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ヴァルキュリア! 第1話

平日の深夜2時。 
普通の社会人や学生の皆さんは明日にそなえてとっくに睡眠に入ってる。
一、社会人である俺、柳園(やなぎ えん)も本来なら寝なければいけないのだろう。
しかしそんな思いとは裏腹に俺はモニターの前から動く事が出来ないのだ。



 うおっ、まさかギガントドラゴンをソロで倒せるとは@@

 まじかよっ!俺らのギルド員総出でも倒せなかったのに><

 火力やばすぎですよ~尊敬します^^

 流石はギエンさんだ・・・




「ふふっ、運が良かっただけですよ・・・っと」


まあ、ネトゲをやってるからなんですけどね。
ちなみにギエンってのは俺のキャラの名前だ。
三国志と俺の名前の両方からもじったナイスな名前だと自負している。

俺がこのMMO「ヴァルキュリア」をやり始めてもう2年が経った。
天界の戦女神であるヴァルキュリアに仕える英雄となる為にクエストをこなしたり
敵と戦ったり、あるいはのんびり釣りをしたりするというまあよくあるMMOではある。
俺は前情報を聞いた時から面白そうだと思いこのMMOでトップになると誓った。
誰よりも強くを目指し、クローズドベータテストの時から尋常じゃない勢いでやり込んでいた。
あまりにはまり過ぎて会社勤めから自宅で自由に請け負う仕事に切り替えたぐらいだ。
ほとんどの時間をヴァルキュリアに捧げているから
仕事はほんの少ししか請けず生活はいつもギリギリだけどね。
他の並み居る廃人達をも寄せ付けない程のやり込みを続けていた俺は
いつしか「ヴァルキュリア」内で知らぬ人はいないと言われるまでになっていた。
今では一般的に廃人と呼ばれるような人が百人集まっても俺は負けない。




 ギエンさんの「滅陣」食らったことある?あれだけでうちのギルド員全滅したしw

 あれ、やばいよねwそれにうちらが全力で攻撃してちょこっとHP減っても
 「神の力」あるからすぐ回復するしねw
 
 そうそう、ってか他にも「メギド」とか「ホーリー」とかwww

 マジで「現人神」スキルは反則すぎるww




何故百対一でも勝てるかと言うと俺のジョブが唯一無二の「現人神」だからだ。

現人神(あらひとかみ)

「この世に人間の姿で現れた神」という意味の名をしたこのジョブは
ヴァルキュリア内で最も早くレベル100に到達した、たった1人だけに与えられる最上級職だ。
この職業についたら飛行可能、アイテム所持制限無し、全ステータス超上昇 等、まあ
すさまじい事になるのだ。だが中でも一番凶悪なのが「現人神」専用スキルが使えることだ。

常に10秒間ごとにHPが80%回復する「神の力」

超広範囲の攻撃スキル「滅陣」

火属性最強魔法「メギド」 聖属性最強魔法「ホーリー」

他にもまだまだあるがそのどれもが他の上級ジョブの最強技をもしのぐ。
ぽちっとスキルボタンを1回押すと周囲のプレイヤーキャラを一瞬で死に至らしめる。
はっきり言って負けるわけがないのだ。
またこのジョブは「天界の戦女神であるヴァルキュリアに仕える英雄となる為」
というゲームの前提条件を破って自らも神となっている為、専用のクエストがあるのだ。
もうこれ以上ないってぐらい優遇されているのがわかってもらえると思う。
普通、たった一人のプレイヤーをこれほど優遇すると間違いなくすさまじい反発が起きる。
そりゃそうだ。たった一人だけ明らかに自分達とは違う性能のキャラを使えて
どれだけ努力しようともその人の足元にも及ばないなんて理不尽にも程があるだろう。
だが俺は調子に乗らず、困ってる皆を助けまくる。
これだけだ。これを意識して続けただけで俺は皆に受け入れられたのだ。
最も嫉妬するだろうと思われる古参の廃人達が
クローズドベータからのフレンドばかりだったのも大きかった。
大規模ギルドのマスターをしている人も多く、皆の不満を押さえ込んでくれたのだ。
ちなみに俺はギルドには入っていない。というか現人神はギルドに入れないのだ。
理由はギルドに入るとギルド間のバランスが崩壊してしまうからだ。
そのかわりにフレンドは山のようにいたけどね。


「これでカイウィル地方も解放されましたね^^・・・っと」


現在ヴァルキュリア内のプレイヤーが住むイオス大陸はモンスター達に占領されている。
プレイヤー達が協力して地方をモンスター達から開放していくと
どんどん行動範囲が広がっていくというシステムだ。
だが、もちろん地方を解放するのは並大抵の事ではない。
各地方に配備されているボスモンスターはどれも尋常じゃない強さを誇っているからだ。
廃人ギルドの精鋭数十人で挑んでも勝率は二割を切ってしまうぐらいだ。
そこで俺の出番って訳。
今回の地方の開放でイオス大陸の八割が解放されたがそのほとんどは俺が解放していた。




「・・・・・・あれ?」



突然、画面が暗転した。
2秒程停止した後、画面が切り替わる。


「なんだ・・・このムービー?」


戦女神ヴァルキリーが天からゆっくりと降り立ってくるムービーが突如流れ出したのだ。
俺は慌てて攻略サイトを確認する。
こんなムービーがあるなんて、ずっと続けている自分も知らなかったからだ。
攻略サイトにも情報は載っていなかった。だがここで俺は気づいた。


「これは・・・現人神専用のクエスト・・・か?」


可能性があるとすればこれだった。
これなら攻略サイトに情報が無くても納得である。
何せ確認できるのは唯一の現人神である自分だけだからだ。


―――――ロキを、倒して下さい

―――――ロキがこの大陸を混乱に陥れていた張本人なのです


「おいおい、ロキがボスってあのゲームかよ」

手を合わせて祈るように語り掛けてきたヴァルキリーの話の内容に
俺は思わず苦笑してしまった。ラスボスがロキってのは某有名RPGとまるきり一緒だからだ。

(ヴァルキリーのデザインも近いしこのMMO、パクッたのかな?)

俺の心に盗作疑惑が起きても仕方ないだろう。
そんなことを考えている内に勝手にクエストがスタートしていた。
ふんふん・・・要するに天界の奥のダンジョンに引っ込んでるロキを倒せってことか。
どのくらい強いのかね?ここ最近戦闘で苦戦した記憶が無いからピンとこないぜ。
まあとりあえずがっかりさせてくれるなよっと。









「だああ、回復間に合うか!?くそっ、神の力だけじゃ追いつかん!」


俺の手は自分で言うのもなんだが凄まじい動きでキーボードを叩いていた。
このアクションゲームの様な戦闘時の激しさもこのゲームの魅力なのだ。


「ええい、魔法が効かん!滅陣連発で削るしかねえ!」


結論から言えばロキはめちゃくちゃ強い。
魔法は全く効かず防御力も恐ろしく高い。
攻撃力は一撃で現人神の体力の半分以上を奪った。
普通のプレイヤーじゃ何千人集まろうと勝負にならないような強さだった。
本気で戦闘することが無くなって長い俺はパニックになりながらもなんとか戦い続けていた。
考えてみればロキも神なんだから楽勝なわけなかったんだよね。


「おっしゃ、回避!この隙にこれを・・・よっしゃ!」


自分でも褒めたくなる様な超絶技巧な指裁きでロキの攻撃を回避した俺は
すかさず最高の威力を誇る攻撃スキル「滅界」を使用した。
「陣」を滅するのが滅陣、「世界」を滅するのが滅界。
威力の違いは名前だけで十分わかるってもんだ。
ただし滅陣と違って若干の溜めが必要ななので
今みたいに攻撃を回避する等して溜めれる時間を稼がなければいけないのである。


辺り一帯の次元が消滅していきロキもそのまま消滅していきそうだ。
これか「滅界」
流石のロキも次元ごと滅する攻撃には耐えられないようだ。



―――――ぐあぁあ!!この俺が敗れると言うのか!?



己を消滅していく体を信じられないという表情で見ているロキが叫ぶ。
こんなに面白い戦闘が出来たのは久しぶりだった。
少なくとも現人神になってからは初めてだ。



―――――俺が、俺が消えていく・・・だが、せめてお前だけでも!!


ロキが突然、PCモニターに向けて既に半分程消滅している手を向けた。







―――――お前も道連れだ!!現人神!!







脳に直接響くような声と共に、俺の視界は光に包まれ
同時に体にすさまじい衝撃を感じ俺はそのまま意識を手放してしまった。








「・・・・・・んんっ・・・あれ、俺は・・・」


陽射しを眩しく感じた俺はたまらず目を覚ました。
・・・全く状況が掴めない。
確か俺は「ヴァルキュリア」をしていて・・・ロキを倒して・・・


「なんで俺はこんな所にいるんだ」


俺は何故かアフリカのサバンナを彷彿とさせるような荒野のど真ん中にいたのだ。












目が覚めたらそこは異世界でしたってか。
俺はこんなとんでも展開にも心はのほほんとしていた。

異世界 

今いる場所が自分のいた世界とは違うということを俺はすんなり理解する事ができていた。
まず服装。直前まで俺が着ていた服とは全く違う物になっていた。
というかこれは服とは呼べないだろう。
布切れを腰巻いてるだけで後は何も着ていなかったからだ。
どんな変態だよと思ったが俺の頭の中に一つ心当たりがあったのだ。
それは俺のキャラ、現人神ギエンの装備していた服「神聖服」だ。
その神秘的な名前とは裏腹の腰布一枚の出で立ちで
フレンドからの爆笑を勝ち取った思い出深い衣装なのだ。
ちなみにこれでも防御能力はかなり高い。
動き重視の軽装備なのに重装備と同じ防御力を誇っている。ほぼ全裸なのにね。
思い出し笑いをしながら俺はぼんやりと考えていた。

この時点で俺は疑っていた。

髪の毛。俺の本来の髪の毛は黒いスポーツ刈りだ。
それがなんだこれは。真っ白な長髪ってまるきり正反対じゃないか。
これも心当たりはある。現人神の特徴は真っ白な長髪だ。

そう、俺はヴァルキュリアのギエンの格好をしていたのだった。
ちなみに顔は特に変わっていない。
ゲームのギエンはもっとイケメンな設定にしてたのに。
そのせいかコスプレをしているみたいで妙に恥ずかしかった。
いや、腰布一枚で荒野にいる時点で恥ずかしいわな。周りに誰もいないけど。

俺の頭にはもしや・・・という言葉が浮かんだ。

そして俺はこのもしやがやっぱりに変わる決定的な物と出会った。



「な・・・あれは・・・モニョじゃないか!」


荒野をゆっくりと歩いているとある生き物に俺は目を奪われた。
モニョとはヴァルキュリアに登場するレベル1のモンスター。
つまり一番弱く、一番最初にプレイヤーの餌食となるモンスターなのだ。
しかしモニョは子狐のようなひ弱さと可愛らしさをしており
ゲームのマスコットとして圧倒的な人気を誇っているのだ。
その人気振りはモニョを狩ろうとする初心者をPKする「モニョ狩り狩り」
なるPKプレイヤーを生み出したぐらいである。
ちなみにPKとはプレイヤーキラーといってそのまんまの意味だ。
これをすると指名手配されて他のプレイヤーキャラに狙われるリスクがあるんだが
それを気にせずやるぐらいモニョが好きってことなんだろう。
他にもモニョ狩り狩りを狩るモニョ狩り狩り狩りやそれを狩るモニョ狩り狩り狩り狩り
なるプレイヤーもいたが俺が混乱してきたのでこの話は置いておこうと思う。


「これは・・・間違いないよ、な」


思わず空を見上げる。太陽が眩しいぜっておいおいどうみても太陽が二個あるよ。
今までの前振りはなんだったんだってなるよね。どうりで眩しかった訳だ。
まあそれはさておき、こんな感じで俺は今いる場所が異世界
いや、「ヴァルキュリア」の世界である事を受け入れざるえなかったのだ。














俺がこのイオス大陸について二日が経った。
未だに俺は荒野から動いていなかったりする。

「このナイアガラブタって結構美味いな・・・」


俺のいる場所はイオス大陸の南東に位置するサハリ荒野であるらしい。
現在食ってるこのジューシーなお肉は「ナイアガラブタ」といい
サハリ荒野にしか生息していない為、現在地を知る事が出来たのだ。。
ちなみにナイアガラブタのレベルは8。全体的にレベル1~10のモンスター
しか生息していないここは初心者プレイヤーの狩場としてヴァルキュリアでは有名だった。
ゲームの知識が実際の生活で役に立つ事になるなんて想像した事もなかったよ。
俺は肉を食いながら空いているもう片方の手をじっと見つめていた。


「んぐっ、しかしこの体は反則すぎるだろ・・・」



俺は本当に現人神であるギエンそのものになっていたのだ。
空も飛べるし物もいくらでも持てる。身体能力も以前とは比べ物にならない。
俺は食べ残しのナイアガラブタに手をかざし意識を集中させた。


「・・・・・・ファイア!」


その瞬間、突如現れた業火がナイアガラブタを一瞬にした焼き尽くしてしまった。
灰すら残さない完全な焼却である。


「まさか俺がこんな超能力みたいな力を使えるなんてな」


ゲームのスキルもそのまま使用できてしまったのだ。
つまり現人神のスキルも使用できる。
最早、俺は存在がチートと言われても仕方がない存在になってしまったのだ。
と、いっても実はまだ現人神のスキルは試していない。
あんな凶悪な破壊力を誇るスキルを気軽に使用するのが怖かったのだ。
今使ったファイアは現人神になる前に就いていた魔法戦士ジョブの基本魔法である。
最も威力は桁違い。普通の人が使うファイアではせいぜいチャッカマンぐらいの火しかつかない。
本来なら実用性皆無のゴミ魔法なのだが・・・俺が使うとこの通り。
現人神の特性、全能力超上昇のおかげだろう、魔力がとんでもない。
この二日、俺は自分の体を確認する為にこの荒野から動かなかったが
確認はもう十分だろう。
敵も弱いしこれ以上ここにいても得る物は無い。
そろそろ近くの町にでも行ってみようか・・・ってえ?


「いやあああぁ!!」


遠くから、距離にしておよそ二キロぐらい先から悲鳴が聞こえてきた。
この声は・・・女の子!
俺は迷わず走り出していた。空を飛んだりはしない。
普通の人間は空を飛んだりしないし、いらぬ詮索はされたくなかったからだ。
チーターをも超えるスピードで走り一瞬にして現場が近づいてきた。
モンスターの群れに囲まれている。女の子・・・二人!を
確認した瞬間、俺は空高く跳ね上がった。











「くそっ、このままでは・・・」



彼女は手に持ったショートソードを杖のようにして体を支えていないと
立ち続けることが出来ないぐらいに消耗していた。
肩まである深紅の髪も戦闘の激しさを物語るかのようにボロボロになっている。
そしてまた一体、モンスターが彼女に襲い掛かる。

「・・・くっ!この!!パワースラッシュ!」

ふらつく体を言い聞かせて間一髪で相手の攻撃を交わした彼女は
お返しとばかりに技を叩きこみモンスターを吹き飛ばした。

「倒しても倒しても・・・・・・きりが無い!」


そう、彼女の周りは既に同種のモンスター数十体で囲まれていた。
そしてじわじわと、少しずつ彼女を追い詰めていく。


「アイカ・・・・・・あなただけでも・・・にげ、て」


アイカと呼ばれた彼女のすぐ足元には少女が倒れこんでいた。
少女は最早立ち上がる事も出来ず、自分がアイカの足を引っ張っているとわかっていた。


「馬鹿言わないでメリス!あなたをおいて逃げられるわけないでしょ!」


彼女達は駆け出しの冒険者だった。
ある人物に憧れ、その人の道を追うかのように二人して冒険者になった。
昔から何をするのも一緒の幼馴染だった二人がパーティを組むのは当然の流れだった。
そしてギルドで簡単なクエストもこなし冒険者としての自覚も少しずつ出来てきた。
今回はギルドのクエストでナイアガラブタの肉十個を集める為にサハリ荒野に来ていたのだ。
彼女達は共にレベル13と本来ならこの辺りの敵なんて問題では無い。
その為今回のクエストは簡単、そう至極簡単な物だと思っていた。


「なんでポイズンリザードマンがこんな所に、それも大量に・・・」


アイカと対峙しているモンスターはポイズンリザードマン。
レベル20と本来ならばこんな所には生息していない筈のモンスターであった。
レベル差が多少あろうともアイカは中々強いらしく辺りに既に数体の亡骸があった。
しかし、どう足掻こうとも圧倒的な数の差には勝てない。
じりじりと押されていき完全に包囲されてしまったのである。


「ごめんね・・・私が動けたらまだなんとかなったかも知れないのに・・・」


メリスの目からは止め処なく涙が出ている。
彼女はポイズンリザードマンの毒を受け身動きが取れなくなってしまったのだ。
呪文の詠唱も出来ない為に解毒魔法を唱えられなくなっていた。


ガキン!


アイカのショートソードが敵の一撃により弾き飛ばされてしまった。
唯一の武器も手から離れてしまい、アイカは堪らず座り込んでしまった。


「あ・・・・・・」


呆然とした彼女の頭にリザードマン種の特性が浮かんでしまった。
男種しか存在しないリザードマンは種を残す為に人間の女を攫い繁殖する。
トカゲの様な顔でニヤリと先割れしている舌を出したポイズンリザードマンを目にし、
アイカは自分がどういう目に合うか判ってしまい恐怖のあまり叫んでしまう。


「いやあああぁ!!」


女性としての本能からの恐怖に逆らう事が出来なかった。
悲鳴を聞きニヤニヤと笑い出したポイズンリザードマンはゆっくりとアイカに近づいていく。
アイカは涙を流しながら後ずさるが気にも留めず、彼女の肌に手を触れようとしたその時、
空から突如大きな音が鳴り響いてきた。
不審に思ったポイズンリザードマンは空を見上げる。
だが原因が何かを認識する前に彼の命は断ち切られていた。



「う~~~~ら~~~~~~っっ!!!!」



隕石の様な勢いで「人間」が降下してきたのだ。
ものすごい衝撃と砂埃が巻き起こる。
周囲が落ち着くとそこにはある男が一人、威風堂々と立っていた。
アイカに手を出そうとしたモンスターはあえなく彼の天誅を食らい即死してしまった。


アイカはいきなり空から降ってきた彼をじっと見た。
艶やかな白の長髪、そして何故か腰に布を巻いただけの格好。
目には常人では考えられない様な不思議な力が篭っているように見えた。

「ま、まさか・・・・」

アイカは信じられないといった表情を彼を見る。
だがその顔には歓喜の表情が確かに入っていた。
メリスは涙を流していた。さっきまでの様な恐怖と悔しさの涙では無い。


「ああ・・・神よ、感謝致します」


彼女達の惨状を見た彼はモンスターの方へと目を向けた。




「女の子に手を出そうとする糞モンスターなんてなぁ、皆殺しにしてやんよ!」













俺はもう完全にぶちぎれていた。
某掲示板風に言うなら俺の怒りが有頂天になっている。
目の前にはボロボロになっている女の子が二人。
どちらも身だしなみを整えればさぞかし映えるだろう。
こんな可愛い子達をひどい目に合わせたモンスターを許せる訳がないのだ。
同胞が俺にあっけなく殺されたのがようやくわかったのかギャワギャワと騒ぎだした。
そして一匹が俺に襲い掛かってきた。目には怒りが浮かんでいる。
だけどさ・・・俺の方が怒ってるんだよな!
俺は手の甲で軽く「撫でてやった」
だが、それだけでリザードマンの頭がはじけ飛ぶ。
驚きで固まっている敵を尻目に俺は手をそのまま上に掲げた。


滅陣


俺がそうつぶやくと周囲一帯のポイズンリザードマンに衝撃が走る。
皆倒れこみ苦しみながら消滅していく自らの体を信じられないように見ていた。


「この技はっ!」


倒れこんでいる少女が叫んだ。
いかにも神官って感じの礼服を身にまとっている少女だ。
ちなみにこのスキルは俺が敵と認識している者にしか効かない為
彼女達には全く影響を与えていない。
そして数秒後、俺の目の前からポイズンリザードマンの姿は完全に消え去っていた。
辺りに静けさが戻っていた。


「ふぃ~やべえなこの威力」


怒りに任せて使ってしまったがこれはあまり使わない方がいいかもな。
凶悪すぎる。
っとそんな事考えてる場合じゃないか。俺は彼女達の方へゆっくりと振り向いた。


「・・・・・・だだ、大丈夫らった?」


噛んだ。おまけにすごいどもっている。
正直に言います。めちゃ緊張してる。
なんせ今まで彼女どころか女友達すらいなかったもん・・・
家族以外の異性とほとんど喋った事が無い俺が
こんな可愛い子達と喋ろうとしたらこうなってしまうのも仕方がないだろう。
自分で言ってて悲しくなってきたぜ、ははっ。


「は、はい!!」


「あ、ありがとうございました!」


俺の方がびっくりするぐらい大きな声で返事をしてくれた。
二人の目がウルウルとしている。よっぽど怖かったのだろう。
俺に挨拶しようと自由の効かない体を無理に起こそうとしている。


「ああ、ちょっと待って。・・・エリアヒール」


俺が手をかざすと彼女達は光の衣に包まれた。
魔法戦士ジョブの基本回復魔法だが俺が使えば完全回復と状態異常回復の
完璧な治療呪文となる。


「す、すごい・・・こんな一瞬で全回復できるなんて・・・」


レザーメイルを装備しているおそらく戦士であろう女の子が驚いた。
確かに一瞬で回復できる魔法ってのはほとんど無いからな。
通常の回復魔法を使っても効果が出るまでに数分はかかる。
魔力が高ければ高いほど即効性が出るので俺だと一瞬ってわけだ。
彼女達がすっと立ち上がった。

「だだ、大丈夫みたいだすね」

また噛む。しかし彼女達は気にしていないようだ。
二人並んで俺に頭を下げてきた。


「本当に助かりました」

「私達、クエストの為にサハリ荒野に来ていたんですが突然ポイズンリザードマンに
 襲われてしまって・・・どうしてこんな所にいたのかしら」

「あ~それか。こいつら繁殖期になるとメスを求めて大陸ほぼ全域に出てくるんだよ」


ゲームの知識のおかげでスムーズに話せたぜ。嬉しい。


「そ、そういえば図書館で見た時に書いてあったような・・・」


戦士っぽい子が落ち込んだように顔を俯かせた。
イオス大陸では常識の事なんだけど知らないってことはやっぱり初心者かな。
まあサハリ荒野にいるんだからおかしくはないけど。


「ま、まあ気にしない事だよ。次から気をつければいいんだし」

「は、はいありがとうございます!あ、あたしはアイカって言います。
 こっちはメリス。ほら、あなたも!」

「は、はい。神官をやってますメリスです!助けて頂きありがとうございました」


そういって頭を下げる。思わず頭を撫でたくなるような小柄な子だ。
だけど・・・ついつい体の方を見てしまう。
メリスの胸はその小さな体とは対照的にこれでもかってぐらい激しく自己主張していた。
アイカの方は・・・まあ、そういうことだ。


「きゃっ」


メリスが恥ずかしそうに胸を隠すってしまったばれてる!
顔を赤くしてもじもじとしてしまう彼女に思わず萌えてしまうのは仕方ないだろう。


「あ~、いやらしいんだ~。でも気持ちわかっちゃうなぁ。
 だってメリスの胸ったらこんなに大きいんだから」


アイカは俺の方をニヤニヤしながら見たかと思うとメリスの背後に回りこみ
いきなり胸を鷲掴みにした。


「あっ!ちょ、ちょっとアイカ止めてよ」

「ふふ、も~う柔らかいだけじゃなくて張りもあるのよこれ。
 見てみてこの弾力。ほら、あたしの手が弾かれちゃう」

「あっ・・んもう、アイカったら!」



ふぉおおおおおお。
いきなり始まったレズちっくな光景に俺は釘付けになってしまう。
なんというけしからん事を。いいぞもっとやってくれ。
俺も思わず前かがみに・・・ってやばい!
そういえば俺、腰布一枚しか装備してないじゃん。
こんな状態でおっきくなったら一発でばれてしまう!!
俺は腰砕けになっている状態でとりあえず誤魔化そうとする。


「俺はそのギエンっていうんだ。よろしく」


名乗った瞬間彼女達が固まってしまった。
あれ、なんか拙かったのかな?もっとフランクな感じで言えば良かったのか?
それともキャラの名前を名乗ったのが拙いのか?やっぱり本名じゃないといけないとか。
なんて考えていたらいきなり彼女達が俺に力一杯抱きついてきた


「ギエン様!!やはりギエン様でしたか!
 貴方様が天から舞い降りた時にもしやとは思いましたが本当にお会いできるなんて!」

「ああ・・・今日という日に巡り会えた事を神に感謝致します・・・」



きゃああああ抱きつかないで!!おっきくなってるのがばれちゃうって、あ。
アイカの腰に俺のが当たってしまった。

「きゃっ・・・やだギエン様ったら。こんなに苦しそうにされてるなんて。
 あたしで良ければいつだってお相手させていただきま」

「ギエン様・・・あんな貧弱な体では貴方様は満足できません。
 さあどうか私の体を存分に堪能してください・・・」


アイカの言葉を遮り、いきなりとんでもない事を言い出すメリス。
いや、アイカのセリフも十分とんでもないが。
アイカのこめかみに青筋が走るのが確認できた。


「何寝ぼけた事いってるのよこのチビ!ギエン様はあたしのような大人の女性が好みなのよ」

「どこが大人ですかこの洗濯板!大体同い年じゃないですか!」

「ギエン様、あんな小さな子供よりあたしのがいいですわよね?」

「ギエン様、あんな貧乳なんかより私の方が断然良いですわ」


俺に体を擦りつけながらもメラメラとにらみ合う二人。
ってかどうなってんのこれ?そもそもなんで俺の事を知ってるんだ!?
なんで俺に抱きついてるんだ。
もう何が何だがさっぱりわからない。
もうこの言葉しか出てこない






「これなんてエロゲ?」






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theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

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はじめまして

大変楽しく拝読いたしました。
主人公最強ハーレムはやはり一度は書いてみたいものですよねえ……
このまま18禁な世界にいっていただくのも一興なのですがともあれ次回の更新を期待しております。
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