言っておく。これぐらい強く言っておかないと誤解は解けないと思う。


「……本当に?」

「……そりゃあ、あんな事した後じゃ信用できないかもしれないけど……」


僕はやや俯きがちになってつぶやく。


「う!…………………も、萌え……」


何かを小声でつぶやく伊集院。顔が焼け野原のようになっている。


「どうした?伊集院?」


僕は上目遣いで伊集院を見る。


「うぅ……鼻血が………い、いや、わかった。君を信用しよう」

「本当に!ありがとう、信じてくれて!」


僕は嬉しさのあまり彼の手を握って満面の笑みを浮かべる。

自分で言っといてなんだが正直信用されるとは思っていなかったから嬉しさはひとしおだ。


「ぁぁぁ………し、幸せ………」


伊集院が恍惚の表情をしているが誤解が解けて興奮している僕にはわからなかった。









「………レイ様、そろそろ主人様のご自宅に到着致します。」

「は!……わ、わかった。」


意外と時間が立つのは早かったな

すぐに僕の家が見えてきた。車が家の前で止まるとドアが勝手に開いた。


「ふ、……クラスのみんなには僕の方から藤崎君との仲は誤解だと伝えておこう。」


車を出た僕に伊集院がとても嬉しい事を言ってくれた。


「本当に!?是非頼むよ伊集院!!」

「……ま、任せたまえ。クラスメイトの誤解は完璧に解いておく。」

「おう、ありがとな!」


僕は今日最高の笑顔を伊集院に向けた。



「…………そ、外井、出しなさい!」



そういうと、ロールスロイスは猛スピードで去っていった。

伊集院の奴……照れてたのかな?顔が真っ赤だったし。

しかし、自己紹介の時と随分印象が違ったな。

すごい傲慢で女たらしな奴に見えたけど……いいやつじゃん。


僕は高校で初めて出来た友達を思い、頬を緩ませながら我が家へと入っていった。

















おまけ




「ああ~~ここが主人君の座ってた席!!……あぁ……」


レイは主人公の座っていた座席にほお擦りしていた。

その顔は限りなくとろけている。正に幸せ独り占めといった感じだ。


「主人君の匂いが……すぅー……」


見ていられないぐらいに顔がにやけている。

この顔を見せればキャアキャア言っていた女子も離れていくだろうに。


「レ、レイ様!後で私にもさせていただけませんか!?」


「ダメ!!………ぁぁ」


彼女はしばらくの間、幸せを満喫していた。



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愛すべきは幼なじみ? 第4話


ふぅ~……やっぱり風呂はいいなあ。



嵐のような高校生活初日をようやく終えることが出来て

僕は緊張感から解放されたせいか自分の部屋に入るなりすぐに寝入ってしまった。

余程疲れていたんだと思う。目が覚めたらもう晩ご飯の時間になっていた。

流石に寝すぎだと思ったけど、過ぎた事は仕方ない。

今は晩御飯を食べ終わって風呂に入っているところ。

本当に気持ちいい。ここだけが僕のオアシスと言ってもいいぐらい。

しいて不満を言うなら詩織がいつバスタオル一枚で入ってくるかわからない事ぐらいだ。

やばいだろそれ、なんて言わないでくれ。……もう慣れちゃったんだよ(泣











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愛すべきは幼なじみ?
          3話

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やや長めの入浴を終えて身も心もさっぱりした僕は、冷蔵庫に常備してあるコーヒー牛乳を飲んでから

自分の部屋に戻った。

しばらくベットに寝転がりながらテレビでも見ながらのんびりと過ごすことにしよう。


しかし……今日はよく走ったな……


中学三年の夏にバスケ部を引退してからというもの、体育の時間も手抜きしてやってた僕にとって

あれだけ全力で走り続けたのは引退してから初めてだった。


どうやら………体力はあんまり落ちてないみたいだな。


久しぶりの全力疾走だったがあれだけの速さを長時間維持できたのだから

僕の体力は引退前とさほど変わらないみたいだ。


部活……どうしよっかなあ……バスケ部は詩織が入るだろうし……却下だな……


問題はそれを詩織が許してくれるのかという一点だが今は置いておく。


後は…野球……サッカー……テニスなんてどうだろうか……ん~どれもパッとしないなあ…


ちなみに文科系のクラブは最初から頭に無い。

体を動かす事は元々好きだからだ。

だからといってバスケ部に入りたくは無かったのだが。僕が入りたかったのは……


……あ、そうだ……水泳部があった……


そう、僕は中学の時水泳部に入りたかったのだ。

小学生の頃からスイミングスクールに通っていたし、そこではスクールの代表として大会に出た事もあった。

成績もあまり良くなく、陸上での運動神経もいまいちだった僕にとって水泳は唯一の自信だった。

当然中学に入ってからは水泳部でがんばろうと思ってたんだけど…詩織がね……

なんだっけ、確かすごい剣幕で怒り出したんだよ。





「だめえええ!!公君の柔肌を他の女子に見せるなんて……あぁ考えただけでも
 相手を校舎裏に呼びたくなっちゃう!
 だめよ公君。あなたの体を好きなだけ見ていいのは私だけなんだからね。そうだ!よかったら私と一緒に
 バスケットボールやらない?公君はちょっと体が小さいから不利かもしれないけどPGだったら問題ないし 
 公君ならきっとレギュラーも取れるわ!それにね、バスケットのユニフォームって二の腕が全部でるのよ。
 公君が着たらきっと…………良い!良いわもうこれしかないわ!さあ今すぐ体育館に行くわよ公君!!
 ほら、早く!!ハアハア……」
  




…………思い出したら涙が止まらなくなってしまいました。



「なんとかして水泳部に入りたいなあ……はぁ……」

「へぇ……公君水泳部に入りたいんだ………」



ビクッ


いきなり独り言に相槌が打たれた。

し、詩織か、一体どこに!?

声はしても姿が見えない。さまざまな詩織の奇行を見てきた僕だが流石にびびる。


「もう……公君ったら私をほったらかしにして帰っちゃうんだもん。……いけない子ね……」



ゾク……


詩織の声は僕の火照った体を一瞬にして凍らせるぐらいの温度だった。

やば……詩織本気で怒ってる………


「周りのみんなが帰らしてくれないんだもん………処理するのに時間かかっちゃったわ…」


いったい何を処理したんですか詩織さん!?


「おお、落ち着け詩織。ぼ、僕も変なクラスメート達追っかけられてて詩織の方にいけなかったんだよ。」

「へぇ……それで伊集院君の車で帰ってきたんだぁ……私を置いて…」

「し、詩織見てたのか!ってそれはあいつが追われてる僕を助けてくれてそのまま家に送ってくれただけだよ。」

「やけに仲が良さそうだったわね……伊集院君なんか顔を真っ赤にしてたし……」

「そ、それは!…っていうか伊集院は男じゃんか。別にやましい事なんか何もないよ!」

「……男ねぇ………まあそういう事にしておいてあげるわ……」


し、詩織何を言ってるんだ?伊集院は男に決まっているだろうが。

そういえば僕はいつまで姿の見えない詩織としゃべり続ける気なんだ。


「それより詩織!一体どこにいるんだよ、出てきてよ!」

「ふふ……あなたの下にいるわよ……」

「ええっ!!………………」


言われて僕は今いるベットの下を見てみた。……………………



怖っっ



ベットの下に潜り込んでいた詩織さんの放つ絶対零度の視線と目が合ってしまいました。

ふと僕の股間の涙腺がゆるゆるなのに気がつきました。


「……い、何時からいたんですか、詩織さん?」

「公君がお風呂に入っている間にちょっとね……」

「………………………」


くねくねと身をよじらせながら無言で出てくる詩織。だから怖いって。


「ふぅ……それじゃあ公君……お仕置きね!」


言うや否や僕に飛び掛ってくる。


「うわああぁ!!」


僕は素早く身をひねり詩織をかわす。

かわされた詩織はふぅっと一息ついてから僕の方へと振り向く。


「もう、公君ったら……そんなに今日は激しいのを期待してるのね(はーと)」

「誰もそんな事は望んでいません!!」


ああああだめだ!!今日の詩織さんは無敵すぎる!

僕では手がつけられない!

じわじわと僕との距離を詰めてくる詩織。顔がすっごい笑顔なんですけど……


「さあ公君!!今日は最後までやりましょうね!」

「何をやるんですか、何を!!」

「ナニってそんな……公君のエッチ!わかってるくせに、もう私の口から言わせる気?」

「お願いですから正気に戻ってください!!」

「えいっ!!」


可愛い声とは裏腹に凄まじい速度で僕に抱きついてくる詩織。


うっきゃああ!捕まってしまった!!


ああ、詩織の胸が!!匂いが!!……………嗚呼(陥落寸前


「う~ん、公君良い匂いね……私のためにちゃんと準備してきてくれたのね」

「な、な、そんなんじゃないよ!僕は普通に風呂に入っただけで……」

「照れないで公君、私はちゃんとわかっているから……」

「わかってねえええ!!」


い、いかん頭がくらくらしてきた………


「うふふ、公君ったら顔真っ赤にして可愛いんだから……」


詩織は体重を前にかけて僕をベットへと押し倒した。

そして僕の胸に顔を埋めてくる。


「ううぅ………詩織これ以上はまずいって………」


これ以上は……引き返せなくなってしまう……


「まずくなんかないわ……私はずっとこの時を待ち望んでいたんだから……」


詩織はこれまでの壊れ具合を払拭するかのような真面目な顔で僕だけを見ている。


「詩織…………」

「公君…………愛してるわ、私にはあなたしか見えないの……お願い……」


………………詩織……そこまで僕の事を…………

久しく見ていない詩織の真剣で、熱い目を見てしまって僕は………




「うぅ………………詩織………ごめん!!」




ギブアーップ!!



僕は詩織を強引に押しのけてドアへとダッシュした。


「あん、公君どこに行くの!!」

「ごめん、僕はまだ身を固める気はないんだ!さらばだ詩織!!」


速攻でドアを開け部屋から脱出。そして部屋の鍵をかけて詩織を閉じ込める。

僕の部屋には窓が無いので詩織はこれで脱出不可能である。

何故鍵を今持っているのかは聞かないでくれ。しいて言うなら経験の賜物といった所だ。



「公く~~ん、カムバーーーック!!!ああんもう、また逃げられちゃった!!」



素早く家を飛び出す僕の耳に詩織の叫びが聞こえた。









さて、どうしようか………

詩織から逃げる事に成功した僕は暗い夜道を一人歩きながらこれからどうするか悩んでいた。



しかし、さっきは本当にやばかった……長い事詩織に襲われ続けているが(笑

あれほど僕の心が揺れ動いたのは初めてだった。

原因はもちろん、あの詩織の真剣な顔を見てしまったからだ。

詩織があれほど真剣な顔をして僕を見てきたのは何時以来だろうか…

いつも僕を襲い、誘惑してくる時はとろけきっただらしない顔をしていたんだが……

もし、あれが本当の詩織だったら……僕は………



……考えててもしょうがないか。それよりもこれからどうしようかな……



現在、僕の部屋には詩織がいるしあんなに状態の詩織の所に帰るのはあまりにも無謀。

となると……

僕は携帯電話を取り出して、ある人へと連絡をとる事にした。


「………あ、もしもし?うん僕。悪いんだけどさぁ……うんそうなんだ。また詩織がさぁ

 ……そうそう、だからさ、今日も悪いんだけど泊めてくれない?……良い?本当、

 ありがとう!うん、それじゃあ今から家に行くね!うん、それじゃあ!」


やれやれ、今日もまた世話になっちゃうなんて……。

僕は苦笑しながら目的地へと向かった。













おまけ


「もう、公君ったらまた逃げちゃって度胸がないんだから」

公に逃げられて部屋に閉じ込められてしまった詩織は公のベットに入り、今日の反省をしていた。

その手馴れた一連の動作から経験の豊富さが伺える。


「でも公君いままでと反応が違ったわ……やっぱりシリアスで攻める作戦は成功のようね。

 これからもこの作戦で押していけばその内………ふふふふふふふふ」


暗闇に包まれた公の部屋に詩織の笑い声がしばらく響き続けた。



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genre : 小説・文学

愛すべきは幼なじみ? 第5話


………んん………


「……きて……主人君朝だよ、早くしないと学校に遅刻しちゃうよ……」


むにゃ……ん……後……1時間……


「もう、1時間も眠ったら完全に遅刻だよ。ほら、早く。」


……布団がめくられてしまった。……布団……これかな?


「きゃっ、ちょ、ちょっと主人君、寝ぼけてるの?」


うるさい布団だな……

僕は布団?を体に巻き込み再び寝ようとする。


「あ…主人君……やめて……でも……主人君なら私…で、でも詩織ちゃんになんていったら!」


布団がなにやら白熱してるようだ。僕は布団を強く抱き黙らせようとした。


「きゃあ!主人君……いいの?私、詩織ちゃんに遠慮しなくてもいいの?

 ……詩織ちゃんから私を守ってくれるの?それだったら私……」

「それは勘弁してください。」


一瞬で目が覚めて上半身を起こしながら言う。


ったく、なんて恐ろしい事を言うんだ!この布団は……って!!


「うわあ!!ってなんで一緒に寝てるんだよ!!」

「な、なんでって公君が無理やり……それよりそれは勘弁って……ひどい

 ……私なんか詩織ちゃんにボコボコにされちゃえばいいって思ってるんだ主人君は…」


布団……もとい彼女はゆっくりと僕に詰め寄ってくる。

目が潤んでいて今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。


「って、僕が無理やりって!!何やっちゃったんだよ僕は!!」

「うぅ……うわあああん!!」


彼女は我慢できなくなったのか泣き出してしまった。




「あぁ!!泣かないで!愛ちゃん」




美樹原家の朝は一人娘の鳴き声で迎える事になった。






─────────────────────────



愛すべきは幼なじみ?
         5話


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「その、なんていうかごめん」

「……もういいよ」


朝食をとりながら僕は愛ちゃんに謝るが彼女はすっかりご立腹のようだ。

二人の間に気まずい空気が流れ、僕はご飯を食う事でそれをごまかす。


「すいません、御代わりお願いします。」

「はいはい、公君今日はよく食べるわねえ」


愛ちゃんのお母さんに御代わりを頼む。

ちなみに三杯目。もうお腹は膨れているが食べないと間が持たない。


「それで公君、昨日も大変だったらしいわねえ。また詩織ちゃんに襲われたんですって?」

「はは……まあそんな所ですよ」

「まあそのおかげでまたうちに来てくれて愛は喜んでるみたいだけど」

「お、お母さん、何言ってるのよ。」


愛ちゃんが顔を赤くしてお母さんに言う。

お母さんの言うまたとは言葉通りで、僕が詩織に襲われて家に帰れない時は

いつも美樹原家にお世話になっている。

確か詩織を通して愛ちゃんと知り合ってそれ以来ずっとだから……かれこれ2年ぐらいかな?

普通は年頃の娘がいる家に同年代の男を泊めるなんて考えられないのだろうけど

愛ちゃんのお母さんは何故か泊めてくれる。

お母さんいわく上でもいってる通り「愛が喜ぶから」らしいけどなんで愛ちゃんが喜ぶんだろう?

僕に好意を持ってるでもあるまいし。今だってからかわれてるから赤くなってるだけだし。

ちなみに詩織は僕がここに泊まっているのは知らない。

ばれたら愛ちゃん共々詩織に恐ろしい目に合わされるのは目に見えているから教えていないのだ。

しかしこれまで詩織の目を誤魔化し続けれているのは我ながらすごいと思う。


「何をいまさら否定してるのよ。普段は男の子とまったく喋れない愛がいつも公君とは楽しそうに喋ってるし。

 昨日だって電話があった後一人部屋で浮かれてたじゃない」

「そ、それは……あぅ…」


顔をさらに真っ赤にして俯いてしまった。


「それよりいつまで公君の事怒ってるのよ。あんな事いつもやってるじゃない。」


そう、僕がこの家に泊まった時はほぼ毎回、今朝と同じような事をしている。

僕もやめなきゃとは思ってるんだけどなかなか上手くいかなくてね。


「それは…だって主人君が……」

「だからそれもいつもの事でしょ。いつまでも怒ってると嫌われるわよ。」

「いや、別に嫌いになんてなりませんけど……」

「うぅ………それだけは嫌…」

「え?」


愛ちゃんが小声で何かを言うが僕には聞き取れない。

少しの間考え込んでいる様子をしてから顔を上げてこう言った。


「………動物園」

「え、動物園?」

「今度、動物園に連れて行ってくれたら許してあげるね」


微笑みながらそう言う愛ちゃん。

僕が断るとは全く思っていないようだ。それだけ信頼してくれてるってことかな?


「……うん、もちろんOKだよ。」


僕も微笑みながら返事をする。

信頼には答えないとね。


「あら、やるじゃない愛。仲直りなんて言って上手いことデートに誘うだなんて」

「お母さん!」


愛ちゃんはお母さんにやられっぱなしのようだ。








「よっと…よし行くか」


玄関で靴を履いていた僕に遅れて準備を済ませた愛ちゃんが近づいてくる。



「あ、主人君。もう学校に行くの?」

「うん、家に帰って鞄取りに行かないといけないしね。」


詩織も、もういないだろうしね。


「あの……よかったら私も一緒に行っていいかな?」

「え、愛ちゃんも?」

「う、うん。私も準備済ませちゃったけど今から真っ直ぐ学校に行ってもまだ早いし、

 それだったら主人君についていってい、一緒に登校しようかなって……だめ、かな?」

「え、え~っと」


愛ちゃんと一緒にかぁ。


…………………




一緒に家に行く

  ↓

母に見られる

  ↓

詩織にちくられる

  ↓

昨日の夜の再現



………………………………

わかりやすい未来に少々へこむ。


「ご、ごめん一緒にはちょっと。愛ちゃんはもう少しゆっくりしてから学校に行ってよ」

「そ、そっか。そうだよね、私なんかと行っても楽しくないもんね……」

「ち、違うよ。僕と一緒に行ったら詩織にばれるから……ってああっ!

 もう本当に行かないと遅れちゃうよ。それじゃあ愛ちゃん、またね。」 

「あ、主人君………」


家を出る時にちらっと見えた愛ちゃんの表情が少し寂しそうに見えた。


















「おはよう、主人君」

「お、おはよう」



「よう、主人早いな」

「う、うん」



どういうことだ?

僕は家に戻ってから登校してきて驚いていた。

クラスメイトが普通なのだ。

昨日あれだけの騒ぎがあったというのに僕に対して極めて普通に接してくるのだ。

というより喋った事の無い大半のクラスメイトが僕に話しかけてくる。

一体全体何があったというのだ。



ガラガラガラ



「ふ、おはよう庶民」


教室のドアが開いた音がしてすぐ、頭を伏せて考えている僕の頭上から突然キザな挨拶が聞こえてきた。

この声は……


「おはよう、伊集院。……でも僕に声をかけるとは思わなかったよ」

「な、何故かね?僕が挨拶をしてはいけないというのかね君は。」

「だって、昨日の自己紹介で言ってたじゃん。男はどうでもいいってさ」

「そ、それはそうだが……っく、君という男は意地が悪い!」

「ははは、まあそう言うなって」


顔を赤くして言う伊集院。

昨日のやりとりでこいつが結構いい奴だってのは分かったし僕も親しげに話す。

こいつとはいい友達になれそうな気がする。


「………もう……」

「え、……どうしたの伊集院?そんな拗ねた顔をして。」

「な!何故僕が拗ねなくてはいけないんだ。ま、まったく勘違いしてもらっては困る。」

「そうだよね、伊集院があんな可愛い顔して拗ねるわけないもんね。」

「な、な、な!か、可愛いだなんて……うぅ……」


顔を真っ赤にして俯いてしまった。

はは、こいつからかうと面白いや。

しかし、そうとう怒ってるみたいだね。あんなに顔が真っ赤になってて、もう見てられないぐらいだよ。
 

「ところでさ、伊集院。」


伊集院の怒りが爆発する前に話しの矛先を変えよう。


「うぅ…可愛いだなんていきなり言われたら私……はっ!な、何かね庶民!!」

「ああ、それがさ、他のクラスメイトを見てくれよ」


何かぶつぶつ言ってたが僕は気にせず言う

言われた通りに周りを見渡す伊集院。


「……ふむ、特に何も無いようだがどうかしたのかね?」

「いや、どうもないっておかしいだろ。昨日あれだけ追い回されてたのに今日はみんな

 何事も無かったかのように親しげに接してくるんだよ。」


昨日まったく喋ってない人達までね。


「ああなんだ、そんな事かね」

「え、なんでだか知ってるのか?」

「決まっているだろう。この僕が昨日みんなを洗脳……いや、ちゃんと説得したんだよ」

「ま、まじ!?」

「ふ、伊集院の力を持ってすればこのぐらい容易いものだよ」


僕も周りを見渡す。別に僕の方を見ている人はいない。

つまり、昨日の事は無かった事に………





もう、だめだと思ってたのに……

もう、高校生活で彼女ができるのは無理だと思ったのに……ううう……





「うおおおおっ!ありがとう、伊集院!!」


僕は感動のあまり、伊集院に勢いよく抱きついた。


「きゃあ!ちょ、ちょっと庶民、辞めたまえ!!」


伊集院が抵抗するが僕は抱きつくのを辞めない。


「本当に!本当にありがとう!!これで僕にも彼女ができるよ!」

「か、彼女だなんてそんな……あぅ!」


僕が強く抱きしめると伊集院が可愛い声を出してびくんと震えた。

なんかこいついい匂いするな。やっぱりお金持ちともなると高い香水でも使っているのかな?

ちなみにこの時点で先程とは違いクラスメイトの視線は僕らが独り占めしているが

僕はまったく気づかない。


「詩織の誤解さえ解ければ!僕にだって、僕にだって絶対彼女が!!」

「誤解ってどういうことかしら公君?」






一瞬にして興奮が冷めた。

僕は背後から伝わってくる冷気に震えながらゆっくりと伊集院から離れる。


「い、いや、詩織。別に僕はただ彼女が欲しいだけで」

「あら、彼女ならここにいるじゃない。」


にっこりと微笑み僕を見る詩織。


「誤解だなんて、公君は恥ずかしがり屋だから隠したくなるかもしれないけど……

 そこまではっきり嘘を言っちゃうなんて、私怒っちゃうわよ。」


いや、それこそ嘘だろ。

僕は口に出そうになった言葉をなんとか飲み込んだ。

今めったな事を言うと命に関わる。



「藤崎君、主人君は真実を言っているだけで別に問題は無いと思うがね」



僕の背後で悶えて?いた伊集院が言ってきた。

伊集院、君は僕の味方なんだね。


「あら、伊集院君。公君はちょっと恥ずかしがり屋さんだからこんな事言ってるだけよ。


 それに見たでしょ。昨日、教室で私と公君が愛し合ってた所を」


詩織が伊集院にも冷たい目をしたままそんな事をのたまう。


「……あれはどう見ても藤崎君が嫌がる主人君に無理やりしていたようだが。

 あれを愛し合っていたとは片腹痛いね。」


伊集院、詩織に向かってなんて勇気のある発言を!

感動した!骨は拾ってやるぞ(助けようとはしない


「……ど、どうやら伊集院君には私と公君の愛が分からないようね。」


詩織さん、青筋が怖いです。


「ふ、一方的に押し付けるのは愛とは言わないのだよ藤崎君」

「な、な、な………」


詩織さんの青筋がふくらんできました。やばいかもしれないです。


「それに主人君にも聞いたが藤崎君とは付き合っていないとはっきり言っていたよ」

「公君………」


あわわわわ……伊集院なんでそこで俺に振る!!

詩織の目がまるでメデューサの様になっている。要するに僕は動けない。

二人の間に挟まれて……あれ、胃が痛いぞ?







「ふふふふふふ……」

「ほほほほほほ……」









二人の睨み合いは先生が来るまで延々と続けられた……僕を挟んで。


………あいたたた(十二指腸潰瘍)


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愛すべきは幼なじみ? 第6話


キーンコーンカーンコーン




…………っは!!


チャイムの音に反応して時計を見ると既に今日の授業は終わっていた。

どうやら恐ろしさのあまり現実逃避をしていたようである。

HRもそこそこに終わり、クラス全体があわただしくなっている。

みんな帰ろうとせず、それぞれ口々に喋っている。

今日から部活の見学又は仮入部がOKなのでみんなその事で盛り上がっているのだろう。


「公く~ん!」

「ん、何詩織?」


いきなり詩織が近づいてきた。

放心状態が続いていた僕はやる気なさそうに返事をする。

これがまずい、非常にまずかった。



グワシ



「さあ、今からバスケ部に見学に行くわよ公君」

「あががが、し、詩織首が、頭がああぁ!」


いきなり僕の頭を鷲掴みにして引きずりながら歩き出す詩織。

脅威の握力だ、僕の首と頭が悲鳴を上げている。


「し、詩織。僕はバスケ部じゃなくて水泳部に行きたいなあ……って思ってるんだけど」



クワッ


振り向きざまに恐ろしい目つきで僕を睨んでくる。

プレッシャーで胃がすごく痛いです。


「駄目に決まってるじゃない!!どうして水泳部のあばずれ共に「私の」公君の肉体を見せないきゃいけないのよ!」

「あ~もう相変わらず病んでるな詩織は」


いったいどうしてこんな風に育ってしまったのだろうか。



「公君の体は私しか見ちゃいけないんだからね!本当なら小学生の時だって……くぅ!

 スイミングスクールの女コーチの緩みきった顔が目に浮かんでくるわ!!

 どうして!!どうして私はあの時公君を止めなかったの!
 
 ああ公君の二の腕が!ふくらはぎが!!全部あの女コーチにいいぃ!!!」



「…………………」



誰か助けて……この人を止めてください。



「とにかく!公君は私と一緒にバスケ部に入るの。さあ早く行きましょ」

「いやだ~俺は水泳部に入るんだ~~」


体をくねらせてなんとか逃れようとするが詩織に鷲掴みにされている頭が離れない。

必死に抵抗する僕を見て何を思ったか詩織はうっすらと微笑み


「もう公君ったら……えい(はーと)」






ドス!!






可愛い声と共に放たれる可愛くない地獄突き


「っ……………!!!」


喉を突かれて悲鳴すら上げれないままその場にのた打ち回る僕。

しかし頭はしっかりホールドされているままだ。

そんな僕を見て満足そうに微笑みながら


「さあ、バスケ部に行くわよ公君」

「………………………」


もはや脳に悪魔が寄生しているとしか思えない詩織(Lv∞)

そんな彼女を目の前にしてもまだ水泳部に行きたいだなんで言えるわけも無く

僕(Lv4)は半泣きで首を縦に振ることしかできなかった。









─────────────────────────


愛すべきは幼なじみ?
        6話 

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あ~る~晴れた~ひ~る~下がり~


「~~~~♪」


い~ち~ば~へ続~く道~


「~~~~…………」


ドナドナドナドナドナドナドナドドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナドナ………




きゅう




「あががが!!」

「もう、公君そんな顔しちゃだめよ」

「は、はひ……」


上機嫌な詩織の気分を害してしまったのか掴まれている頭をさらに強く握られてしまった。

ちくしょう。僕は心の中で歌う事すら許されないのか。


「え~っとあっちに行けば体育館よね」

「……そうですね」


非常にまずい。

このままでは中学に続いて高校でもバスケ部に入るはめになってしまう。

しかし、いかんせん頭をがっちりと掴まれ逃げようとすると頭が潰されかねない現状。

この絶望的な状況で笑顔を浮かべれる程太い心を持っていない僕は

何かに憑かれているんじゃないかというぐらい暗い顔をしている。

周りの生徒達はそんな僕を見てはいけない物を見てしまったという表情で見ている。

くそ、笑えよこんな僕をあざけるように笑えよ!!


しかしそんな数ある視線の中に一つだけ普通の視線があった。

………ん?

僕はその人と目線が合った。

ショートカットで何故か髪の色が水色の女の子。顔は……かなり可愛い。

詩織にだって負けてないかも。

まだ少し幼い顔立ちをしているし同年なのかな?

彼氏は………いるだろうな、きっと。


引きずられながらも意外と余裕があるのかいろいろ頭の中で考えている僕を尻目に彼女はどんどん近づいてくる。

どんどんどんどん近づく。目を僕から逸らしていない。

なんだなんだ?

そのまま彼女は50センチぐらいまで近づいてきた。

気がつけば彼女は自信満々といった笑みをしておりそして大きな声でこういった。




「あなたには根性があるわ!あなたのその根性さえあれば国立だって狙えるわ!!

 さあ!いますぐサッカー部に入りましょう!さあ!さあ!!!」








「え?」

「……………」


第一印象を大幅に修正する必要あり、彼女はどこか詩織に似た匂いがする。僕にはわかる。

声に気づき振り返る詩織。

しかし水色の髪の女の子は詩織には目も向けず僕に話しかけてくる。


「主人公君。あなたなら絶対国立のスターになれるわ!私と一緒に国立を目指しましょう!」

「声がでかいですよ。ってなんで僕の名前を?」

「…………………」


無視された格好の詩織。


「ああごめんなさい。私はサッカー部のマネージャーをやってる虹野沙希っていうの。あなたと同じ一年生よ」

「あ、やっぱり同学年だったんだ。」

「え?」

「いや、こっちの話。それでなんで僕の名前を?」

「そりゃあ、昨日あれだけ目立ってたら誰だってわかるわよ」

「昨日って………ああ」


昨日の逃走劇を目撃されていたようだ。


「あの時の走りは見させてもらったわ。あの走りは正に根性よ!」

「根性って……」

「あの走りはサッカーでは大きな武器になるわ。それで……」

「え~っと勧誘しにきたってことですか?」

「そうなの。お願い主人君。サッカー部に入ってくれない?」


そう言って手を合わせておねだりポーズをする。非常に可愛い。


「…………ピキ……」


無視され続けている詩織の額に怒りマークが……

そして僕と虹野さんの間に入り込み


「ちょっとあなた!何勝手な事言ってるのよ!公君は私とバスケ部に……」

「ねえお願い!主人君がいれば今年は全国狙えそうなの!」




<|%L|>詩織を手で押しのける虹野さん<>





「…………プチ」


あ、切れた








無言で虹野さんに向けて拳を振るう詩織。


ってやべええええ!!虹野さん死んじゃうう!!


が、しかし虹野さんはなんとその拳をバックステップであっさりとかわす。


「な……私の攻撃をかわすなんて………」

「さっきからなんなんですかあなたは?私と主人君の邪魔ばっかりして」

「……私と主人君ですって?………プチプチプチ」


あ、三本は逝ったなあれは。

唖然とする詩織を氷の目といった感じの視線で睨む虹野さん。

というかなんだ?あれは誰だ?

詩織が二人いるようにしか見えないんだけど

どうやら彼女も相当病んでいるようだ。もちろん現代医学では治療は不可能だ。


「公君に近づいた事を一生後悔するといいわ!!」


そういって再び虹野さんに襲い掛かる詩織。

右拳がものすごい音を立てて虹野さんに襲い掛かる。

しかしまたあっさりとかわす虹野さん。……が!


「………え?な、なんで……?」


完璧にかわしたはずの虹野さんの頬からうっすらと血が出ていた。

傷は浅そうだが鋭利な刃物で切ったような見事な切り口に虹野さんは驚きを隠せない。

そんな虹野さんを見て詩織は得意そうな顔をして


「はん、私の拳はかわせるみたいだけどその衝撃波まではかわせないようね!」

「衝撃波って……かまいたちかよ!!」


詩織の拳はかまいたちが起こせるそうです。

っていうかあれだ。なんでこんなにバイオレンスなんだ彼女達は?


「さあ逝きなさい!えい!えい!!えい!!!」

「く………くぅ!!」


畳み掛けるように連続で殴りかかる詩織。

かけ声が何故か可愛らしい。

次々と襲いかかる攻撃をかわしていく虹野さんだがやはり衝撃はまでは

防ぎきれないらしく体に切り傷が増えていく。


「………はっ!」


わずかな隙を突き反撃をする虹野さん。

がそれをあっさりとかわす詩織。

詩織が攻撃をかわすのを見ると素早く後退して詩織との距離をとり体制を整える虹野さん。







ヒュウウウウ~~







一陣の風が流れ、にらみ合う両雄の頬を撫でる


ここだけ世界が違います




「ほ~~ほっほっほ!どうやら手も足も出ないようね虹野さん!」


下品に笑う詩織。僕の幼なじみは死にました(現実逃避


「……………………」


冷たい表情をしたまま詩織を睨み続ける虹野さん。

焼き尽くすような熱い目で虹野さんを睨む詩織。

対極に位置する二人。どうやら元々相性は最悪だったのかもしれない。


「どうやら、私だけでは貴女には勝てないようね……」

「ふふ、負けを認めたようね。ならばさっさと逝きなさい!」

「いいえ………逝くのはあなたよ」




パチン

彼女は手を上に掲げて指を鳴らした。







どどどどどどどど






彼女の後ろから数十人はいるだろう人間が埃を巻き上げながらやってきた。

見ると全員半そで半ズボン……ってサッカーのユニフォームかよ!!

ってことはあいつらサッカー部……


「虹野マネージャー!!サッカー部全員集合しました!」

「ふふ、ありがとうキャプテン」

「な、な、な………」


集団から一歩前に出たリーダー格らしき人が虹野さんに敬礼をして挨拶する。

もちろん後ろの集団も同時に敬礼。

流石の詩織も呆然としている。


「ちょっとこの人がね、私の邪魔をしているのよ。だから……ね、お願い」

「は!了解しました。いくぞお前達!!」


「「「「うぃいいいいいす!!!」」」」


そのまま詩織に向かって全員特攻し始める。


「ちょ、ちょっと……ってきゃあああ!!」


一瞬にして詩織が人の波に飲まれる。



「「「「わっしょい!!わっしょい!!」」」」



全員で詩織を胴上げしてそのまま歩き始める。


「きゃあ!ちょ、ちょっとやめなさいよ!スカートが捲れちゃう!」


「「「「わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!」」」」


「ああ~ん。公君助けて~~~~!」


僕に助けを呼びながらどんどんフェードアウトしていく詩織。

いや、自分でなんとかできるだろう。

そんな突っ込みが思い浮かんでは消えていく。

何故か詩織は暴力を振るわずに結局そのまま消えていった。

グッバイ詩織……できれば永遠に。


「ふう……やっと邪魔者がいなくなったわ。……さぁてと」


くるっと回って僕の方を見る虹野さん。



「さあ、主人君!サッカー部に入ってくれるわよね!」

「いやに決まってるでしょうが」


言ってすぐに反対方向へ走り出す。

もうこの手の人は話をしても無駄だ(詩織で経験済み)。とにかく逃げるべし。


「ちょ、ちょっと主人君!!」

「ごめんね、僕は水泳部に入る気なんでサッカー部には入れないんだ」

「水泳部……………」


虹野さんは追ってこようとせず、その場で呆けたように僕の方を見続けていた。

なんでだろ?てっきり追いかけてくる物だと思ってたけど。

まあ、それならそれでいいや。とにかく、今のうちに水泳部に行こうっと。

何か納得いかないが、とりあえず僕はプールを目指して歩き始めた。



















おまけ




「水泳部………水泳部………水泳部………」


呆然としながら水泳部と言い続ける沙希。

しかし言い続けるうちにどんどんとその表情が冷たくなっていく。


「そう、水泳部があるから主人君はサッカー部にこないのね……それだったら……ふふ」


獰猛な笑みを浮かべ何かを決意する沙希。

その顔は詩織の裏の顔にもまったく引けをとらない。


「あの根性は………私の物よ!!」


要するに怖いのである。




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愛すべきは幼なじみ?について

このSSは来訪者 横島忠夫と同じくNighttalker様に投稿していた作品です。
ログが遥か底の方に沈んでしまい閲覧に手間がかかる為こちらに掲載する事にしました。
正直、更新の見込みはありません。
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