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大きいのが好きです プロローグ(スクールランブル)


プロローグ.



テレビの前で寝そべりながらまったりしている彼は播磨拳児。
既に夕食を終えて後は寝るまでゴロゴロとしているだけだ。


「ふぅ………拳児君、君も風呂に入ったらどうだ?」

「ああ、そうだな……ぶっ!」


後ろから同居人の刑部絃子が声をかけてきたので振り向きながら答えたが
何故か彼女はバスタオル一枚で出てきたので思わず噴出してしまった。


「おい絃子!てめえなんて格好してんだよっ!」

「おや、拳児君。この格好に何か問題でもあるのかい?」

「服ぐらい着ろよ!………目のやり場に困るだろうが」


そういってそのままテレビの方に体の向きを戻す。既に彼の顔は赤く染まっている。
流石に高校生で女性経験の無い彼にはスタイル抜群の彼女の体は刺激が強すぎたのだろう。
そんな彼を「素直で可愛い子だ」と大人の余裕で見ていた絃子だが
ふと、悪巧みをしているなと一目見て分かるぐらいの嫌な笑みを浮かべた表情になる。
そろりそろりと彼に近づいていく。そして寝そべってる彼に合わせて思い切り体をかがめて


「ふ、拳児君には少々刺激が強かったようだね。だが照れる事はない、好きなだけ見てもいいのだよ?」


耳元で甘く囁く。


「な!なに言ってんだ………よ………」


勢いよく振り返ったはいいが振り返ったら何故か視界は肌色で一杯になった。
正確には胸。胸の谷間で目の前が一杯になっているのだ。
その大きさに目を奪われて喋る事も出来なくなる。


「あ……あう、あう……」


ただでさえ赤くなっていた顔が更に赤く染まっていく。
体温もぐんぐん上昇している。ついでに下半身の一部も上昇している。


「なんだったら触ってもいいのだよ?」


タオルを少し開いて更に胸を見せながら言ってくる。


「………!!」


ここで彼の脳はショートしてしまう。
刺激に耐え切れず気を失ってしまったのである。
ちなみに彼は思いっきり前傾姿勢で胸を見ていたため、気を失った際に前のめりに倒れて彼女の胸に顔を埋めている。


「………ぷっ、くくく……」


そんな彼を怒りもせず楽しそうに笑う絃子。
どうやら彼には自分の肌を見られても、触れられても全く恥ずかしくは無いらしく
それどころかこういった素直なリアクションをする彼が可愛くて仕方ないようだ。
少しの間、彼女は自分の胸には顔を突っ込んでいる彼の頭を撫で続けていた。



「………さてと、そろそろ寝ようか。拳児君は………少々一人寝は寂しいのでな。今日は一緒に休ませて貰うよ」


そう言って彼を自分のベットに引っ張っていく。どことなく嬉しそうな顔をしているが確認する人間はどこにもいない。
こうして播磨、刑部家の一日は終わっていくのである。



ちなみに次の日、彼が目を覚ますとまたしても彼女の胸に顔を埋めていたため再び気を失う事になる。












これは彼、播磨拳児が刑部家に居候するようになってから日常的に行われている一幕である。



毎日の様に刑部絃子の大きな胸を見続けている内に彼は自分でも気づかない内に「大きいの」が大好きになってしまったのだ。



今はまだ心の奥に眠っているその気持ち。



しかしそれが表に出てきた時、彼の塚本天満一色で染まっていた恋愛模様は一気に変化してしまったのである。
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genre : 小説・文学

大きいのが好きです 第1話(スクールランブル)


おかしい。

最近の俺は何かがおかしい。それは間違いない。



学校へ向かうためにバイクを走らせている播磨はそんな事を考えていた。
高校生の彼が通学のためにバイクを使うのは明らかにおかしいのだが
それを咎める勇気のある者など周りにはいない。
この所、様々な奇行(一番最近では体育祭のハゲ頭晒し)を周りに見られていて
一般生徒の播磨に対する恐怖心が以前よりかなり薄くなっているのだが
それでもやっぱりまだ怖いらしい。


(・・・俺は天満ちゃんが好きだ!そう大好きなんだ!)


心の中でも強く塚本天満への思いを言葉にする。
だが以前とは違い、何故か自分に言い聞かせるような口調になっていた。


(・・・なのに・・なのになんでだよ・・・)


自分でも原因がわからないこの気持ち。
今まで信じていた事が根底から覆されてるようでけっして認めたくないようだ。


「あ、播磨君おはよ~」

「うおっ!・・ああ塚本か、おはよう」


信号待ちをしていた彼にいきなり横から話しかけてくる少し小柄な女の子。
名前は塚本天満。彼女こそが彼の心の中を埋め尽くしている思い人


「・・・・・・・・」

「ん?どうしたの播磨君?」

「・・・いや、なんでもねえ」


これまでも、そしてこれからも彼女の事だけを思い続ける。播磨は自分でそう誓っていた。
なのに・・・



「あ、青になった。それじゃ播磨君お先に~」


そう言い残し走り去っていく彼女。
一人取り残された播磨は青信号になっているのにバイクを動かそうともせず呆然としている。


(・・・やっぱりだ・・・なんでなんだよ・・・)


「なんでなんだよーーーー!!!!」


辺りも気にせず思いっきり叫ぶ播磨。
そして言い終わると同時にアクセルを一気に捻りその場を走り去ってしまった。


(なんで俺は・・・・)






───────天満ちゃんと会ってもなんとも思わなくなってるんだよ!!









大きいのが好きです 
         第1話 彼はこうして自覚する。









ガラガラガラ

自分の声とチョークを書く時の音しかない静かな教室。
しかし突然ドアが開きその雰囲気は崩れる。
授業をしていた刑部絃子は邪魔されたため、やや気分を悪くしながらドアの方を見る。


「・・・播磨君。随分と遅い出席だね。何か言う事はないのかね?」

「・・・遅れてすみません」

「・・・・・・まあ、いいだろう。席に座りたまえ」


相手が自分の同居人である播磨拳児であったため何か一言きつく言っておこうと思った絃子だったが
彼の表情を見るとそんな気も失せてしまった。
明らかに落ち込んでいる。
これだけ酷い彼の表情を見たのは何時以来だろうか?
何があったのか?自分に出来る事は無いのか?私では慰める事ができないのか?
過去、何度と無く彼は突然家出をしたことがある。
その度に自分は不安で毎日眠れなくなり
自分が彼の傷ついた心に気づくことなく癒す事ができなかった事を後悔していた。
もうあんな思いはしたくない。彼女の頭はそんな気持ちで一杯になっていた。
もし、今が授業中で無かったら彼女は彼を慰めるためにありとあらゆる手を尽くしただろう。


「・・・・・・」


無言でうなだれたまま自分の席へと向かう播磨。
周りの生徒もどうしたんだ?という感じで彼を見る。


(ねえ美琴、なんであいつあんなにうなだれてるんだろ?)

(あぁ?そんなのあたしが知ってるわけないだろ)

(それもそうよね・・・晶何か知らない?)

(さあ・・・気になるの愛理?)

(べ、別にあんなヒゲの事なんか気にならないわよ!)

(どうしたんだろ~播磨君)


小声で話をする仲良し四人。
だが播磨そんな事はまったく気にせず席に座ると同時に机と腕で顔を隠し周りをシャットアウトする。
流石にそんな彼を見た絃子は眉をひそめるが気にせず授業を続ける事にした。





キーンコーンカーンコーン





授業の終わりを告げるチャイムがなる。
播磨はチャイムが鳴ると同時にのっそりと立ち上がり、教室の外へ出る。


「け、拳児君。ちょっと話があるんだが・・・
ちょ、ちょっと待ちたまえどこへ行く?私を無視するんじゃない!」


わざわざ近づいてきて小声で話しかけてきた絃子を無視して。







「ちわ~すお姉さん・・・っていないのか」


播磨が向かった先は保健室だった。どうやらとことん寝る気らしい。
普段はお姉さん事、姉ヶ崎妙の美貌に目がくらんだ男達でごった返す保健室だが
何故か今日に限っては無人だった(ちなみに人がいたら無理やり追い出す気だった)


「まあ、いいか。お姉さんなら大丈夫だろ。」


一人で納得してそのままベットに向かう。
ベットに寝転がりそのまま寝に入る。


(俺は・・・もう天満ちゃんが好きじゃないのかな
・・・いや・・好きになる資格が無かったってことなのかな・・・)


もはやよくわからない考えになっている播磨。相当追い込まれているようだ。
しばらくすると彼は完全に寝に入ったが、そのサングラスの下からは薄っすらと涙が流れていた。









「・・・・ん・・・んん・・・」

「あ、ハリオ起きた?」

「・・・お姉さん?・・・ってなんで一緒に寝てるんすか!?」


数時間程して、彼が目を覚ますと何故か横にはお姉さんが一緒になって寝転んでいた。
播磨は慌ててベットから離れようとしたが妙が体を絡めていたため動けなかった。


「ちょ、お姉さん離して!」

「あ~んちょっとぐらい良いじゃない。・・・それよりハリオ、何かあったの?」


播磨の抵抗が止まる。妙から見て何かあったのがすぐにわかった。


「・・・別になんもないっすよ」

「・・・ハリオ泣いてたわよ」



保健室のお姉さんこと、姉ヶ崎妙は保健室に戻ってきた時にまずベットのふくらみに気が付いた。
最初は誰だ~?と思ったが直感ですぐにハリオだとわかり彼女は嬉々としてベットに近づいた。
が、彼の顔を見て彼女はかなりびっくりしてしまった。
彼は寝ながら泣いていたのだ。
苦痛に満ちた表情をしながらサングラスを着けていてもわかるぐらいに涙を流している。
一体彼に何があったのか?
これだけ辛そうな顔を見るのは初めてあった時以来か。
そんな彼を妙が捨てておく事など出来るわけも無く、
妙は彼を優しく包み込むように抱きしめ一緒に寝ることにしたのだ。


「なっ!・・そんなことないっすよ!」

「ハリオ・・・何も言わなくてもいいのよ」


妙はうろたえる彼の頭をそっと胸元に引き寄せる。
驚き、離してくれと言う彼に対して優しく囁く。


「ハリオが言いたくないんだったら私は何も聞かないわよ~
・・・でもね、辛いことがあったら少しぐらい私を頼ってくれたら
 嬉しいな。こうやって慰める事ぐらいならできるし
・・・ハリオのして欲しい事だったらなんでもしてあげるよ、私」


妙の心からの優しさが播磨の心に染み入っていく。
かつて激しく落ち込み絶望していたあの時、同じように手を差し伸べてくれた妙。
彼女の優しさに救われ立ち直ることができた。そして今回も・・・
気が付けば涙が止まらなくなっていた。
もう我慢する事ができない。我慢しなくてもいい、彼女がいる。


「・・・俺は・・・俺は天満ちゃんが好きだったんだ・・・」

「うん・・・そうだね・・・」

「なのに俺は・・・もう彼女の事を好きになることができないんだ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・うう・・・・ごめん天満ちゃん・・・」


溜め込んでいた思いを吐き出す。
彼は塚本天満が好きだった。そんな事はとっくに知っていた。
だが気づいたときには彼女に対する思いが消えてしまっていたのだ。

ショックだった。

ある意味振られることより傷ついたのかもしれない。
自分の思いはその程度の物だったのか。
愛すべき人だったはずなのにもう愛せない。それがショックだったのだろう。
妙はそれ以上何も言わず、ただ泣き続ける彼を優しく抱きしめることにした。













どれぐらい時間が経っただろうか。
妙の胸元でひたすら泣いて泣きまくっていた播磨がようやく少しずつ落ち着いてきたのだ。
妙はそんな彼を変わらない慈愛の表情で見続けている。
更に少し時間が経過した時、彼が慌てた様子で言う。


「お、お姉さん、もういいっすよ。」


よく見ると彼の顔は真っ赤に染まっている。
今頃になってこの体勢が恥ずかしくなったのだろう。
そんな彼を見て妙は


「あら~ハリオ照れてるの?もうちょっとぐらい良いでしょ?」


彼をぎゅっと抱きしめる。
もう彼の顔は完全に自分の胸に埋もれていて表情が分からない。


「むう~~~むう~~~ん~!!」


声にならない声を出して抵抗する播磨。


「あ~ん可愛いハリオ(はーと)」


ますます強く抱きしめる妙。
まずい、非常にまずい。何とかして脱出せねば。
なんて事を考える播磨だがここで自分の気持ちの異変に気づく。




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




(あ、あれ・・・なんだこの気持ち)


恥ずかしさとは違うこの胸の高鳴り。
この気持ちはいったいなんだ?
・・・いや、彼はこの気持ちの正体を知っている。
それは、最近まで彼女、塚本天満にのみ出ていた胸の高鳴り。


(な、なんでお姉さんに・・・)


それはまだ自覚していない気持ち。だがすぐに彼は気づいてしまう。


(も、もしかして俺・・お姉さんの事が?)


「・・・ハリオ~どうしたの~」

「・・・はっ!・・・・俺は、俺はなんて奴なんだーーー!!!」

「あ、ハリオ!」


動かなくなった彼を心配して話しかけた妙だが
彼は急に叫びだし妙を振りほどきそのまま保健室を飛び出してしまった。
突然の彼の行動に少々呆然としていた妙だったが


「・・・よかった。元気になったんだハリオ」


彼が元気になったことを素直に喜んでいるようだ。


キーンコーンカーンコーン


「あ、もう放課後だ。さ~てお家に帰ろっと」


姉ヶ崎妙、あまり仕事熱心ではないようだ。









(俺って奴は!!天満ちゃんの事が好きじゃないと思ったら本当はお姉さんの事が好きだったのか!?)

走りながらも彼の思考は止まらない。


(俺はなんて節操が無いんだーーー!!)



「けどさぁ、結局ヒゲって何があったのかしら?」

「確かになぁ。あれから教室にも戻ってこなかったし」

「う~ん八雲と喧嘩でもしちゃったのかなぁ?」

「・・・それは無いと思うけど」


授業は既に終わっており、帰ろうとしている2-Cで人気を4分割していると言っても良い四人組み(割合は公平ではない)

仲良く喋りながら廊下を歩いている。


「なんか落ち込んでたみたいだったしなあ。また学校来なくなっちまうかもな」

「えぇ~八雲がいるんだからそれは無いよ~美コちゃん」

「・・・寂しくなるね、愛理」

「な、なんで私が寂しくなるのよ!」


ドドドドドド


話をしている彼女達の後ろから何やら足音が聞こえてくる。


「ん、なんだ?ってありゃ播磨じゃねえか」

「本当だ~なんであんなに走ってるんだろ?」

「どうせヒゲの事だからくだらない理由じゃないの!?」

「・・・こっちに向かって来てるね」

「・・・本当だね。って播磨君私達に気づいてないの?」

「と、止まりそうにないわね。離れた方が良さそうよ」


彼女達は素早く横に逃げようとする。が、


「・・・ってうわっ!」


あせった美琴が廊下に足を取られてしまい、体制を崩してしまう。


「あ、美コちゃん、危ない!」


慌てて体勢を立て直すが既に播磨は目の前まで走ってきていた。
播磨はそのまま勢い良く美琴ぶつかってしまい、播磨は美琴を押し倒すようにして倒れこんでしまった。






(・・・つぅ~俺とした事が目の前の障害物にすら気が付かないとは。
・・・しかしこの顔を覆う柔らかい物は一体なんだ?)


「ちょ、播磨!いつまで乗っかってるんだよ!)


(・・周防か?・・・って事は・・・これは・・・む、胸!?)


自覚した時にはもう、顔は真っ赤になっていた。
素早く顔を上げる播磨。目の前には頬を少し赤くした周防がいる。
やや視線を下げると、そこには見事な胸が。そういえば誰かが教室でD~D~って言ってたような気が・・・


(・・・ってあれ、この感じは・・・)




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




(お、おいおい、どういうことだ?俺って周防の事も・・・ええ!?)


「・・おい、播磨、早くおり・・・ろ・・・」


何時までも自分に乗っている播磨に早く降りるように言おうとした美琴だったがそこで気が付く。
播磨が顔を真っ赤にして自分の顔を見ている事に。


(ってなんで播磨の奴、顔が真っ赤なんだよ)


その時ふと、天満が前に言っていた事が思い出された。


(・・・確か私に告白する練習してたって・・・え、えぇ!!)


ここで美琴の顔も一気に赤くなってしまう。
彼の事をどう思っているのかと、聞かれれば「そこそこ付き合いのあるクラスメイト」
ぐらいにしか思っていない美琴ではあったが元々嫌いでは無かったのだ。
いや、むしろ男気のある性格に好感を持っていたぐらいだ。
そんな彼が今、目の前で自分の事を顔を真っ赤にしてみている。
いくらなんでも意識するなという方が無理である。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


お互いに顔を真っ赤にして見詰め合っている。
辺りが緊迫感に包まれて喋る事すら許されない空気になる。


(お、俺は周防の事が・・・・す、好きだったのか・・・?)

(こ、告白か?・・・もしかしてこのまま告白する気なのか?・・そんな事言われたらあたしはどうしたら・・・)

(・・・・なんか・・すっごく・・・むかつくわね!)


この状況を非常に腹立たしく見ていた女の子がいた。
もちろん、その彼女とは沢近愛理。
なぜ、こんな状況になったんだろうか。
いきなりヒゲが走ってきて美琴とぶつかったと思ったらなんか顔赤くして見詰め合ってるし。
私は私で口も挟めずこんなにイライラしてるし。ああ~もうわかんない!
なんでヒゲの事で私がこんなにムカつかなきゃいけないのよ。
大体美琴も美琴よ!なんでヒゲなんかと顔赤くして見詰め合ってるのよ!
ああ~もう晶もビデオ回してる暇があったら止めなさいよ!
天満も何、顔赤くして固まってんのよ!
あああもうこれも全部ヒゲのせいよ!そうよヒゲが悪いのよ!!



タッタッタッタッタ



「・・・え?」

「な~に何時までも美琴を押し倒してんの、よ!!」


ガスッ!!という鈍い音と共に丁度良い高さにあった播磨の頭に愛理が渾身のシャイニングウィザードを放つ。
油断していたため直撃を食らった播磨は不細工に吹っ飛び廊下の壁に叩きつけられた。


「ぐはっ・・・お、お嬢てめえなにしやが・・・・」


最後まで言い切ることができず力尽きる播磨。


「ふぅ、美琴大丈夫だった?」

「・・・え、・・・ああ大丈夫だよ・・」


やや放心していた美琴だったが沢近が呼びかけたので我に返った。


「まったくこのヒゲは!美琴にまで手を出そうとするなんて本当最低!」

「い、いや・・別に私は・・・」

「嫉妬かい、愛理?」


ポツリという晶。


「な、なんで私が!嫉妬しなきゃいけないのよ!・・・って何時までビデオ回してるのよ!」

「記念にいいと思ってね」

「なんの記念よ!なんの!」

「播磨君・・・八雲がいるのに・・・」


そのまま騒ぎながら廊下を後にしていく4人。もちろん播磨は放置されたままだ。



(やばかった・・・あのまま告白されてたら多分あたしは・・・)










「・・・・・・・・・・」


播磨は家でテレビを見ていた。
沢近にKOされてからしばらくしてようやく目覚めた頃には既に空がオレンジになっていた。
しょんぼりしながら家に帰り今に至る。
テレビには有名お笑いタレント達によるバラエティー番組が流れていたが播磨の頭にはほとんど入ってなかった。


(・・・俺って奴は・・・)


今日の出来事についてずっと考えていた。


姉ヶ崎妙、周防美琴。


二人に対して播磨は本気でときめいてしまったのだ。


(お姉さん、周防・・・俺は二人同時に好きになってしまったのか?)


ゴロン、とその場に寝転がる。


(どういうこった?俺はそんな器用な人間じゃねえはずなんだけど・・・わからん)


だがあの胸の高鳴りを否定する事はできない。
否定してしまったらそれまで抱いていた天満ちゃんへの思いすら嘘だった事になるからだ。


(・・・・・・・・)


二人の事を思い出し顔が真っ赤になる。
自分を優しく胸元に抱き寄せてくれた妙。
自分の不注意で胸に顔を突っ込んでしまった周防。


(・・・・ん?)


ここで播磨は思った。
なんかおかしいな。お姉さんに惚れるのは・・・まあ分かる。
しかし周防に惚れるのは・・・一体どういうことだ?
これまで接点がさほど無かったのにあの時には胸の高鳴りがやまなかった。
なぜだ・・・なぜ俺はこの二人に惚れたんだ(もう惚れた事は認めている)


(なにか・・・なにかあるはずだ。あの二人に惚れる原因となった決定的な何かが・・・)



彼が物思いにふけっているその時。刑部絃子が静かに帰ってきた。
彼女は帰ってくるなり播磨に対して悪態を放つ。


「拳児君・・・よくも学校では私の事を無視してくれたね」

「い、絃子!帰ってたのか!」

「さんをつけろといつも言ってるだろうがっ」


言うやいなやどこから取り出したのかわからないが手に持っていた拳銃(エアガン)で播磨を撃ち始めた。


「あいたたっ!こら!辞めろ絃子!」

「ふっふっふ・・・君には少しきつくお灸をすえる必要があるようだな」


授業中に心配していたことなどお構いなし。
とにかくストレスを発散させるとばかりに撃ち続ける。


「や、やめろっていってるだろうがっ!」

「辞める?こんなに面白い事をどうして辞めなければいけないのかね?」

「だあああぁ!!」


それからしばらく銃声が鳴り止む事は無かった。








「・・・・・・・・」

「まったく、この程度でへばるとは情けない」

プスプスと煙を上げて倒れている播磨に対して情け容赦ない一言を放つ絃子
本当の所を言うと絃子はあまり怒っていなかった。
それどころか家に帰ってきたときに播磨がいた事に対する安心感で一杯だった。
以前も突然家出をした播磨だ。今回の不安も当然のものだろう。
そんな彼が家にいて嬉しくはなったがそれを素直に表に出すのも恥ずかしいらしく思わず撃ってしまったのだ。


(・・・少々やりすぎたかな?)


随分と天邪鬼な反応をしてしまったものだ。本当は嬉しかったのに。
哀れな彼の姿を見てしまい少しは素直になろうか、と思う。
倒れている彼に近づいていき目の前で座り込む。
そして彼の頭をそっと持ち上げ自分の太ももに乗せた。


「すまないな、拳児君。こんなにボロボロにしてしまって」

「え・・・い、絃子?」


突然の事にとまどう播磨。


「それなりに私も心配していたんだが・・・どうやら大丈夫なようだね」

「心配・・・ああ、学校の時か・・・・・・まあなんとか、な」

「そうか・・・それならいい」


そういって優しい笑みを浮かべる絃子。


(絃子の奴・・・こんな表情もできるのか・・・ってあれ?)


意識して彼女の顔を見た時に彼女の顔の下半分がまともに見れない事に気づいた。
「何か」が播磨と絃子の顔の間にありよく見えないのだ。その「何か」とは・・・


(い、絃子の奴・・・こ、こんなに胸がでかかったのか!)


もちろん胸である。
彼女の太ももに頭を乗せている彼が彼女の顔を見ようとすると必然的にほぼ真下から見上げることになる。
これまでに見た事の無いアングルで胸を見たせいでその大きさが一層分かってしまったようだ。


(うう・・・これは・・・)


当然のように顔が赤くなってしまう。
突然顔を赤くした播磨に絃子が気づかないわけも無く


「ん、どうしたんだい拳児君?」

「あ、いやっ!別に何でも」


慌てる彼の視線を追っていくと、どうやら自分の胸を見ているようだ。
別に彼に見られても恥ずかしいという気持ちは無い。が、タダ見されるのはねえ・・・等と考える。


「おや、拳児君・・・一体どこを見ているのかね?」

「はうぁ!べ、別にどこも見てねえよ」

「ほう・・・さっきから私の胸ばかり見ているようだがそれでもどこも見てないというのかね?」

「バ、バレテマシタカイトコサン」

「くっくっく・・・相変わらず素直な子だな、君は・・・」


そういうと彼女は播磨の頭にどんどん胸を近づけていった。


「ってちょ、絃子何を!」

「ふふふ、いつも言っているだろう拳児君。好きなだけ見ても良いと。それになんだったら触ってもいいって」

「・・・あう・・あう・・・」


声にならない声をあげる彼を見て満足そうに微笑む絃子。


(い、絃子の奴何考えてんだよ!・・・って、おいおい・・・マジかよ・・・)




ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・




なんと絃子へのフラグも立ってしまったようだ。
播磨は自分の胸の高鳴りを完全に自覚していた。


(俺って奴は・・・絃子まで好きになっちまったのかよ・・・)


泣きたくなった。俺はこんなに節操無しだったのか。
ああ~そういや天満ちゃんがおさるさんって言ってたな~~
しかしそれはそれで目の前には絃子の胸が。
・・・どんどん脈拍が速くなっているのがわかる。


姉ヶ崎妙


周防美琴


刑部絃子












(はうあ!!!!ま、まさかそういう事なのか!!!)



すべてが一本の糸で繋がった。そんな錯覚さえ起きた。
この仮説が正しいのだとしたら俺は・・・
いや、まだだ。まだ確信には至ってはいない。
そうだ。まだ可能性は残っている。
播磨は最後の可能性に賭けて行動に移す事にした。




ムニュ




「え、・・け、拳児君?」

「・・・・・・(驚愕の表情)」



ムニュムニュムニュムニュ・・・


猛烈に絃子の胸をもみ続ける播磨。その顔にはショックがアリアリと浮かんでいる。
まさか本当に触ってくる(というか揉んでいる)
とは思ってなかった絃子も一瞬固まった後パニックになる。


「ちょ、ちょっと拳児君・・ウン・・や、辞めないか・・ン・・・」


ムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュムニュ・・・・


絃子の抵抗も空しく播磨は揉み続ける。
気が付けば播磨が絃子の上に乗りかかり胸を揉み続けていた。


「・・ん・・・あ・・・け、拳児君・・・」


絃子はもう、抵抗らしい抵抗もせず潤んだ瞳で播磨を見ていた。
それでも、しつこく揉み続ける播磨。


「はあ・・・はあ・・・拳児君・・・私は・・・君の事が・・・・」



「うおおおおおおお俺って奴はーーーーー!!!!!!!」



ズドドドドドドド



突然頭を両手で抱え叫んだかと思えばそのまま外へと飛び出してしまった。


「・・・拳児君・・・?」


うっとりした表情をしている絃子をそのままにして。









「うおおおおおおおおお!!!!」


播磨は泣いていた。自分の新たな一面に気づいたからだ。


「うおおおおおおおおお!!!!」


播磨は叫んでいた。自分の新たな一面を認めたくないからだ。




「俺は!!」


「俺は!!!!」




「大きな胸が好きだったのかーーーーー!!!」





巨乳好き。彼は自分の趣味にとうとう気が付いてしまった。



「ちくしょう~~~!!!天満ちゃんすまねええ!!!君じゃ無理だったんだ!!」


彼は気づいた。その事がこれからの彼の恋愛にどういった影響を及ぼすのだろうか。
いや・・・既に影響しまくりだった。
しかし、誰を選ぶかは彼次第。結局の所は・・・



「ああああああぁ!!!!!」



本当の彼の物語が始まっただけなのかもしれない。

    
      続く










おまけ.

しばらくしてから彼が家に帰ると、そこには般若がいました。
彼は泣きながら許しを乞いましたが般若は決して許してはくれませんでした。
先程とは比べ物にならない位の弾丸が部屋中を飛び交い、悲鳴が止みませんでした。
しばらくして般若はボロキレの様になっている彼を自分のベットに引きずって行きました。










どうも、真空ワカメです。
書いてて恥ずかしくなりました。

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大きいのが好きです 第2話(スクールランブル)


「ん・・・朝か・・・・・・」

ベットから一人のそっと体を起こす播磨。
体にはおそらく昨日受けたであろう弾痕が無数に刻まれている。
首筋にある赤くなっている痕も考えるまでもなく弾痕である。
更に隣には同居人の絃子が眠っているのだがもはやいつもの事なので気にしない事にしてる。
・・・・つもりだったのだが


「・・・・・・・」


播磨が視線を横に逸らす。
無防備に寝ている絃子のあらわになっている胸が目に入る。


「・・・・・・・」


顔が赤くなってしょうがない。だが目を離すことができない。


(やっぱり・・・好きなんだな・・・でも・・・)


じゃあ俺は胸が好きなだけで他はどうでもいいってことになっちまう。
それじゃあ唯のおっぱい星人(死語)じゃねえか。
そんな俺がちゃんと人を好きになれるのかよ・・・


(お姉さん・・・周防・・・絃子・・・俺が本当に好きなのはいったい誰なんだろうか・・・)


この間、播磨は絃子の胸から一瞬たりとも目を話さなかった事を追記しておく。










大きいのが好きです 
          第2話  それぞれの思い










「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


無言で朝食を取る二人。
これはいつもの事なのだが、部屋に漂う空気は明らかにいつもと違う。
播磨はチラッチラッと絃子の方を見てはその度に顔を赤くしている。
絃子はもちろん気づいているのだがそ知らぬ顔をして食べ続けている。
だが、顔を見ると薄っすらと赤くなっていることから何も思ってないというのは無さそうだ。
ちなみに播磨がチラッチラッと見ているモノは3:7の割合で顔と胸である。


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


更に朝食は進んでいく。
飯以外に集中しすぎている播磨はほとんど箸が動いていない。
だがここで変化が起きる。
これまで何も言わなかった絃子が注意してきたのだ。


「・・・なんだね拳児君。さっきから人の方をじろじろと見て?」


やや上目遣いをして咎めるように言う彼女。
しかし、絃子の顔がほんの少しだけ赤くなっている事が播磨にも分かり、互いに意識しているがバレバレである。


「うぅ・・・・ああもう先行くぞ!」


部屋の雰囲気に耐えられなくなったのか播磨は朝食を置いてさっさと学校へと向かう事にした。
朝にみんなを愛すると言った播磨だがそれはそれ。
やはりこういった甘い空気は苦手らしい。
部屋に取り残された絃子は完全に彼が家から出て行ったのを確認してから一人ごちる。


「・・・行ったか。拳児君はせっかちだな・・・・・・」



ボンッ



ここで絃子の顔が一気に赤くなった。


(あぅ・・・昨日は拳児君と・・・)


彼に弱い部分を見せたくないため必死に顔が赤くなるのを抑えていたのだ。
結局昨日は突然播磨が走り去ってしまったため、ぐだぐだに終わってしまったが
絃子の主観で見て、初めて播磨が自分に手を出してきたのは明らかなのだ。
もし彼が逃げ出さずあのままいっていたら・・・


(・・・期待してもいいのかい、拳児君・・・)


赤い顔で自身を抱きしめながらクネクネさせる彼女。
心底、幸せをだと一目見てわかる表情を隠そうともしない。
もはや普段の姿からはまったく想像できない行動だ。


いつまで経ってもクネクネしていたため学校に遅れてしまったのは余談である。










「ふぅ、すっきりした・・・」


周防美琴は顔を洗っていた。
まだ起きたばかりで頭はあまり働いてはくれなかったがそれでも考えを止めることはできない。


(・・・播磨の奴・・・)


やはり昨日の事が忘れられない。
沢近が乱入したせいで決着がつかないまま終わってしまったが
播磨の野郎が私に・・・こ、告白しようとしてきたのは恐らく間違いないのだから。
どうしたらいいか?そのことばかり考えてしまう。
いっそ付き合ってみるのはどうだろうか?
どれだけ考えてもやはり播磨に嫌な印象が無い。
それだけではない。試験の時だってあいつはよくわからなかったが何故か助けてくれた。
もしかしたらあれは播磨なりのアプローチだったのかな?
だとしたらあの時からあいつはあたしの事が・・・


ボンッ


顔が赤くなる。
そんなに前からあたしの事を想っていてくれたなんて・・・
だとしたらあたしは・・・


「よし、決めたっ!あいつがちゃんと告白してきたらあいつと付き合う!」


一度口にしたら楽になった。
いつまでもうじうじ悩むなんてあたしらしくない。
自分の信じる道を素直に歩こう。


「・・・あ、でもあいつ確か塚本の妹と付き合ってるって・・・」


とりあえず今日はその事について問い詰めよう。
美琴はそう心に決め学校に行く準備を進めることにした。










「ふんふ~んふ~んふ~ん・・・」


鼻歌を歌いながら気分を良く着替えをしているのは姉ヶ崎妙。
鏡をを見ながらあ~でもないこ~でもないと着ていく服を選んでいる。


(・・・昨日のハリオ可愛かったなぁ)


彼女もまた昨日の事を思い出していた。
彼が自分に素直な思いを吐き出して泣きついてくれた。
その時、妙は不謹慎だが彼の事を可愛いと思っていた。
自分に縋り付いて泣いている彼はまるで子供のようで妙の母性本能をくすぐる
そんな彼だから妙の心を掴んで離さないのだ。


(なんでハリオが塚本さんの事を好きになれなくなったのかはわからないけど・・・)


タンスを引っ掻き回していた妙だがようやく一つの服に決めたようだ。
明るい黄色のワンピース。所々にあるフリルが彼女らしいか。


(だったら私が遠慮する必要もないわよねっ)


服に袖を通して鏡に向かいポーズを決める。
どうやら彼女の勝負服の一つらしい。
学校では白衣を着るのだが関係ないらしい。


「あ、もうこんな時間だ。」


時計は既に8時を回っていた。
妙はテーブルの上に置いておいた鞄を手に取り


「待っててねぇ、ハリオ~」


軽快に玄関へと向かっていった。





播磨は慌てて家を出てバイクに乗ったのはいいが学校に行く気にはなれないでいた。


(・・・まだお姉さんと周防には会いたくねえ)


自分の気持ちがはっきりしていない状態であの二人に
どんな顔をして会えばいいのかまるでわからないのである。
たまらず頭を掻き毟ってしまう。


(そういやあ、もうサングラスもいらねえな。後カチューシャも、か)


元々、塚本天満に自分が昔会った痴漢だと言うことをばれない為にしていた変装だった。
ただし痴漢と言ってもその時の播磨にはそんな気持ちは全く無く天満の完全な誤解である。
天満に惚れてしまった為、痴漢だと思われるのを恐れわざわざ変装したのである。
とはいえ播磨も自分の変装した姿を中々気に入っていた。


(失恋して髪を切る女の気分って訳じゃねえが・・・それも悪くねえな)


彼はサングラスとカチューシャを掴むとそのまま勢い良く後ろに投げ捨てた。


(天満ちゃん・・・いや、塚本にはちゃんと説明しよう。
 誤解だってちゃんとわかってくれるだろう・・・多分)


天満の天然さを知っている彼は少々の不安はあったが
きっちりと説明すれば分かってくれるだろうと信じていた。
惚れていた時は怖くて言えなかったが今なら問題無く言えるだろう。


「しっかし、カチューシャがねえと髪が鬱陶しいな」

「え?」


信号待ちの時に言った播磨の独り言に反応した歩道を歩いて少女。


「い、妹さん・・・」


元思い人。塚本天満の妹、八雲だった。
八雲は見慣れない人に妹さんと言われ戸惑っていた。
だが彼女はある事に気づいて彼が播磨だと理解した。
彼女は自分に好意を持った異性の心が読めるという不思議な力があった。
そして美しい彼女はほぼ例外なく異性の心が読めてしまっていた。
だが目の前にいる彼の心は読めなかったのである。
今まで心が読めなかった異性で自分を妹さんと呼ぶ人は一人しかいない。


「もしかして、播磨さんですか?」

「・・・・あ、ああそうか、サングラス外したの見るのは初めてか」


おそるおそると言った感じで聞いてきた八雲を疑問に思ったが
自分の今の姿を思い出し納得がいった。


(だがこんな姿でも一発で俺と見抜くとは流石妹さんだぜ)


彼は八雲がどんな相手の心も読めるエスパーだと勘違いしていた。

一方八雲の方は播磨を見つめたまま微動だにしなかった。
いや正確には動くことが出来ない。
八雲は播磨の姿に驚き、そして見惚れていたのである。
顔は確かに整っている。だが八雲はその程度では見惚れたり等しない。



八雲は播磨の瞳に見惚れてしまい視線を反らす事が出来なくなっていた。
きついだけの様に見えてしまう人もいるかもしれないが
彼女にとってそれはとても奇麗だった。
いつも男の欲望に塗れた目に晒され続けた彼女にとって
播磨の目は初めて見る輝きがあった。
抗いようの無い魅力がそこにはあったのだ。
これは一種のチャーム(魅了)と言ってもいいかもしれない。


「ん?どうしたんだ妹さん?なんか俺の顔に付いてるのか?」

「・・・・・・・・・・・」


八雲は答えない。すでに意識は桃源郷の彼方にまでいっている。
顔もすっかり紅潮している。
播磨はどうしたらいいのかと髪をいじる、がそこで八雲の意識がやや帰ってきた。
彼の髪が風になびく度に目にかかりじっくりと鑑賞することが出来ないのである。
よく見ると彼は長めの髪をセットもせずそのままにしている。
これではどこかのエロゲーの主人公である。
更に彼の整った顔の顎にあるヒゲ。
以前の格好の時ならともかく、今となっては非常に似合わない。
八雲はそんな彼の姿を非常にもったいなく思った。


「播磨さん、その、サングラスはどうしたんですか?」

「あ、ああ・・・ちょっとしたイメチェンって所だな」


本当に気持ちを言える筈も無く適当に濁す。


「ですけど、ちょっと髪が長くないですか?」

「ん~そうなんだよな。散髪に行かねえとちょっと鬱陶しいんだよ」


八雲は心の中でガッツポーズ。かなりおかしくなってきている。
更に頭の中に案が出てきた。


「その、良かったら私が、切りましょうか?播磨さんの髪の毛」

「え、いいのか妹さん?そりゃあありがたいぜ」


ちなみ八雲は髪を切った経験等ない。


「それじゃあ学校終わってから俺の家で・・・・」


だが播磨は気づいた。今学校に行くと周防とお姉さん、更に絃子にまで会ってしまう。
今はまだ、彼女達に会いたくなかった。


「よし今から頼む、さあ乗ってくれ!」

「えっ。い、今からですか?で、でも学校が」

「いいからいいから、さあ早く乗ってくれ」


播磨は強引に八雲をバイクに乗せ備え付けのヘルメットの被せた。
しかし否定の意を表していた八雲は何故かほとんど抵抗しなかった。
乙女の謎である。


「さあ、早速妹さんの家に行こう」

「わ、私の家ですか?」

「いいだろ、妹さん」


播磨に見つめられながらお願いされ八雲は当然の如く陥落した。


「はい、もちろんです」


塚本八雲  明らかに壊れてきている。



theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

大きいのが好きです 第2話没ネタ(スクールランブル)


これは「大きいのが好きです第2話」のIFネタです


もし播磨があっさり現実を受け入れていたら







「ふ、朝日が眩しいぜ・・・」


まだ太陽が昇り始めたばかりの早朝。
彼はベランダで一人朝日を見ていた。
体にはおそらく昨日受けたであろう弾痕が無数に刻まれている。
首筋にある赤くなっている痕も考えるまでもなく弾痕である。


「天満ちゃん、いままで思い出をありがとう・・・」


それなりに苦悩していた彼だが、どうやら吹っ切れた様だ。
表情からは悲壮感が感じられず、明日への希望で満ち溢れているといった感じだ。
そして朝日に向かって、自分の思いを声を大にして宣言する。



「俺は、素直になるぜ!」


1、両手の拳を絶妙な力加減で握り締める。


「俺はみんな(大きい子限定)を愛するぜ!!」


2、力を緩めふわっとした感じで拳を開く。


「だって大きい胸とかっ!!大好きだからっ!!!」


3、 1と2を高速で繰り返す。



人として残して置かなければいけない部分まで吹っ切れてしまった様だ。
まあ何はともあれ今日も一日が始まるのである。








大きいのが好きです
         IF おさるさん拳児君
            







ケース1


「・・・絃子」

「な、何かね拳児君?」

いつもの様に静かに行われる朝食。だが播磨はあっさりそれを崩し絃子に話しかける。

「昨日は悪かったな。いきなりあんな事しちまって・・・」

「あんな事って・・・」


絃子の顔が赤くなる。
そうだ、昨日はいきなり彼が・・・


「・・・き、気にしなくてもいいぞ拳児君。・・・私もさ、触ってもいいと言ってたんだし、け、健康な男子ならあれが健全な行動だ」

「・・・・・そっか」


そう言うとするすると絃子の隣へ移動する。そして右手を伸ばしそのまま・・・


「だったら好きなだけ触らしてもらぜっ!」

「え、ちょ、ちょっと拳児君!や・・・あ・・や、やめ・・・」





「・・・・んん、・・・あぅ・・拳児君・・・・」





その後2時間、二人は家から出ず仲良く遅刻する事になった。








ケース2


「は、播磨さんこれは・・・・」

「妹さん、これが俺の新作だぜ!」


いつもの様に播磨さんからメールが来た。
いつもの様に昼休みに屋上に来るように頼まれた。
いつもの様に漫画を見るんだと思った・・・姉さんと播磨さんのラブストーリーを。
だけどこれは・・・


「あの~・・・なんでヒロインが3人になってるんですか?」

「この主人公は心が広いからな!いろんな人に愛を振りまいてるんだよ。」

「・・・・・・・」

「あの・・・このヒロイン達ってどう見ても周防さんと保険の姉ヶ崎先生と刑部先生・・・」

「気のせいだ!」

「・・・・・・みんな異様に胸が大きいんですけど・・・」


漫画の中では3人のヒロインが現実より推定1,5倍程大きくなっている胸を揺らしながら主人公を取り合っている。


「主人公は巨乳の子に好かれるって設定なんでな!!」

「・・・・・・・・・播磨さん、大きい胸が好きなんですか?」

「な、な、何を言ってるんだよ妹さん!!巨乳が好きなのは漫画の主人公だって!!」


ジト目で播磨を睨む八雲。


「と、とにかく見といてくれな!感想は今度でいいから、そ、それじゃな!」


そう言い残して立ち去る播磨。
八雲は一人取り残され一人固まっていた。


「・・・・・・・・・・」



原稿を入れた封筒がきれいな放物線を描きながら屋上を飛び降りていった。








ケース3


「美コち~ん、ねえねえ今日デートしようよ!」

「ふんっ!!」


休み時間の教室。
我が愛すべき周防をデートに誘う不届き者、今鳥の襟を掴み力任せにぶん投げる播磨。
あわれ今鳥は窓ガラスを突き破り飛び出していった。
その後聞こえてくる「うわ、グロッ!」とか言う声や「さらば同士よ・・・」等と言ってる西本などは華麗にスルーしておく。


「は、播磨・・・」

「周防・・・お前をデートに誘えるのはこの俺だけだ!」

「え・・・う、うん・・・」


美琴の顔はもう真っ赤になっている。


「と、言うわけで・・・」


言いながら美琴をお姫様抱っこで抱き上げる播磨。
突然抱き上げられ、当然パニックになる美琴。


「ちょ、いきなり何すんだよっ・・・」

「決まってる。今からデートするんだよ!」


美琴に向かい渋い笑顔を見せ付ける播磨。
はっきり言って不気味である。が、既に恋する乙女になっている美琴にはそんな笑顔すら魅力的に見えた。
顔を赤くしたまま少しだけ顔を縦に振り同意する。


「ちょ、ちょっとヒゲ!!何美琴を一緒にサボらせようとしてんのよ!」


「お前は三年早いんだよっ!!」


大声で吼える播磨。あまりの剣幕に愛理も動けなくなってしまう。
そんな愛理をちらっと見るが、すぐにまた歩き始める。


「どこに行きたい周防?」

「ど、どこでもいいけど・・・名前で呼んでくれよ。け、拳児」

「・・・それじゃあ行こうぜ、美琴!」


そのまま学校を後にしていった二人。


「・・・なんで三年なの?」








ケース4



ガラガラガラ


「お姉さんいるかい?」

「あ、ハリオ~」


嬉しそうに近づいてくる妙。
そんな彼女をいきなり抱きしめる播磨。


「え、・・・ど、どうしたのハリオ?」

「お姉さん、・・・俺、寂しいんすよ・・・」


そのままベットに押し倒す。


「この寂しさを埋めてくれるのはお姉さんだけっす・・・」


播磨の目は潤んでいた。そして涙が一滴、妙の方へと落ちる。


「ハリオ・・・」


そんな彼を妙はいとおしく思う。


「言ったでしょハリオ。私はハリオが喜ぶことだったらなんだってしてあげたいんだよっ」


にっこりと微笑み播磨の顔を見上げる妙。


「うっ・・・すまねえお姉さん・・・」


そしてそのまま妙の胸に顔を埋める播磨。


「ふふふ、ハリオったら可愛い・・・」


「・・・・・・・・」



ちなみに彼の学ランのポケットには目薬が入っていた。




・・・とここで終わるはずだったが今回は違った。



ガラガラガラ!!



「拳児君!!いったい姉ヶ崎先生と何をやってるんだ!!」

「そうだ、あたしという者がありながら何してんだよ!!」

「げげえ!!い、絃子に・・美琴じゃねえか!!」


「姉ヶ崎先生!私の拳児君に手を出すとは何を考えてるんですか!」

「あら、ハリオは別にあなたのじゃないと思いますけど」

「そうだ!拳児はあたしのなんだよっ!!」



「「「ああんっ!?」」」



「わ、私は今日、拳児君と愛し合ったんだぞ!だから拳児君は私のだ!」

「あ、あたしだって今日初デートでそのままホテルに・・・」

「あら、私は今丁度彼と愛し合ってましたけど・・・」



「「「・・・・・・・・」」」



「拳児君・・・」

「拳児・・・」

「ハリオ・・・・」

「いや、これはその・・・」


「「「問答無用!!」」」


「うぎゃああああ!」


播磨に制裁を加える3人。
だがそれもすぐに終わる。
そのまま三人は播磨を取り合い始めた。


「ハリオは私のなんだからっ!」

「あんたら教師だろうが!拳児に手を出すんじゃねえよ!」

「そんなことは関係ないっ!拳児君と私の仲に入ってくるんじゃない!!」




ムギュッ ムギュ ムギュウウウウ



気がつけば播磨は3人の胸で顔を圧迫されていた。
呼吸が出来なくなり意識が朦朧としてくる。


「むぐぅ!むぐ・・・」


徐々に抵抗も薄れていく播磨。
顔色はすでに血の気が無い。
だが彼の顔は幸せそうだった。


「わ・・・わが生涯に一片の悔い・・・なし・・・」


右手を上に振り上げようとするも胸に阻まれそれも叶わず。
最後に一言言い残し彼は意識を手放した。






                        完

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大きいのが好きです 第3話(スクールランブル)


「それじゃあ授業を始めるが・・・・拳児く・・・播磨はサボりか?」

「今日はまだ一度も教室に来ていません」



いつものように2ーC組に授業をするために来た絃子は、播磨の姿が見えないのに気づいた。
ちなみに絃子は家でくねくねしていたせいで遅刻してしまい
つい先程まで学年主任にねちっこく注意されていた所である。
そのせいで機嫌が少々悪い方向へと傾いている。
遅刻をしてしまった原因である播磨を虐めて、あるいは何処かに呼び出して
あわよくば昨日の続きを、等と考えていた絃子は肩透かしを食らってしまった。
しかし、すぐに気持ちを切り替える事に成功する。


(ふふ、拳児君は照れ屋だからな。まあ慌てる事は無いだろう)


今朝の様子から見ても播磨が明らかに自分を意識していたのがよくわかっていたので
絃子には精神的な余裕があった。
例え学校で会えなくても播磨と絃子は一つ屋根の下で生活しているのである。
一旦意識さしてしまえばこっちの物だ。
自分の魅力をこれでもかと言わんばかりに直接教え込んでやればいい。
彼に逃げ場は無いし、自分の事を意識している彼が拒否するとは思えない。
絃子の頭の中ではすでに播磨と相思相愛の恋人になり
幸せな生活を送る所までがシミュレーションされていた。
ここが教室だと言うのを完全に忘れているのか
顔がバターを電子レンジにかけたかの如くとけきっている。
生徒達は絃子の今までに見せた事の無い表情を見て後頭部に大量の汗をつけている。
ただし高野晶だけはどこからか取り出したカメラのシャッターを夢中で切っていた。



(ったく播磨の奴、なんで今日に限ってサボるんだよ・・・)



周防美琴は自分の予定が狂った事に不満を覚えていた。
今朝、自分は播磨に八雲との関係を問い正し、更に昨日の話の続きをするつもりだった。
だが肝心の播磨がいなければどちらの話もできない。
既に時刻は11時を回っており、この時間になってもまだ来ないということは
今日はもう播磨は学校には来る気がないのだろう。
今朝の自分の決意は一体なんだったんだろうと美琴はすっきりしない気持ちになったのだ。
それに目の前のだらしない表情をしている刑部教諭も気に入らなかった。
何故かはわからない。だが彼女の幸せそうな表情が確実に美琴を苛立たせていた。


(ねえねえ美コちゃんどうしたの?なにかあったの?)


天満である。美琴の機嫌の悪さを察知した彼女は空気も読まずに彼女へ疑問をぶつける。
絃子がかなりおかしいが一応授業中である為小声で喋っている。


(別に・・・なんでもねえよ)

(え~そんな事ないよ。だって美コちゃんがそんな顔するなんてあんまりないじゃん。
 ねえ、愛理ちゃんだってそう思うよね)


話を急に振られた愛理は天満の空気の読めなさに少々うんざりする。
彼女も美琴の機嫌の悪さには気づいていた。
だからあえてそっとしておいたというのに天満は何も考えずに無神経に聞いている。
それが彼女の長所でもあり短所でもあるが、それでもここは察して欲しかった。


(別に・・・美琴だって機嫌悪い時ぐらいあるでしょ。そっとしておきないさいよ)

(だってぇ、気になるよ)

(だから、別に何も無いって言ってるじゃねえか)

(お願い、ちょっとだけでいいからさぁ)


しつこく食い下がる天満を呆れた目で見る愛理。
話を聞いていながら沈黙を続けていた晶がぽつりと一言だけ言った。


(播磨君がいなくてそんなに寂しい?)

(な!なな、なに言ってんだよ高野!っていうかお前さっきまで写真撮ってた筈だろ?)

(ええ。写真を取りながら話は聞かせてもらったわ)

(なんで美コちゃんが播磨君がいなくて寂しいの?)


天満は晶の言葉に首を傾げた。
美琴と播磨は極普通の友人、あるいはそれ以下にしか見えなかったからだ。
愛理もすました顔をしながら耳をダンボにしている。


(だあぁ、別に播磨がどうとかじゃねえよ)

(昨日、播磨君と抱き合ってからずっと様子がおかしいわよ)

(抱き合ってない!ありゃ唯の事故だろうが)

(そういえば確かに・・・美琴、ヒゲと見つめあいながら赤面してたわね・・・)


愛理が何時の間にか変化していた冷徹な表情で美琴に問いただす。


(美コちゃん!播磨君は八雲と付き合ってるんだから手出しちゃ駄目だよ)

(違うって言ってるだろ!あたしは別に播磨とは・・・)


追い込まれた美琴だったが思わぬ方向から救いの手が入った。
急に窓側の席のクラスメイト達が騒がしくなってきたのだ。



「おい、あの子一年の八雲ちゃんじゃないか?」

「ああ、確かにそうだ。やっぱ可愛いなぁ~」

「馬鹿、問題はそこじゃないだろ。なんで男のバイクの後ろに乗ってるんだよ?」

「あの人、結構イケてるかも~」

「でも見たこと無い人だね。誰だろ?」


女子も男子も騒いでいる。
気がつけば教室中の人間が窓側に集まっていた。
美琴達も騒ぎの原因を見てみる。


「あれ~八雲だ。なんでこんな時間にバイクに乗ってるの?」

「知らないわよ。ねえそれよりあの男誰?」

「私の情報にもないわ・・・」


見てみると二人乗りのバイクが学院内に入ってくる所だった。
そしてバイクの後ろには天満の妹である八雲が乗っていたのだ。
八雲は学院でも人気が高くその彼女が
このような登校をしてくれば注目を集めない訳が無いのだ。


(ありゃあ塚本の妹・・・)


美琴は何故こんな時間に八雲がバイクで二人乗りをして登校してきたのか疑問に思った。


「あれ、そういやこんな時に大騒ぎする筈の花井はどうしたんだ?」

「さっきからそこにいるじゃん」

「えっ・・・・うわぁ」


花井は真っ白な灰になっていた。
八雲の方をよく見ると八雲は幸せそうな表情をして男の背中に体を預けている。
彼女の普段見せない顔に相当なショックを受けたようだ。
だが今の美琴にはどうでもいい事であった。
八雲の前にいる男をよく見てみる。
何故かノーヘルで髪はスポーツ刈りよりも少々長めの清潔感のある髪型だ。
そして顔の方は・・・中々整った顔をしているが美琴はそれよりも彼の目が気になった。
遠目なのではっきりとはしないが何故か引き付けられる物があった。



ガンッ!!



唐突に鼓膜を直撃するかのような大きな音が後ろから聞こえた。
どうやら誰かが勢い良く扉を閉めていったようだ。
一体誰がそんな事をしたのだろうか。
教室を見渡してみる。
すると黒板に大きく、そして乱雑に「自習」と書かれていた。
どうやら刑部先生だったようだと皆納得してまた窓を覗き始めた。
美琴も再び見てみる。すでにバイクは校舎の入り口まで来ていた。
八雲はバイクを降り嬉しそうな表情で男と喋っていた。





美琴は考える。

八雲は播磨と付き合っていた筈。

その八雲が見知らぬ男と嬉しそうに話している。

播磨の普段の様相を思い出す。

見知らぬ男をよく見てみる。バイクもよく見てみる。

刑部先生の不審な動きもついでに思い出す。






「あ、美琴!」

「美コちゃん!?」


体が勝手に動いていた。
自分の考えが正しい事を確信しているかのように。

すなわち、あの男は播磨拳児だと言うことに。




「・・・そういう事ね」


晶だけが一人、納得のいったという表情を見せていた。








「播磨さんわざわざ送って下さってありがとうございます」

「な~に妹さんに切ってもらってすっきりしたしよ。これぐらいはしとかねえとな」

「でも、嬉しかったです」

「そ、そうか。まあ妹さんに喜んで貰えたなら俺も送った甲斐があったってもんだ」


播磨と八雲は先程から校舎前で少し話し込んでいた。
八雲に髪を切ってもらった後、八雲は遅刻になるがそれでも学校に行くと言い
播磨はせめてものお礼にと八雲を学校まで送ることにしたのだ。
髪がすっきりし、髭の方もついでに剃って気分一新でき播磨の機嫌は良かった。。
八雲もこれで播磨の顔を思う存分見る事ができると満足していた。
ちなみに何故八雲が髪を問題なく切れたのかは不明である。


「でも、播磨さんは本当にこのまま帰っちゃうんですか?」

「あ、ああ・・・今日はちょっとな」


理由はもちろん絃子達に会いたくないからだ。
ここで播磨は八雲を送る為とはいえ学校に来たのは不味かったのではないかと思った。
こんな時間に堂々とバイクに2ケツでくれば絃子にもバレバレである。
それにこれでは八雲にも迷惑がかかってしまう。
播磨はここにきて自分の浅はかさに気づいた。


「す、すまねえ妹さん!こんな堂々と遅刻したら怒られてしまうかもしれねえのに」

「それは・・・気にしないで下さい」

「そういう訳にはいかねえ!妹さんが遅刻で怒られるってのに・・・」


必死になって八雲への謝罪を考えている播磨を見て八雲はかすかに微笑んだ。


「だったら・・・二人でこのまま帰っちゃいましょうか?」

「え?」



実はこの八雲。全ては計算づくでの行動であった。
まず髪を切ってから学校に行きたいと言ったこと。
播磨の性格からしてお礼に自分を送ると言い出すのは簡単に予想できる。
何故そのような行動にでるのか?
その理由は播磨と自分との仲を見せ付ける為である。
播磨の変装を解いた姿は他の女性を魅了するに十分な姿だと気づいた。
ライバルが増える事を恐れた八雲は播磨が自分のモノであると
分かりやすく証明するために仲良くバイクで登校という手段をとったのだ。
自分が幸せそうに播磨の背中に顔を埋めておけば後は勝手に誤解してくれるという打算。
最も八雲は本当に幸せだった為誤解では無いかもしれないが。
もう顔見せが終わった為、八雲にとって無理に授業を受ける必然性が無かったのである。
わざわざ怒られてまで授業を受けるより
播磨と二人でこのままサボってしまう方が余程魅力的なのだ。
教師連中はまだ姿を見せていない。
直接見られていないのであれば言い訳はどうとでもなる。
普段は優等生の自分の言う事を教師達が疑うこともないだろう。
それに、もしこの時点で教師が来ていても問題は無かった。
怒られるにしてもそれはこの場にいる播磨も同じ。
二人で遅刻して怒られる等、ある意味学院公認のカップルになったも同然なのだ。
それはそれで非常においしい。だから教師がきても別に構わない。
全ては八雲の計算の内であった。





「で、でもよ妹さんそれじゃ本当にサボりになっちまうぜ、いいのか?」

「そうですね。でも播磨さんが気にするんでしたら今日はもういいです。
 ・・・良かったらこのまま二人で何処か出かけませんか?」

「で、でもよう・・・」

「私と一緒に出かけるのは嫌ですか?」


播磨の腕を軽く引き寄せながら上目遣いで瞳を潤ませる。
彼の優しさを知っている八雲はこう言えば播磨は断らないであろうと確信していた。
今までに見たこと無い表情で迫ってくる八雲に播磨は戸惑いを隠せない。
その時、播磨の腕に突如、至福の感触が伝わってきた。


(い、妹さん・・・服の上からじゃわからなかったが意外と大きいぞ)


どこに出しても恥ずかしい、立派なおっぱい星人となってしまった播磨に
八雲の胸の感触は刺激が強すぎる。
鼻から熱いものが出てきてしまいそうなのを播磨は感じていた。
だがそれも八雲の異変によって中断されてしまう。


「え!?」


八雲は今の播磨の心の声をしっかりと聞いてしまっていた。
播磨の心の声が急に聞こえた事と自分の胸を意識している事に驚き腕を放してしまった。
八雲の反応を見て播磨の顔が急激に青ざめる。


「し、しまったあああ!!妹さんはエスパーだったぁ!!」

「え、えっとその、で、で、ですから私はエスパーじゃ・・・」


しどろもどろになりながらエスパーと言うのを否定しようとする八雲。
数々の計算、計略が出来るぐらいに(黒い方向に)立派に成長した八雲も
播磨の前では年相応の少女であり、自分の胸を意識されたせいで
顔は茹蛸のようになってしまい、頭もパニックになり呂律も上手く回らなくなっていた。


「す、すまねええ!俺は妹さんの胸の感触がすげえ良くてつい!」


「あ・・・・あぅ・・・・」


ここまではっきり言われると八雲は言葉すらろくに出せなくなり
熱に浮かされた顔で播磨を見つめることしか出来なくなっていた。


(やべえ!妹さんめちゃくちゃ怒ってるぜ!)


とにかくご機嫌を取らなくては。播磨の頭にはそれしかなかった。
ご機嫌を取るには?
八雲の希望を叶える事だ。
播磨は一瞬で考えが纏まり八雲の願い、二人で出かけるという事を実行しようとした。
だが播磨は、そして八雲は時間をかけ過ぎてしまっていたのだ。
そのせいで播磨にとって招かざる客を呼び寄せてしまっていた。


「よ、よし。妹さんの言う通り二人で出かけるとしよ・・・」、


播磨は今だフリーズしている八雲の手を取り誘おうとした。




「どこへ行こうと言うのかね拳児君?」




背後から降りかかる吹雪のように冷たい言葉に播磨の動きは停止した。
油の切れたロボットの如くぎこちなく後ろへと振り返る。


「い・・・絃子さん。これはですねその・・・」

「大幅な遅刻だけでは飽き足らず塚本君までサボりに誘うとは到底許しがたいな」


バイクのキーを抜きながら言ってくる絃子。
教師としての発言だが絃子はむしろそれ以外の事の方が余程許せなかった。
絃子はバイクに乗っていた八雲の前にいる男が播磨であると一目で見抜いていた。
久しぶりに見る彼の素顔に見惚れてしまうがそれも一瞬。
後部座席でうっとりと顔を埋めている八雲を発見したからだ。
今朝行った自分とのラブでコメな展開はなんだったのだと激怒してしまい
授業をほったらかして慌ててこちらに来たのである。


「それと塚本君との関係についてじっくりと聞きたいな」


どこからとも無く取り出したエアガンを播磨の頭に定めながら耳元で甘く囁く。
播磨の方は恐怖で硬直しており甘い空気等は一切無いが。


「それに・・・サングラスはどうしたんだい?」

「イ、イメチェンです」

「ほう、ではその髪は?」

「これは妹さんに切って貰って・・・は!?」


絃子の表情が一変する。
先程までの恐怖を感じながらもどこか妖艶さを伺えた表情から一転し
彼女の顔は阿修羅が乗り移っているとしか思えない有様になっていた。


「ど、どういう事だね拳児君?
 君は塚本君に学校をサボらせて髪を切ってもらったというのかね?」

「で、ですからそれは・・・」

「あたしも聞かせて欲しいな!」


突然現れたのは美琴だった。
絃子から多少遅れたが八雲の前にいた男が播磨と気づき、大急ぎで現場へ直行してきたのである。


「す、周防!なんでここに!?」


今、播磨が会いたくない三人の内の二人が現れ播磨はパニックになった。


「そんな事はどうでもいいだろ。それよりなんで播磨が塚本の妹と一緒に遅刻してきたんだよ!」


絃子は播磨に対して今までと違う反応を見せる美琴に警戒心を覚えた。
美琴の姿がまるで彼氏の浮気に嫉妬する彼女の様だったからだ。


「周防君、今は授業中だ。播磨君の事は私に任せて教室に戻りなさい」


軽く睨みつけながら冷たく言い放つ。
並の人間なら震え上がってしまう絃子の雰囲気にも美琴は一歩も引かない。


「こういうのは生活指導の先生がするんですよね。
 なんで刑部先生がやってるんですか、授業を放り出してまで?」


キっと睨み返して美琴も言う。


「私の授業中に来たのだ。私が指導してもおかしくないだろ」

「絶対おかしいですよ。まるで播磨を他の先生に渡したくないみたいですね」

「そんなことは無い。私は教師をしての仕事を真っ当しようとしているだけだ」

「教師としての仕事である授業を放り出してですか?」


二人は氷の様な冷たく、感情を感じさせない目で睨みあう。
おかげで辺り一帯は冬が到来しているかのような雰囲気である。
播磨は冷や汗を滝のように流しながら対策を考えていた。


(バ、バイクで逃げようにも絃子にキーを抜かれちまってる。
 走って学校から逃げても今のこいつらから逃げ切れるかどうか・・・)


既に詰んでいるかもしれない。
だが播磨に諦めるという選択肢は無かった。
二人が睨みあってる今がチャンスなのは間違いない。
播磨には一つ案があった。
校舎内に逃げ込み教室か何処かに隠れて恐怖がすぎるのを待つ。
可能性は低いが最早これしか無かった。
播磨は渾身の力を足に込めて走り出した。


「な!拳児君逃げる気か!?」

「お、おい播磨!」


相手からの言葉を返すことも無く播磨は大急ぎで校舎内へと逃げていった。


「く、私から易々と逃げられるとでも思っているのか!?」

「待ちやがれ播磨!」

「周防君、君は教室に戻りなさい!」

「嫌です!」


二人は慌てて播磨を追いかけるがその間も口論が止む事は無かった。






一人忘れ去られていた八雲。
絃子達が口論している間もフリーズは続いていたので気がつけば
目の前には播磨、そして絃子達も居なくなっていたのだ。
我に帰った八雲は一人つぶやいた。


「刑部先生はもしかしたらと思ってましたが・・・まさか周防先輩まで・・・」


固まっていたとは言え流石に目の前で起きていた事は理解していたようだ。


「あの二人は要注意ですね」


静かにそう言って彼女は教室へと向かっていった。










一方、播磨は以前として死に物狂いで走り続けていた。


「ど、どっか隠れる所は!」


生徒のいる適当な教室 
却下。授業をしている教師が五月蝿い。
もしそれをクリアして隠れる事が出来たとしても絃子が問いただせば
生徒と教師は間違い無く自分を売り飛ばすだろう。

美術室
これも却下。
美術室の主である笹倉葉子は絃子の親友だ。
悪戯半分で隠れさせてくれるかもしれないがリスクが高すぎる。

職員室
考えるまでも無く却下

何処かの空いている誰も居ない教室
却下である。
播磨はそもそもこの時間にどこの教室が空いているのかを知らない。
そしてそれをいちいち探している時間等無い。

どの案も却下となりいよいよ進退窮まるかと思われた播磨に天啓が降りる。


「こ、ここしかねえ!」




播磨を追いかけていた二人がある部屋の戸を乱暴に開けた。


「あら、刑部先生、どうしました?」

「失礼します姉ヶ崎先生。こちらに播磨君が来ていないでしょうか?」


訪れたのは保健室であった。
この近辺で播磨を見失った二人はもはやここしかないと確信していた。
机からゆっくりと振り返った保険医である姉ヶ崎妙は微笑む。


「ハリオですか?今日はまだ来てないですよ?」

「今日はと言うのが非常に気になりますが・・・」

「悪いけど調べさせて貰います!」


美琴はそう言って保健室の隅々まで調べ始めた。
絃子もそれに続く。ベットの下から窓の下まで必死の形相で探し回る。


「何故だ!何故拳児君がいないんだ!?」

「ちくしょう播磨の野郎どこに行きやがった!」

「ですから~まだ来てませんって」

「くそ、ここじゃないとしたらどこに行ったんだ?」


彼女達はそのまま保健室から飛び出していってしまった。
保健室は彼女達に無残に荒らされひどい状態になっていた。
だが妙はにこにこと微笑んだままだった。
今の彼女にとってそんなことは些細なことだった。
彼女は机の方に向きなおり机の下に向かって話しかけた。


「もう大丈夫だよ、ハリオ」

「あ、ああ・・・助かったよお姉さん」


播磨は妙の机の下に隠れていたのだ。
絃子と美琴は妙の体が邪魔になって播磨に気づくことが出来なかったのだ。


「・・・どうしたのハリオ。もう出てきてもいいんだよ?」


この時播磨は妙の胸を見上げるような視界になっていた。
距離もかなり近く彼女の豊満な胸を下から見れる新鮮なアングルに
播磨は釘付けとなり視線を逸らす事が出来なくなっていた。


「こらっ、女の子の胸をそんなにじろじろと見てたら嫌われるぞ」


軽くデコピンをしながら膨れる妙。


「わ、わりいお姉さん」

「私だからよかったけど他の人をあんなやらしい目で見たらだめよ」

「は、はい。すいません」


彼の素直な態度に妙の表情が緩んだ。
私だからよかったと暗に自分の胸はやらしい目で見てもいいと言ったが全く気づく様子も無い。
そこがまた彼らしいと妙は目を細めた。


「でも~ハリオの素顔なんて久しぶりに見たよ。どうしたの?」

「あ~いや、これは唯の気分転換っす」

「そっか」


播磨が天満の事でショックを受けた事を唯一知っている妙は深く聞こうとしなかった。
播磨の素顔は自分の予想していた通り、力強くそして美しかった。
他人から見れば美化が入っているかもしれないが妙は気にしない。
彼は間違いなく、自分の王子様なのだから。


「ねえハリオ、どうせなら違う事で一緒に気分転換しない?」


保健室の鍵を閉めながら静かに言う。
妙の頭から「理性」と「我慢」の文字が消えていた。


「何かあるんすか?丁度いい、俺もまた気分転換したかったんすよ」

「ふふ、そうだよね。それじゃあねこっちにね」


ベットの方へと播磨を導く。
そして彼の顔を見る。
妙は堪らなく彼の事が愛しくなり勢いのまま播磨をベットに押し倒した。


「え?お、お姉さんこりゃあ一体?」

「も~うハリオったらウブなんだから。
 男と女がベットの上でする事なんて一つしかないじゃない」

「え~っと・・・マ、マッサージとか?」

「は・ず・れ」


播磨の頬をチロリと舐め、妖しく微笑む妙。
ようやく播磨が事の重大さに気づく。


「あ、、えっと、その、これは不味いんじゃ」

「いいの。だって私がしたいんだもん。ハリオは嫌?」


前かがみになり谷間が強調される。
播磨が自分の胸を気に入ってる事を知った妙はその武器を惜しげもなく使う。
予想通り播磨は胸に釘付けとなってしまい、理性の目が怪しくなってきた。


「え~っと俺はその・・・」


妙の谷間をこれでもかと見せ付けられた播磨に最早抗うすべは残されていなかった。
これで決まりと言わんばかりに妙は妖艶に微笑んだ。


「いっただっきま~す」








「アッーー! 」






theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

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