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ヴァルキュリア! 第4話

目の前にいる二足歩行をしているものの一目見て人間では無いとわかるその姿。
獣人系下級モンスターのコボルトだ。
彼らは茂みに隠れている俺らに気づく様子が全く無く、好き放題に畑の野菜を食い荒らしていた。
俺の隣で息を潜めつつタイミングを計っていたアイカとメリスが顔を合わせ無言で頷いた。


「パワースラッシュ!」


全速力で飛び出したアイカが掛け声と共にスキルを繰り出す。
「パワースラッシュ」は戦士の基本スキルで通常時よりも強力な一撃を繰り出す。
使用してもMPや気力をほとんど消耗しない為高レベルになっても割と使用されている。
慌てて振り向いたコボルトだったが突然の出来事にろくに対応もできず
直撃を食らってしまい体を分断され命を絶たれてしまった。
仲間の突然の死に、残った二体のコボルトは即座に攻撃の姿勢を見せる。


「メリスッ!」

「はいっ・・・スロウ!」


だがそれよりも早くメリスが呪文を唱える。
メリスが唱えた魔法は素早さを奪う「スロウ」
呪文を食らった一体の動きが鈍くなる。急に体が重くなったコボルトはバランスを崩してしまい、
その隙を逃さずアイカが剣を振り下ろすとコボルトはあっけなくやられてしまった。
アイカが攻撃した隙を狙おうとしたコボルトがいた。だがそれも予想通りだった。


「無防備ですよ・・・ウインド」


魔力で作られた風の塊が無防備なコボルトに叩きつけられた。
悲鳴を上げながら吹き飛び、木に勢い良く叩きつけられたコボルトはそのまま動かなくなった。


「・・・・・・これで全部かしら?」

「いえ、報告では全部で四体いると言っていました。後一体どこかにいるはずです」


警戒を解かずにメリスはアイカに近づいていく。
そして彼女達が戦闘中の間も茂みから出ようとしなかった俺がようやく動き出す。


「二人ともお疲れ~」


気の抜けた声を出す俺に二人が注意してくる。


「エン様、まだ全ての敵を倒したわけではありません」

「そうだよ。エン様はまだ引っ込んでいてね」

「そういうなよ。もう暇で暇でしょうがないんだよ」


初日のクエストでの大失敗(クエスト自体は大成功だが)をやってから
俺はクエストに参加させてもらえなくなっていた。
次の日にギルドに行った時の周りの冒険者の奇異の目とレミィの恨みがましい目が
俺のやってしまった事を再確認させる。
あれから今日で二週間。その間に五つのクエストをやったが俺は見学してるだけで終わった。


「しょうがないじゃん。エン様がやったらこんなの一瞬で終わっちゃうわよ」

「私達の経験値にならない上、今回は村の人が見てますし・・・」


今回のクエストはサウスリーンから少し離れた村で起きた畑荒らしの退治。
村の問題だけあって、クエストをやる際に村長が遠くで確認しているらしいのだ。
自分の能力をいまいち制御できない俺は今回も当然と言わんばかりに見学になった。


「まあまあいいじゃん。それよりアイカ、そろそろその武器にも慣れたんじゃないのか?」


彼女の手にあるのは以前から装備していたショートソードでは無かった。
ジャイアントバットの羽の報酬が結構な金額になったので装備を買い換えたのだ。


「ええ、結構馴染んできたわよ。でもこの剣すごいね。
 レベル18のコボルトをあんなにスパスパ切れちゃうんだもん」

「そりゃあ二千ゴールドもしたからな。それぐらいの威力はないと困る」


購入したのは神秘の刃という長さ四十センチ程のショートソード(上記と違い剣の種類を指す)だ。
剣としての出来は微妙だが、魔力が込められており切れ味が増している。
とは言えその魔力もそれほど高くはない。正直名前負けしている。
それでも並の武器よりは性能も良くランクEの冒険者の装備としては十分な得物である。


「アイカばっかり・・・私にも何か欲しかったです」

「いやいや、メリスにはその腕輪買ったじゃん」


メリスには神秘の腕輪なるシンプルな装飾の腕輪を買っていた。
神秘の刃と同じく僅かの魔力が込められているので防御力が上昇する。
とはいえこれも名前程ではない。
「神秘」シリーズは低ランク冒険者にも手が届く値段の人気装備なのだ。


「俺なんかこの鉄の胸当てだけだぞ?」


魔力付与も何も無しの適当に作られた量産品の鉄の胸当て、特価で二百ゴールドでした。
二人が買った物とは値段の桁が違う。
とりあえず冒険者らしい格好をしたかっただけなので十分だけどね。
それから残ったお金で二人は防具も多少良いのに新調しているので
最初のクエストの報酬はもう既に残っていない。


「ふふ、似合ってるわよエン様」


アイカがそう言って微笑んでくれる。
メリスも俺を褒めようとしてくれたのか何かを口にしようとした。
が、次の瞬間。
茂みからこの場には居なかった筈の残りのコボルトがメリス目掛けて襲い掛かってきた。


「危ないメリぶにゅ!」


俺は言葉を最後まで口にすることが出来なかった。
にやにやしながらアイカが口を塞いできたのだ。


「大丈夫よエン様」


アイカが言い切るより早く、メリスはコボルトの方に向き直し杖を構えた。
そしてコボルトの爪による攻撃をなんと杖で受け止めた。
競り合いの衝撃に顔を歪めたメリスだったがすぐに不敵な笑みを浮かべる。
その表情が気に食わないのかコボルトはいきり立って更に攻撃を加えようと振りかぶった。
だが、コボルトは急に悲鳴を上げそのまま崩れ落ちてしまった。


「ナ~イス、メリス」


崩れ落ちたコボルトの背後に満足げなアイカがいた。
メリスがコボルトの攻撃を受け止め競り合ってる間に背後に回っていたようだ。


「ふぅ・・・思ったより攻撃が強くて少し焦ったわ」

「おお~・・・ナイスコンビネーション」


俺は無意識の内にそう言って拍手をしていた。
言われて二人が照れたように笑う。


「コボルトは知能が低く単純ですから容易でした」

「あはっ、あたし達も付き合い長いからね。これぐらいならなんて事無い・・・お?」


急にアイカの体が光に包まれた。
それだけでは無くどこからか鐘の音も聞こえてくる。アイカがレベルアップをしたのだ。
若干遅れてメリスも光に包まれる。同じくレベルアップだ。


「おお、二人共おめでとさん」

「ありがとうございますエン様」

「やったね。これで17だ!」


二週間で4つのレベルアップ。
中々悪くないペースじゃないだろうか?
二人は常にパーティを組んでいる為、全く同じタイミングでレベルが上がっている。


「なんかスキルでも覚えたか?」

「あたしは・・・特に無いわ」

「・・・私はプロテクトの呪文を覚えました」


残念そうなアイカとは対象的に微笑を浮かべるメリス。
そんなメリスを見てアイカが頬を膨らませた。


「ずる~い。メリスそれで六個目のスキルじゃん。あたしはまだ三種類しか覚えてないのに」

「戦士はスキルの種類が少ないからしょうがないさ。
 その代わりにいろんな身体能力が上がったりするんだから」


アイカの不満に俺は思わず苦笑してしまう。
それは俺も以前感じた事がある不満だったからだ。
俺も最初に戦士で始めた時はスキルの少なさに文句言いまくりだったな。
パーティを組んだ武道家や魔導士がいろんなスキルを使いまくってる時は
他の職にすれば良かったか!?とか思ったりもしたな。やり直す時間が勿体無くて諦めたけど。


「それに魔法戦士になればスキルが一気に増えるぞ。
 ・・・ほとんど使わないスキルも多いけどな」


魔法戦士は神官と魔導士の基本魔法も使えるし固有スキルも多い。
だが効果が微妙なスキルも多いし
魔道士と神官のスキルも基本スキルは効果が薄いのでほとんど使わない。



「・・・でもまだまだ先の話なんだもん」


拗ねた。
ちぇ~って言いながら足元の石を蹴ってるので間違いない。
そんなアイカをメリスは全く相手にしない。


「これでこのクエストもクリアですね。それではギルドに戻りましょう」


俺に近づき腕を組んできた。
忘れているかもしれないがメリスの胸はすごくあれなんだよ。
昼だろうと夜だろうと良い物は良いというのがよくわかるね。


「遠くで見てるだろう村長に証明書いてもらわないとな」

「そうですね、私達が倒した瞬間ガッツポーズしてましたよ」

「へえ、よくわかったな。それにしてもコボルトの攻撃を受け止めるとは思わなかったぞ」


腕を組んだまま村長のいるであろう方向へと歩きだす。
俺はどこにいるかわからないのでメリスに誘導されるままだ。


「エン様に買って貰った腕輪で防御力も上がっていましたし
 あのぐらいの攻撃なら大丈夫だとわかっていました」

「神官って以外と体力もあるんだよな。
 いや、神官がっていうよりメリスがって言った方がいいかな?」

「もうエン様ったら!
 それじゃ私がアイカみたいな体力馬鹿に聞こえるじゃないですか」

「おいおい、アイカが聞いたら怒るぞ」


和気藹々と、仲の良いカップルの様に俺達はその場を後にした。


「こらぁ!あたしを置いて行くな!!」











「お~い、クエスト終わったから清算してくれ」

「あ、三人ともお疲れ様です」


ギルドに戻って早速清算をする。
初日以来、俺の事をいぶかしげに見ていたレミィだったが
この二週間大人しくしていた事もありようやく自然な対応をしてくれる様になった。
それは他の冒険者にも言える事でこのギルドに普段からいる冒険者達が俺を見ても
特に反応することはもう無くなっていた。
初日のあれは偶々とかまぐれとかあるいは見間違いだったとか
勝手に自分で理由を作って納得したのだろう。


「はい・・・村長さんの証明もありますしクエストクリアです。
 こちらが報酬の五百ゴールドになります」

「ありがと。それじゃちょっと酒場の方でゆっくりしようよ」


アイカが言いながらさっさと酒場の方に向っていった。
メリスはそんなアイカに呆れながらも特に反対せずゆっくりと歩いていった。


「これでアイカさんとメリスさんはランクEクエストを十回クリアしましたので
 ランクアップ条件を満たしましたよ」

「お~そうなのか。まあまだレベルが17だから足りないけどな」

「お二人はまだギルド登録して一月ちょっとなのに中々早いペースです」


よくわからん書類を見ているレミィが言うには
普通の冒険者がランクEを卒業するには三月から四月はかかるそうだ。
大抵はクエスト回数を満たしてもレベルが足りなくて中々上がれないとの事。
もちろんそれは並の冒険者の話であって才能のある者や
ギルドに入る前から高レベルの者などはほんの数日でランクアップするらしい。


「エンさんは確かレベル20でしたよね。
 あれから時間も経ってますしもう21になってるんじゃないですか?」

「あはは・・・俺はほとんど参加してないから」

「参加してない?パーティを組んでるのにどうしてですか?」

「ん・・・まあ俺が強すぎるからかな?」


歯を輝かしながら冗談っぽく言う。もちろん満面の微笑みもセットだ。


「それは・・・」


レミィが困った様な顔をする。
しまった言い過ぎた!ここはまたまたご冗談を的な台詞で返して欲しかったのに。
なんだかんだで初日の事は忘れていないようだ。俺が言うとあまり冗談に聞こえなかったのか。


「な、なんてね。それじゃ俺も行くよ」

「あ、エンさん・・・」


何か言いたげに手を伸ばしたレミィを振り切りアイカ達の方へと行く事にした
これ以上話すとボロが出て言わなくていい事まで言ってしまいそうだ。


「おそ~いエン様。もう適当に注文しちゃったわよ」

「悪い悪い、でも霜降り鳥のから揚げは頼んでくれてるんだろうな?」

「はいもちろん。私達も好きですから」


二人と同じテーブルに座りちょっと落ち着いた。
霜降り鳥はその名前の通り霜降りの肉がとてもジューシーで大変美味である。
しかも日本の鳩並に大陸中に生息しているからお安い値段で大満足だ。


「いや~危うくレミィにいらん事を言いそうになっちゃったよ」

「エン様はすっかりレミィとも仲良くなったみたいですね」

「そうだよねえ・・・あ、良い事思いついた!」


ガタッっと椅子から乱暴に立ち上がるアイカ。
立ち上がった拍子に胸がぷるんと揺れ・・・てないな。


「エン様エン様。あたしギルドでレベル誤魔化す良い方法考えちゃった」

「え、なんか良い案でも浮かんだのか?」

「ふっふっふ、簡単よ。エン様がレミィを口説いてメロメロにしちゃえば
 レミィが適当に誤魔化してくれるわよ!」

「お、おいおい何馬鹿な事を大声で言ってんだよ。ってかレミィに聞こえてるぞ」


奥のカウンターの向こうにいるレミィが顔を真っ赤にしてあわわわとか言ってる。
慌てた拍子にカウンターの拍子をばら撒いてるな。


「ほら、レミィだって満更じゃないじゃん。レミィってあれで結構人気あるのよ。
 冒険者の人からいろんなお誘いとかしょっちゅうよ」


涙目で散らかった書類を拾い集めてるレミィは思わずぎゅっとしたくなる。
守ってあげたくなるような、あるいは苛めたくなるような可愛らしさを持っている。
このむさくるしいギルド内のオアシスの様だ。人気があっても当然だろう。
ん?・・・なんかテーブルがぷるぷるしてるような気が


「何を寝ぼけた事言ってるのアイカ!」


弾けるように立ち上がったメリスがテーブルを叩きつけた。


「え、だってそうでもしないとエン様がランクアップできないじゃん~」

「だからって態々レミィに手を出すなんて許可できません!
 エン様には私達・・・いえ私だけで十分です!」


どさくさに紛れてメリスが己の欲望を口にするがアイカはさらっと流した。


「も~メリスは独占欲が強すぎるわよ。
 エン様程の人があたし達だけで満足できるわけないじゃないの」

「アイカ!あなたはエン様が私達以外の女を抱いてもいいって言うのですか?」

「だからそう言ってるじゃん。
 あたしは一人で抱かれるより他の子と一緒に抱かれる方が好きだもん」

「な!?あなた昔から私の胸を揉んだり変な事してくると思ったらそっちの気が・・・」

「えへ~だって気持ちいいんだもん。女の子って柔らかくていいよね。良い匂いもするし。
 あ、でもエン様のキュッと締まった体ももちろん大好きだよ?」

「こ、ここまで本物だったとは・・・長い付き合いなのに知りませんでした」


・・・・・・え~っとそろそろ止めた方がいいかな。
回りのおっさん達がなんかギラついた目で見てきてるし。飢えてるのかね。
というか俺もこれ以上聞いてると変な気持ちになりそうだ。


「そこまでにしてくれ。周りの目が痛い」


アイカの知られざる性癖を知りどん引きしていたメリスが周りを見て慌てて座り込んだ。


「す、すいませんエン様。はしたない真似をしてしまいました」

「まあこの話は無かった事にしてと」

「ぶ~いいアイディアなのに」


レミィとそんな関係にってのが嫌な訳ではない。むしろどんどこいって感じだ。
でも俺が口説いてメロメロにってのがありえない。そもそも俺は女の人を口説いた事がない。
こいつらは昔の縁があって迫られたから受け入れるだけだったし。
基本的に俺は受身型(ギャルゲー主人公タイプ)なのだ。家でごろごろしながら
「あ~空から可愛い女の子降ってこねえかな~」って考えるタイプなのだ。
とりあえずいつの間にか運ばれていた料理を食べる事にしよう。
まずはやはり霜降り鳥のから揚げからだろう。
一口大の大きさの肉を噛んだ瞬間、口一杯に油の旨みが広がる。


「むぐ、むぐ・・・やっぱり美味いなこれは」

「んぐ、だよね。これだけは外せないよ」


ひょいパクひょいパクと箸を止めずに食べ続けているアイカ。
合間に酒も飲んでいる。この食欲は並じゃない。


「もう少し行儀良く食べなさい。見ているこっちが恥ずかしいわ」

「まあまあ。俺もそんなに行儀良く無いし美味い物を美味いと言って食べてるからいいじゃん」

「んぐ、んぐ・・・そうそう。食事は楽しくないとね!」

「もう・・・」


メリスは苦笑するがそれ以上は何も言わずお手本とばかりに行儀良く食事を始めた。
と、ここで入り口の扉が勢いよく開けられた。
周りの目は当然扉を開けた主に向けられる。いつもの事である。
だが今回はいつもと違い、いつまでも小さなざわめきが止まなかった。


「お、おい・・・あいつ「隼」じゃないか?」

「滅多に姿を見せない「隼」だ・・・珍しいな」


周りの冒険者達の話が耳に入る。扉を開けたのはどうやら有名人らしい。
俺はぼんやりと興味本位に扉の方へと目をやっていた。


先ず目についたのは黒曜石のように艶やかな腰まである長い黒髪だった。
袴の様にも見える和風な軽鎧を身に纏っている美女がそこには居た。
その切れ長の目はややつり上がっておりきつい印象を与えるが
それが余計に彼女の美しさを引き立たせていた。
正直俺は見惚れていた。彼女から目を離すという発想が思い浮かばないのだ。


「うわ~隼さんだ。あたし初めて見たけどすごい奇麗~」

「し、知ってるのかアイカ?」


俺は彼女から目を逸らさずそのまま聞いた。
なんとなくメリスが睨んでいるような気がした。


「そりゃあもちろん。隼さんはサウスリーン支部唯一のランクAの冒険者で
 「隼」の二つ名を持つ剣豪なのよ」

「け、剣豪か・・・」


上級職である「剣豪」 魔法戦士と同じく戦士からの派生上級職だ。
魔法戦士とは違い剣に特化していて最大攻撃力はそちらを遥に超える。
ただし、燃費が悪く、防御力も低いので扱いが難しく俺がやっていた時は人気が無かった。


「二つ名ってことは彼女の名前は「隼」じゃないのか」

「そうだよ。彼女の本当の名前はギルドの一部の人間しか知らないんだって」

「へぇ~そうなのか・・・って痛い痛い。メリス何するんだよ」


メリスが俺の手の甲をつねってきた。


「何をデレデレしているんですか。早く食事を終わらせますよ」


彼女の視線は恐ろしく俺は大人しく食事に取り掛かろうとした。
その刹那、「隼」と目が合った。


「えっ・・・」


彼女が小さくつぶやいた。周りの奴らは気づいていないようだが俺にははっきりと聞こえた。
つり上がっていた目をパチパチとさせている。そしてしばらく俺達は見詰め合ってしまう。

じーーーーーー

じーーーーーー


そんな俺に業を煮やしたメリスが更に強く抓ってきた。


「痛い痛い!わかったから!」


そこで彼女ははっと我に帰ったようだ。
赤い顔をして首を振りそのままギルドカウンターの方へと向かっていった。


「・・・まさか、な」


そんな彼女の小声もしっかりと耳に入る俺ってば高性能。
俺と見詰め合って含みのあるこのお言葉。非常に気になる訳で。
なんとなく、自分にとって都合の良い展開になりそうな気がしていた。











食事の後、俺達は宿に戻りくつろいでいた。
俺はベットに寝転がってある事を考えていた。


「どうしましたエン様。何か考え事ですか?」

「ああ、ちょっと思う所があってな」


ベットから体を起こすメリスの方へと向き直す。


「次はそろそろDランクのクエストを受けないか?」

「あ、それいいね。もうEランクのクエストじゃ物足りなくなってきたのよあたし」

「そうですね・・・私達もそれなりに強くなりましたしよさそうですね」


アイカは飛びつくように、メリスは考えながら冷静に賛同してくれる。


「それで俺も次から参加するからな」

「「え」」


二人が固まった。頭には恐らく初日の暴走が再生されているだろう。


「だ、だめだよ、エン様が仕事したらめちゃくちゃになっちゃうわよ!」

「そうです、ここは私達に任せてください。エン様は何もしなくても大丈夫です」

「だからそれが嫌なんだって。ず~っと見てるだけじゃつまらないんだよ」


折角この世界に来たのにやってるのは見学ばっかりでは楽しくないのだ。
それに二人に任せっきりなのはとても情けない。これではニートである。


「ですが、やはりエン様が強すぎてパーティのバランスが」

「ふっふっふ。俺もただ毎日ボーっと見学してただけじゃないんだぞ?ちゃんと対策も考えてある」


俺はこいつらと無理の無いようにパーティを組もうと密かに苦心していたのだ。
そしてこれならいけるという方法を先程やっと思いついた。


「え~本当に?どうやってあたし達とバランス取るのエン様?」

「よし、それなら今から実際にやってみようか」


ベットから立ち上がり部屋の中央に立つ。
二人が食い入るように見てくる。


息を整え精神を集中させる。
別にしなくてもいいのかもしれないがこっちの方がそれっぽいからいいのだ。
体からよくわからない力が溢れ出してくる。
もやもやした表現できない何かだがこれが魔力なのはこの世界に来てから理解していた。


「はっ!」


俺が魔法を発動させるイメージをするとその通りになってくれた。
体から魔力が放出されその衝撃でアイカ達が少しばかり吹っ飛んでしまった。
本当なら呪文が必要らしいのだが俺は都合よく呪文が無くても魔法が唱えられる。


「あいたたた・・・エン様今の魔法?」

「ああ・・・これで俺もお前達と戦える筈だ」


俺は自分の体を確認しながらそう言った。


「エン様・・・今の魔法はなんだったのでしょうか?」

「え~とスロウとマジックロスとパワーロスとディフェンスロスだ」

「あの一瞬で4つも発動したのですか!?流石はエン様です。
 ・・・どれも弱体魔法ですね、もしかして!」


納得がいったとばかりにメリスが俺を真っ直ぐに見てくる。
アイカは首を傾げたままだがまあしょうがないか。


「そういうこと。自分にかけて俺を弱体化させたの」


これが俺の考えた対策だ。
本来、敵にかける弱体化魔法を俺にかける事によって二人との力の差を減らす。


「で、ですがそれらの呪文はどれも基本魔法です。効果はそれほどでは・・・」

「まあ基本魔法だから複数同時にかけられたんだけどね。それも大丈夫。
 俺の魔力で発動するとかなりの効果だし、何より五回も重ねがけしたから」

「ご、五回もですか!」


俺は自分の能力を抑える為に弱体化魔法を重ねがけする事にした。
能力を魔法で抑えて封印ってなんか格好良くない?
某宇宙の帝王様見たく
「俺は封印を解く度にパワーがはるかに増す・・・
 その封印を俺は後五回も残している・・・その意味がわかるな?」
って強そうな敵にいつか言ってやりたいぜ。


「よくわかんないけど!
 要するにエン様があたし達とパーティを組めるぐらい弱くなったって事よね?」


アイカがそれだけを言って俺に飛び掛ってきた。
動きが鈍くなり力も弱まった俺は体のギャップで反応が遅れ、難なく押し倒される。

「わ、エン様をあっさり押し倒せちゃった」

「あいたた、何するんだよアイカ」

「むふ。エン様が本当に弱くなったのか確認しなきゃね・・・」

「アイカ、エン様に失礼ですよ!」


怒ったメリスがアイカと俺に近づいてくる。
いいぞ、早くアイカを振りほどいてくれ!


「あたし達いっつも最後はエン様にリードされてめちゃくちゃにされちゃうじゃん。
 偶にはあたし達がエン様をリードしてめちゃくちゃにしたいなぁ」

「なるほど!」


メリスがでかい声で頷くと大急ぎで服を脱ぎ始めた。


「ってメリス何がなるほどなんだよ!」

「私達がエン様をリードしますから!エン様は身を委ねるだけでいいのです!」


ハァハァ言って目から正気が完全に消えてしまった。何かのスイッチが入ったのか。


「っておい!これじゃ駄目だ!前回と同じオチじゃねえか」

「何言ってるかわかんな~い」

「エン様は私がおいしくいただきます!」



血走った目で俺を見る二人を見て俺は恐怖で力を抜いてしまった。
その夜、俺は宣言通り二人にめちゃくちゃにされてしまった。女の子って怖い。





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comment

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更新を楽しみに待ってます。

No title

GJ!!

こういった話は大好きです。次の更新も期待しています。

No title

とても面白かったです。続きが待ち遠しいのですがいつぐらいになりますか?

No title

最強すぎて逆に面白くなる小説ハケーン!
文章がおかしいところもなく普通に面白いです。
では
ゆっくり更新していってね!

No title

いい作品ですね。
こういう性に対して奔放な作品は面白いですね。

No title

とあるサイトで薦められていたのでやって来ました。
面白いですね。主人公が最強の筈なのに、最強じゃないところがw
前回更新から二カ月以上。そろそろ次話投下でしょうか?

No title

ヴァルキュリア面白かったです!!
でも、4話でストップしてるε=(。・`ω´・。)プンスカプン!!
早く続きを書いてください!て言うか書けピクピク o(-_-#"))(("#-_-)o
更新まってまーす^w^

No title

もう新年ですが更新まだですか??
ペース遅すぎだよ(怒`・ω・´)/

No title

むう、続きを読みたい……

No title

続きがエターなりました。

No title

トミィーさん、ぽーさん、作者氏が作品を書くのは義務ではないのですから、待ってますと言って気長に待つのがマナーでしょう。

と言うことで、続きを待ってます。

No title

とても面白かったです

次の更新を楽しみにしてます

No title

一年待った
もう一年は待てる!

No title

…現在待機中。


まだまだ待っています。

No title

俺も待っている・・・。

No title

まだまだまってるw

No title

そろそろ存在を忘れだした今日この頃。
待ってます。

No title

初めて読ませてもらいましたが、MMOの世界にトリップって展開の作品は多少はあるけどサービス終了後を舞台に置いた展開の作品は初めて読ませてでした。
今後の展開が楽しみです、隼さんもかつて主人公と何らかの接触があったキャラなんでしょうか気になります。
アイカ達のの成長度を見る限り、丁度かつて助けたころの少女達が成長してる時期ぽいのでなんとも羨ましい話になりそうで期待させてもらいます。
更新楽しみに待たせてもらいます。

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